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【22】7月28日+真実②

「ワシは、姫野大河(たいが)!50歳!仕事は建築業!年収は――」



闘いは、オヤジの自己紹介から始まった。



「な、何を、言ってんだよ!!オヤジ!!」

「煩い!!マコは黙っていろ!!ワシは今、この美人なお嬢さんに結婚を申し込むんじゃあーー!!」



(確かに、千星先輩は美人なお嬢さんだけど、…え?結婚?申し込む?――っ!!!)



オヤジと先輩の間に割って入ろうとするけど、二人の間合いは誰も侵入も許さないという空気が流れている。


千星先輩は頭を抱えつつも、この状況を受け入れようとしている。


さっき、公園で会った時の落ち込んでいたあの先輩はどこへ行った?



「妻に先立たれて10年!男手一つで息子3人育ててきましたっ!!」



オヤジは千星先輩の両手を握り、見つめ合う形となっている。



「いい加減にしろよ!!オヤジ!!!」

「何を言うか!縁というものは待っていてもダメじゃ!!自ら手に入れるものじゃ!!」



う~ん、一理あるような――って、納得なんてしてる場合じゃない!


両手の動きを封じられているにも関わらず、千星先輩は「えいっ」という一声と共にオヤジをぐるんっと軽く背から投げ落とす。



「っ!!!」



あまりの早業に言葉も出ない。



「全く、父さんも年を考えて下さいよ」



そう言って、次に現れたのは上の兄貴。


強かに背を打った痛みに耐えているオヤジの肩に手を置いて、この場を収めようとしている。



「相手は未成年のようですし、犯罪ですよ」

「マサミチ!!愛に年の差なんて関係無い!!年を食っている分、経験豊富じゃ!百戦錬磨じゃ!!」



熱く語る、しかも少しも懲りてないオヤジなんて無視して、兄貴は「とにかく、上がって貰いましょう」と言って千星先輩の肩を抱き、奥の部屋へと連れて行く。



「始めまして、自分は姫野真理(ひめの まさみち)。宜しくね」

「………」



千星先輩は、無言で肩にある兄貴の手を払う。


その時、第2ラウンドのコングが鳴った――。












「手厳しいね、君は」とミチ兄は爽やかに言うと「馴れ馴れしいには嫌い!」とはっきり言う先輩。



「ふ~ん、勝気な子も良いね。出来れば付き合いたいな」

「自信過剰なのも、嫌い!!」



ミ、ミチ兄まで何を言うかと思えば…!


でも、先輩も全然負けていない。


兄貴の脇腹にガツンと肘が入っている!!!


一歩、後退さったミチ兄が脇を押さえ壁にもたれ落ちていく。その音を耳にしたのか下の兄貴のトモ兄が――



「――何の音?何してるだよ?誰?彼女?お客さん?」



奥の部屋から顔だけ出して、この妙なやり取りの中に入ってきた。



「マサミチ兄貴の彼女?――それとも…、まさか!オヤジ?」



な、何で?オヤジな訳?普通、年齢的も考えて、オレって思わない?



「まぁ、誰のだっていいや!――おっ、女の子にしては背が高いな。でも、俺となら釣り合って丁度いい感じ~!!」



一瞬、千星先輩の瞳に炎が見えた。


どうも、先輩にとって身長の話は地雷だ!


知らないとは言え、思い切り踏んでいるってば!!


そして、3つ目のゴングが鳴る前に、トモ兄の向こう脛に痛恨の蹴りが炸裂していた――。


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