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169.新武器のお試しとルーム拡張

 一行はカナタの案内の元、大地を駆ける。

 ドワーフの国カザドから出てきたばかりの地上は、もう冬なのにまだまだ暖かく感じる。

 とは言え自然はやはり冬仕様になっているようで、ところどころ下草が枯れてデコボコになっていたり、枯葉が吹き溜まってあちこちに固まっていたりする。けれど、そんな悪路も久しぶりに走ることを楽しんでいるモフモフたちはなんのそのだ。


「うーん、風が気持ちいい~」


「雨上がりだからちょっとじっとりしてるけどな。暑い場所だから蒸してる」


「だからこそ、このスピードが最高じゃない!」


「確かに。……っと、前方、魔物いる。ゲン、一旦降りるぞ」


「メェッ!」


 久々のモフモフ旅を楽しんでいると、カナタが魔物の気配を察知した。ゲンから降りて戦うつもりらしい。イエナともっふぃーは後方で一旦待機だ。

 向かってきたのはアントソルジャー。大きなアリの魔物だ。羽がなくて飛ばない分、イエナ的にはまだマシな虫系魔物である。


「せいっ!」


 既にインベントリから取り出した大きな鎌で、気合いと共に横に薙ぐ。かなり大きな鎌なので振り回すのは大変かと思ったのだが、日頃の筋トレの成果か軽々と扱っているように見えた。


「…………?」


 大きく口を開けて、その頑丈そうな顎で噛み砕いてやろうとしていたはずのアントソルジャーが不思議そうな顔をしたまま真っ二つになり、ドスンと地面に落ちる。そして、キラキラとした光となって、ドロップ品に変わった。


「すごーい、一撃ね」


「う、うーん。凄いんだけど……」


「えっ!? 不具合あった!? ごめん!」


「あ、違う違う! デスサイズはめちゃくちゃいい! そうじゃなくて、敵がその……弱すぎて……」


「あぁ。レベル差結構あったものね」


 何故あのアントソルジャーが挑もうと思ったのかわからない程度にはレベルに開きがあった。


「……ごめん、イエナ。もう少し戦いたいんだけど……」


 カナタが申し訳なさそうな顔で続けてくる。確かにアレでは試し切りには物足りないだろう。


「いいわよ。……あ、それなら私もちょっとお願い聞いてほしいな~~?」


「どんどん言って。できる限り協力するから」


「そんな安請け合いしていいのかな~?」


「イエナだからな」


 唐突な特別扱いにちょっと心臓が跳ねる。茶番はそこそこにしておかないとなんだかよろしくない気がして、すぐさま直球を投げ込むことにした。


「私、レベルが上がったので念願のルーム拡張スキルを取得できます! つきましてはカナタが戦い終わったら、ルームの改装したい!」


「……ホントだ! レベル上がってるじゃん! おめでとう、イエナ!! あとそれ早く言おう!?」


 ということで、まずはデスサイズの試運転に向かうことに。そうは言っても、やることは目的地の方向に進みながら出てきた魔物を倒していくだけ。そして倒した後に聞き取り調査をして、微調整を重ねていく。


「じゃあ、もう少し柄を細くするわね」


「うーん、ごめん。筋トレ増やした方がいいのかな」


「手のサイズの話だから筋トレどうこうじゃないわよ。あ、そうそう、重さ自体は平気なのよね?」


「あ~……もう少し刃先の方が重いと遠心力でどうにかなるのかな?」


 と言った感じに試行錯誤の繰り返しだ。カナタはガンダルフのように「どうすれば自分が戦いやすいのか」というのはまだ理解しきれていないようである。戦った年季が圧倒的に違うのだから当たり前だろう。

 2人で頭を突き合わせてああでもないこうでもないと知恵を絞る。


「うん、俺としてはしっくりくる」


「あとは何度か戦ってみて、だね」


 微調整を数度繰り返して、とりあえず納得できるラインまできた。あとは日を改めて再度確認である。幸いなことに調整するための材料もたっぷりあるのだから、デスサイズにはカナタの体の一部と感じられるくらいにまでなってほしいところだ。


「んじゃ、戦闘はここまでにして、ルームの拡張やろうか。安全そうな場所探さないと。イエナはルーム拡張のスキル、今取得しちゃって。中に入った状態で拡張した場合、何か不具合あっても困るから」


