35/84
【35】8月30日+③
――午後。
「いつもの事じゃ」
何が?とは、敢て言わないし訊きもしない。
さすがにお腹が空いたと起きてきた大河さん。
マサミチさんは仕事に、マサトモさんはバイトに出かけ、姫野家には大河さん、光星と私、そして部屋に篭り続けているマコトの4人。
大河さんが、光星の作ったチャーハンを「うまい、うまい」と連発しながら本当に美味しそうに食べている。
「いつの事じゃ、夏休み恒例行事みたいなものじゃ」
毎年、マコトは夏休み残り数日で課題を終わらせているんだ。
去年まで、中学までは何とか出来ていたのが今年は――。
呆れて、かける言葉も見つからないし、返事も曖昧にする。
しくしく…、しくしく…・・・。
また、あのすすり泣きが聞こえてくる。
何だろう、無性に、こう、何て言うか、むかつく!!
イラつく!腹が立つ!!
「うう~~、もう、我慢出来ないっ!!!」
ズカズカと廊下をマコトに部屋向かって歩き出す。
私が出て行った後、キッチンでは――。
「光星、千星子はどうしたんじゃ?」
一人静かに食べていた光星に大河さんは尋ねる。
「姉さんも、まぁ、“いつもの事”という事で」
と、答えていた。




