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【26】7月28日+千星②


真夏の夜空には、幾千もの星が瞬いている。


それは――まるで、ジュエルボックス。


そんな輝きの下を私たちは歩いている。


私の前を光星が自転車を押しながら、後ろを姫野…――マコトが歩いている。












結局、あの後大河さんの強引さに負けた私たちは夕ご飯を一緒に食べる事に…。



「千星子は美人だし、光星も美人だし、いやぁ~、食が進むのう~」



と食事中、同じ言葉を繰り返す。



(だから~、私たちの容姿と食欲は関係無い!)



しかも“千星子”って何?


光星の事は普通に“光星”って呼んでいるくせにっ!!



「姫野!悪いけどっ、しょう油、取って!!」



丁度、姫野の前にしょう油があったから、そう言っただけのなのに。


しょう油に向かって伸びた手は4本。



「ワシも姫野じゃ!」

「自分も姫野ですよ!」

「俺も同じく!」

「…だぶん、オレの事だと…」



ガヤガヤと家族で言い争いが始まった。



「ワシがしょう油を!」

「自分が一番近いですから!」

「俺だって、届く範囲内!」

「…だぶん、頼まれたのはオレ…」



もうっ、誰でもいいから、しょう油!寄越しなさいってー!!



「じゃあ、下の名前で呼べば?姉さん」

「え?」



光星の提案に姫野家一同が期待に満ちた視線を私に向ける。



「な、な、何よっ!!」


「ワシは、ターちゃん」

「自分の事は、マサミチと」

「俺は~、トモくんって呼んで」

「――マコトです」


い、今は、どうでもいいって、名前なんて!!とにかく、しょう油!!



「ささっ、千星子!ターちゃんと呼んでおくれ!」

「………」



鏡を見なくても分かる。


こめかみには、青筋。眉間には深く刻み込まれた皺。


いち早く危険を察知したマコトが私を宥め賺してこの場を収めてくれた。












騒がしくて、賑やかな食事。


かなり煩かったけど、こんな風に大勢で食卓を囲んだのって久々かも。


そう言えば、春休みに五十鈴の家に泊まった時も、ほのぼのとして楽しかった。


光星と二人だけでは、絶対体験出来ない。


食後の片付けは、私たち双子が買って出る。


綺麗に洗い終わったお皿を食器棚に……あ、あれ?届かない?



「届かないよね。この家は、自分たちの大きさに合わせてオヤジが建てた家ですからね」



マサミトさんがそう言って、私の手からひょいっと棚にお皿を重ねていく。



「マサミチさんって、身長いくつなんですか?」

「190ぐらいかな?」



――凄く、大きい!



今更だけど、私が見上げてしまうほど。


改めて部屋を見渡すと、全ての物が大きくて天井も高い事に気が付いた。


この家に居ると、不思議な感覚に陥っていく。



「お袋も、背の高い人でしたから」

「そうなんですか…」



何だろう?この感じ、ふわふわしてる。


まるで、小さな女の子にでもなった気分。


単に周りの物が大きいだけって事なんだけど。


でも、ここはとても居心地の良い空気が絶え間無く溢れている。





 








まぁ、そんな気分のまま、今は姫野家から自宅へと帰る途中。


送ってくれなくてもいいって言ったのに、「美人二人じゃ、心配じゃ!!」と大河さんが言うので姫野…、じゃなくてマコトも一緒に居る。



(美人二人って…、帰り一人になるマコトの方が危ないんじゃないの?)



それに、私よりマコトの方が、ぽわぽわとした可愛い系だと思うけど…。


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