「はーい!」


 場所探しをカナタに任せてイエナは半透明の枠と向かい合う。

 どのくらい広くなるのかワクワクしながら、イエナはスキル欄を見つめた。


(ただ選択するだけなんだけど、毎回緊張しちゃうわよね。後戻りできないってこわーい)


 スキルもステータスも振り直すことはできない。一応、やり直す方法はあちらの世界ではあったらしいのだが、この世界では手に入らないだろうというのがカナタの見解だ。なので、どれだけ慎重になったとしても悪くはない。

 5回確認してからスキルを取得する。


「あらららら。家具が偏っちゃってる!」


「インベントリあるからいいけど、なかったらめちゃくちゃ面倒だな……」


 まずルームに入って一番最初に目についたのは不自然に偏った家具たちだった。入口から見て奥の方にポカリと空いたスペースができている。


「あ、でもでも、かなり広くなってるんじゃない? それに見て! 上に登る階段が増えてる! てことは地下、1階、2階の実質3階建てってことよね」


「地下や2階も同じ広さなのかな? 行ってみようか」


 少し歪になったルーム内見学をしたところ、やはり全ての階は同じ広さになっていた。大体今までの1.5倍くらいである。


「すごーい、これならもっふぃーとゲンちゃんかなり走り回れるんじゃない?」


 カナタも嬉しそうに頷く。


「それに、暫定で置かせてもらっていた荷物を2階に撤去できるな。そうしたらもっと広く使える……今までだいぶ不便させてたもんなぁ」


「じゃあまずそれからやっちゃいましょ」


「りょーかい」


 モフモフたちには一旦リビングで待機してもらい、地下の荷物を2階へ運んでいく。あとは元々あった家具の場所を整えて完成だ。


「めぇ~~~~?」


「メェッ!! メェッ!!」


 広くなった地下をもっふぃーは確認するようにトコトコと歩き回り、ゲンは壁まで駆け上がらんばかりの勢いで走り始めた。


「これは、喜んでくれてるでいいわよね?」


「うん! ゲンすごく嬉しそうだ」


 ついでにモフモフたちの毛並みもこの時点で手入れしてしまうことに。丁寧に梳いてあげながら、話すのは部屋割りについてだ。


「ねぇカナタ。これだけ広くなったんだから、カナタの部屋も大きくしましょうよ」


「え? うーん……いいよ、俺は」


 やはりいずれは帰ってしまうということで遠慮しているようだ。が、そこはイエナが押す。


「遠慮しないでっていうか、これだけ広くなったのにカナタの部屋があんなに小さいの家主の私の心が狭いみたいじゃないの」


「そんなことないと思うけど……」


「何より、部屋のバランスが悪すぎるわ。ゲンちゃんもそう思うわよねー?」


「メェッ!!!」


「あ、ゲンを味方に引き入れるのはズルだろ!」


 そんなこんなでカナタの部屋も広くすることに決定。


「じゃあイエナは2階をまるまる使ったらどうだ? 家主なんだし」


「それは考えなくもなかったんだけど……こう、何かあったら1階の方が気付きやすくない? 宿に泊まった時とか。あと、もっふぃーたちの気配を感じられる方が安心するかなぁって」


「あ~……宿で来客がないわけではないもんな」


 というわけで、イエナの個室も1階のまま。ただ、今まで同じく1階にあった作業部屋と備品倉庫をまるっと2階へ移すことに。


「でも、空いたスペースがそのまま私の部屋になってもなぁ。空いてたらそこで作業しちゃうだけだと思うし」


「……やりそう。それで夜更かしする未来が見える」


「否定できないのが悔しい……まぁ予備の空き部屋があってもいいわよね」


「俺は部屋作りは手伝えないけど、整理整頓なら少しは助けになれると思う。あぁそうだ。大き目の収納あればいいなぁ」


「勿論作るわよ。どんな感じがいい?」


 家具作りは今となってはお手の物だ。


(武器作りもいいけど、こういう家具作るのも好きなのよねー。どんな風にしようかしら。楽しみだわ)


 久々の家具作りに胸を躍らせるイエナだった。


【お願い】


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