【19】7月28日+①
いつまでも、ぼーっとしてる訳にもいかなくて…。
そーっと自分の部屋を出て、隣の部屋にこそ~っと侵入する。
ちょうど光星は昼食の後片付けをしていて、この部屋には誰も居ない。
机の上を物色。
弟の模擬テストを見つけた。
(……!!)
愕然とする。やっぱり、光星と私は違う。
「あれ?姉さん。どうしたの?また、辞書?」
いつの間に下から上がってきたのかの?
机の前に立っていた私を見つけて、光星は言う。
エプロンをしたまま、何の疑いもしないで。
「これ、昨日のテスト…」
「あぁ、それ」
まるで、それが何?とでも言ってるような…。
こんな問題なんて、出来て当然という風な態度。
「光星って、本当にすごい」
「?」
「私が間違えた所、合ってる」
「姉さん?」
こんな時、心にも思ってない事まで言ってしまう。それは、どうすれば止められる?
ううん、止める事なんて出来ない。
一瞬にして水かさが増してしまっては、塞き止めていた物なんて役に立たない。
水圧に負けて、勢い良く溢れ流れ出すだけ。
「本当は、私より出来るくせに、どうしてもっと本気を出さないの?」
「え?」
「私の事、バカにしてる?余裕無くて必死な私を見てバカにしてる?」
「ちょっ、何の事?」
私は家を飛び出していた。
時刻は午後1時を過ぎた頃、灼熱地獄との中を走っているのと同じ。
熱くて熱くて、身体が悲鳴を上げ始めている。
行く先も何も考えないで、辿り着いた場所は――。
昔、遊んだ公園だった。




