【28】7月28日+真実④
小さい頃から、よく苛められてきた。
背も標準より小さくて、女の子のような顔と女の子みたいな名前。
“姫”野
“真実”
いつも最初に「ひめのまみ」と呼ばれていたのも原因の一つ。
イヤでイヤで仕方なかった。
そして、いつものように苛められる。
でも、オレだってやられっ放しじゃない!
取っ組み合いの喧嘩。
なのに、その日に限って違っていたのは――。
「こらっ!廊下で喧嘩なんて止めなさい!!」
先生かと思っていたら、6年生が両手を腰に当て立っていた。
「小さい子相手に、4人は卑怯じゃない!!」
そう言って、軽くあいつらをやっつけていく。
(強い!)
力任せではなく、相手の力を上手く活かして、全てかわしていく。
あっという間に、勝負はついてしまった。
「もう、終わり?」
と言われたあいつらは、悔しそうに逃げていく。
「さてと、大丈夫?あ、血が出てる」
「え?」
左肘から血が少し滲んでいた。
いつの間に擦りむいたんだろう?
「早く、保健室行くよ」
「ちょっ…、待っ…」
右手を強引に取られ、着いた保健室には先生も誰も居なくて。
「取り合えず、消毒して、絆創膏…。あ、あった!!」
「――勝手に、使っていいのか?」
「アレに書いておけばいいんじゃない?」
「………」
アレとは、治療内容を書く用紙。
「えーっと、今日の日付と、――何年何組?」
「5年3組…」
「名前は?」
「………」
名前…、言いたくない。
鉛筆を持ったまま、オレの方に顔を向けて返事を待っている。
「ねぇ、名前」
「姫野…、マコト…」
書き終えたのか、鉛筆を鉛筆立てに戻しながら
「見掛けだけで判断するの、ダメだって分かってるのに」
と、その人は呟いた。
(え?――この人も、オレの事、女の子だと思った?)
丁度、昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴り出した。
「先に行くね」とその人はドアを開けて行ってしまう。
オレも早く戻らないと。
でも、その前に――さっき、あの人が書いた記入者欄を。
“6年1組 穂高千星”




