表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/84

【17】7月20日+③




あの後、どうやって家まで帰ったんだろう?


家の中は夏の熱が篭っていて息苦しい。


急いで窓を開け、空気の入れ替えと思っても、入ってくるのは熱い風と蝉の鳴き声だけ。


冷蔵庫を開けて、昨夜飲みかけのカオリーオフの炭酸水のペットボトルを取り出す。


空腹感はあるけど、食べる気がしない。



(買い物して帰るの、忘れてた…)



こういう時こそ、使わせてもらおう!我が弟よ!


姉のお願い聞いてちょうだい!


携帯電話を手にしてメール画面を開いた。






      *    *    *






~♪♪~♪♪


メールの着信音。



(あ、姉さんからだ)



すぐ鞄から携帯を出して、確認する。



「な~に~?誰から~?」



少し不機嫌な顔で俺の隣を歩いているのは、藤堂理奈。


今現在、俺の彼女。


と、言っても付き合い始めて2ヶ月ぐらい。



  件名:お姉さまからのお願い

  

  本文:帰りにジャガイモとニンジンと炭酸飲料買って来て!



「なに?!そのメール!!“お姉さまからのお願い”って!まさか、今から買い物に行くつもりなの?」



いかにも信じられないという大きな声。



「勝手に見ないで欲しいな。――これから俺は“お姉さま”のお使いに行かないといけなくなったから。悪いけど、ここで」



俺は、にっこりと笑って別れを告げる。


何か藤堂さんは言ってるようだけど、気にせずこの場を後にする。


俺だって、言いたい事はあるけど――きっと、これで藤堂さんとも終わりかな?


毎回、パターンは同じ。


「付き合って」と言われて付き合い始め、「別れよう」と言われて終わる。


仕方ない。だって、姉さんは家族で、今まで一番長く一緒に居た家族。


他の女の子なんかと比べるなんて出来やしない。











買い物をして、家に帰る。



「姉さん!」



呼んでも返事無し。


お使いまで頼んでおきながら、居ないってどういう…。



「姉…さ…、!――こんな所で、普通寝る?」



呆れてしまう。


リビングのソファの影で丸くなって寝てしまっている姉。



(せめて、ソファの上で寝ればいいのに…。もしかして、ソファから落ちたとか?)



しかも、制服のままで……らしくない。


久し振りに見た姉の寝顔はどこか苦しげで、今にも泣き出しそうで…。



「姉さん、起きて!」

「あれ?光星?帰ってたんだ」



欠伸をして、伸びまでして、すっきりとした顔で起きてくる。



「あ、悪かったわね。買って来てくれたんだ」

「………」



無言でペットボトルを渡され、ジャガイモは専用ストックへ、ニンジンは冷蔵庫の野菜室へ。



「お、怒ってる…の?」

「先に着替えたら?いくら明日から夏休みでもさ」



すっかり皺が付いてしまったスカートを手で直しても、直る訳なんかないのに皺を伸ばそうとする姉さん。



「あ、もしかして怒ってる理由って…」

「……」

「デート中だった?」



と言って姉さんは「悪い事した!」と手を合わせて謝ってくる。



「別にいいよ。それより、姉さんの方こそ何かあった?」



俺の言葉に、姉さんは――笑った。



「な~んにも、無いよ!」



とだけ言い、着替えに2階の部屋に上がって行く。


やっぱり、姉さんは嘘が下手。


姉さんがあんな風に笑う時って、心配掛けないようにとする行動。


何か、あったんだ。


姫野と……。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