27.格上との初戦闘
良ければブックマークと評価をよろしくお願いいたします!
先日までいた爽やかな草原の風景とは打って変わって、なにやらおどろおどろしく感じる場所。2人と2匹は今「ムベノ湿地帯」と呼ばれる場所の入り口に立ち尽くしていた。
「おおう、噂に違わぬ毒々しさね……正直こわい」
「実物を肌で感じると結構違うもんだな……ここ入ってくのかーマジかー……」
「メェ……」
「……めぇ」
生えている植物も鮮やかな緑ではなく、やや紫がかったモノやくすんだ赤が目立つ。非常にジメジメしており、沼のような場所も多い。地面と呼べる場所も踏めばグチャリと音を立てるほどだ。
「ねぇ、カナタの作戦通りならもっふぃーとゲンちゃんは戦わなくても大丈夫なんだよね? ルームにいれてあげたらどうかな?」
ブーツを履いているイエナでも足を踏み入れるのは正直遠慮したい場所だ。何せ足元環境は最悪だし、生えてる草木もほとんどがなんらかの毒を持っている。
2匹のテンションもダダ下がりだ。
「そうしてやりたいところなんだけど、ルーム内にいると経験値入らないと思うんだよな」
「どういうこと?」
「パーティメンバーと同じく、ペットにも経験値がいくんだよ。だから、今後一緒に戦うためにも2匹にはレベル上げしてほしいんだ」
「カナタが倒しても2匹のレベル上げには繋がるのか。なら我慢してもらうしかないわよね……ごめんね、終わったらキレイにしてあげるから」
下手したらこのフワフワの毛並みまでも汚れてしまいそうだが、レベル上げに必要と言われれば耐えてもらうしかない。
「それにしても、製作の経験値はパーティ組んでても入らないのに、戦闘の経験値は分配されるってヘンな話よね」
事前に聞いていたものの、やはり納得がいかない。
前線で頑張った人も、後方で応援だけしている人も、どちらも経験値が貰えるという仕組みならもっと色々な人が高レベルになっていそうなものだが。
「一応戦闘ジョブじゃない人は経験値半減するし、トドメを刺した人はボーナスがつくとかはあるぞ。あとはレベル差がありすぎると経験値が入りにくい、とかな。それよりなにより、この世界の人たちは正確にパーティ組めていないのが原因じゃないか、と思ってるんだけど」
「え? あぁ、そっか。私とカナタがパーティ組んだ時ってなんかヘンな声したものね。皆はアレを体験してないのか」
「そうそう。アレが正式にパーティを組むっていう判定になるとしたら、この世界の大半の人たちは経験値の分配も上手くいってないんじゃないかな」
そんな雑談をしながら、あまり奥深くに入らないように注意しつつ魔物の出現を待つ。湿地帯の奥まで行ってしまうとルームを使っても逃げられない魔物に鉢合わせする可能性があるからだ。
今のところ、カナタは自分のレベルよりも1つ2つ下の魔物であれば裏技などを使わなくても倒せるそうだ。それが正攻法だし、ある程度安全ではある。
ただ、レベル上げ効率が物凄く悪いらしい。
「っ! いる! イエナ、ちょっと下がっててくれ。あと、ルームの準備も」
「わかったわ!」
カナタの『気配察知』にお目当ての魔物が反応したらしい。すぐさま言われた通りにルームの入り口を召喚し、いつでも逃げ込める準備をする。
「よし、見つけた! ポイズンスライムだ!」
ちょっと大きな水たまりくらいのなんだか汚い色の水の中、そこにうにょうにょと緑色の動く物体がいた。
「あれが……」
カナタが言うところのアクティブモンスター。要するに、人間を見かけると襲ってくるタイプのモンスターだ。確かにこちらに気付いた瞬間に敵意を感じた気がする。
そして、毒消しで倒されてしまう魔物。
ということなのだが、本当にイエナが作った毒消しが効くのだろうかと思うほどに、なんとなく恐怖がある。
(なんだろう、怖い。私よりもレベルが上だからかな)
現在のイエナのレベルはルームを拡張したときのままの25レベル。ポイズンスライムはそのイエナより上。そしてカナタはイエナよりもかなり低いレベルだ。
本当に裏技が効くのか不安になってくる。
「よし、いくぞ!」
カナタももしかしたら不安だったのかもしれない。普段はあげない大きな声をあげて、ポイズンスライムに向けて攻撃をしかけた。
ここに来る前にイエナが製作した毒消しは丸い錠剤タイプ。それを革袋にたんと詰め込んでカナタに渡してある。カナタはそのうちの何粒かをまとめて投げつけたのだ。
毒消しは上手くポイズンスライムに当たったらしい。嫌がるような動きを見せている。その部分だけ器用に空間をあけて、できるだけ触れないようにしているようなーー。
「ッ!? イエナ! ルームへ!」
カナタが弾かれたように後ろへ飛び、声をかけてくる。イエナは返事をする間もなくルームに飛び込んだ。
次いでもっふぃーとゲン、最後にカナタが飛び込んでくる。
逃げる気配を察知したのか、ポイズンスライムが緑色の液体をこちらにめがけて噴射してきた。それが、運悪く逃げ込む途中のカナタの腕にかすってしまう。
「あっちぃ!」
「やだ、カナタ大丈夫!? って、きゃああああ!」
どうにかカナタをルーム内まで引っ張りあげる。
とりあえず安全地帯に逃げ込めたとカナタの心配をしながら目線をあげると、そこにはルームの入り口付近にべったりと張り付くポイズンスライムの姿があった。
どうにか入ろうと蠢いているのだが、見えない壁に阻まれているようだ。あまりにも恐ろしい光景にイエナは無我夢中で扉を閉めた。
これで外からも扉の存在はわからなくなったはずだ。
「う、悪い、イエナ。失敗したみたいだ」
「酷い傷! 待って、この前作ったポーションとかいうのが作業部屋に……待ってて!」
攻撃があたったカナタの腕は明らかにおかしな色をしていた。かすった付近の皮膚が緑色をしているのである。本人はと言えば大汗をかいていて、顔色も土気色だ。
大急ぎで自分の作業部屋へ放置していたポーションとかいう傷を治す薬をとりに行く。その間カナタは何やらごそごそ動いていた。怪我人が何をしているのだと言いたいが、そんな時間すら惜しかった。
「多分、毒だと思う。しかしレベル差があるとかすっただけでこれか……」
「冷静に分析してる場合!? っていうか、毒なら……あら? 色が戻って、る?」
作業部屋に行って戻ってくる間に、カナタの顔色は戻り、傷口部分の色も元に戻っていた。
「あぁ、毒消し飲んでみて、それからすり潰して傷口にもつけてみた。ポイズンスライムの毒は消える、らしい」
「なる、ほど? じゃあもしかして……」
イエナはチャプチャプと音を立てるポーションをカナタに手渡しながら、思いつきをカナタに提案することにした。
【お願い】
このお話が少しでもお気に召しましたら、本編最新話の下の方にある☆☆☆☆☆から評価を入れていただけると嬉しいです!
イマイチだったな、という場合でも☆一つだけでも入れていただけると参考になります
ブックマークも評価も作者のモチベに繋がりますので、是非よろしくおねがいいたします
書籍化作品もありますので↓のリンクからどうぞ





