【12】6月27日+①
来週に期末テストを控えた、そんなある日の図書室。
いつものように、五十鈴とテスト勉強をしてる私。
私が教えた所をきちんと勉強してくる五十鈴は本当に素直で頑張り屋さんだ。
まぁ、普段からちゃんと授業を聞いて復習しておけば…。
でもでも!そんな五十鈴だからこそ、こうやってテスト前を一緒に過ごす事も出来るという訳で…。
「千星先輩」
また、あいつがやって来た。
ここは図書室という事もあり、いつものように大声で呼ばれる事は無いとしても、どこか複雑な気持ち。
「何か用?姫野」
「麻生先輩に、ここだと聞いたので…」
ふ~ん、そうなんだ。――それで?
「それで、千星先輩!オ、オレに勉強を教えてくれませんか?」
「………」
今、幻聴が…。
教えてくれ?何を?勉強を?私が?
これから、私は五十鈴と二人っきりで濃密な時間を過ごそうというのにっ!!
「自分でしなさいよ!私は、忙しいのっ!」
「えーっ?い、忙しいの?千星ちゃんっ!!!」
と、驚いた顔をしてる五十鈴。
しかも“知らなかったよ~”とか“忙しいのに、勉強付き合ってくれてたなんて、ごめ~ん”とまで言ってくる始末。
「仕方ないね。じゃあ、わたしが教えてあげるよ!マコトくん!」
ど、ど、ど、どうして、そうなるのよ~~っ!!!!
五十鈴が姫野の手にしている教科書を見て「数学?」と訊いている。
「先生は?う~ん、杉野先生なら去年習ってたから傾向とか分かるよ」
すっかり、五十鈴は姫野に掛かりっきりになってしまった。
あぁ~、私とした事が…。
こんな展開になる事を予測出来ないなんて……。




