15.快適な旅のための話し合い
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宣言通りカナタの奢りでお昼を済ませた。
貯金もしたくて結構切り詰めた見習い生活をしていたイエナとしては、久しぶりの外食で大層満たされたのだが、カナタはちょっぴり不満そうだった。
「米のありがたみを感じた……」
「醤油、味噌が恋しい……」
などとブツブツ呟いていた。確か遠くの国に、そんな名前の食べ物があったような気もする。が、現時点でないものはない、あったとしても今の自分たちには手が届かない。慣れてもらうか、見つけた際に即買いできるくらいになってもらうしかないのだ。
(異世界人って私たちとは味覚も常識もちょっと違うのねぇ)
肩を落として食堂を出たカナタだったが、イエナの部屋に来る頃には持ち直していた。
「それでは第一回方針会議を始めよう」
「おっけー。書記は任せて」
話し合うことは山ほどある。
勿論ランチ中にも色々と相談はしたけれど、やはり他人の目がある中では相談しづらいことの方が多かった。
例えば、イエナのステータスはどの程度までならふっていいのか、とか。ルームはどの程度までなら改築可能なのか、とか。
「たぶん、そっちのが聞きたいこと多いだろうから、質問受け付けた方が早いんじゃないか?」
「あー、そうかも。えっとじゃあ……」
カナタも尋ねたいことはあったのだろうが、まずはイエナを優先してくれた。ありがたく質問を開始させてもらう。
最初に、二人が快適に旅をするための話し合い。自室の割り振りや、公共スペースの使い方など、基本的なところから。他は実際に旅に出てみないとわからないことばかりなので、決められるところだけでも、という思いだ。
それから、ずっと知りたかった『ステータス』について尋ねてみる。
「あーそうか。二人パーティだからお互いの不得意を補わなきゃならないものね。んー……それなら危険な橋渡るよりはそっちにステータスのことお任せした方がいいかも」
当初は「職人として試行錯誤したい」という気持ちが強かったイエナだが、ここ最近では少し考え方が変わってきている。
「ならそっちの要望も聞きつつ、今後職人として困らない方向で何パターンか考えとくよ。本当はパーティメンバーが増やせれば楽にはなるんだけどな」
「それは前にも話し合ってやめておこうってなったじゃない。一般人の私でもカナタの知識のヤバさとかルームの有用さがわかるもの。ヘタな人引き入れてバラされたりしたらどんな目に遭うかわからないじゃない!」
今イエナが最も重視しているのは互いの身の安全だ。現状、二人は秘密を共有しているからこそ成り立っている関係だ、と思っている。そのバランスを崩すのは、とても恐ろしいことのように思えた。
身の安全のためなら、職人としての考え方くらいいくらでも変える。安全じゃなければモノ作りなんてできないのだから。
「ってなると、ペット欲しいな」
「ペット? レンタルペット屋さんから借りるの?」
「え……? こっちの世界には魔物使いっていないの?」
「魔物使いってジョブはあるけど?」
ここでまた、カナタの知識とイエナの常識の差異が発生したようだ。
「私もそこまで詳しくない前提で聞いてね?」
と、前置きしてからイエナの知っている情報を羅列する。
イエナが知る限り魔物使いジョブを持つ者は畜産業に就く者が多い。動物との信頼関係を築くのが格段にうまく、扱いに長けているからだ。
他にはレンタルペット屋も割とポピュラーな職業である。防犯のために番犬を躾けて貸し出したり、増えすぎた鼠を駆除するために猫を育てて預けたり、というのが主な仕事である。
「魔物使いなのに魔物使役しないのか!?」
「そりゃそうでしょ。そこら辺にいるブラッククロウとかスライム従えてどうするのよ」
ブラッククロウとは真っ黒な鳥の魔物である。攻撃力は低いが回避能力が高く、大変倒すのが面倒くさい。その上経験値が美味しいわけでもなければドロップもよろしくない、と大変冒険者泣かせである。飛行距離が長いわけでもないため、手紙を運ぶのにも向かない。
スライムは言わずとしれた最弱のモンスターで、使役したところで益になる未来が見えない。
「あーそっか。魔物使いって自分のレベルが上がらないと強い魔物は使役できないからなぁ。けど、街の近くにいるスライムとかじゃ弱すぎてレベル上がらないし、かといってソロで強いやつ倒せるほど力はない。魔物使いが自分を鍛えるには難しい環境なのか」
カナタは納得がいったというように膝を打った。
「ていうか、魔物使いってギャザラーじゃなかったんだね」
「魔物使いも俺の知ってる知識だと戦闘ジョブだな。でも確かに魔物を連れていない魔物使いって大分弱いわ。戦闘するより家畜相手にする方が安全だし、一次産業系のギャザラーって思われるのもわかるかも」
「で? ペットってどういう? カナタの口ぶりだと私が知ってるペットとはかけ離れてそうなんだけど」
「えぇと……まず、魔物っていうのは大きく三つに分類できるんだ」
カナタの説明に耳を傾けながら、イエナはメモをとり始めた。
「一つ目は人間に悪意を持っていて、絶対に使役できない魔物。これはもう討伐対象でしかない。そういうやつの方がドロップも美味しいことが多いな。二つ目が、魔物使い固有のスキル『とらえる』っていうので捕まえて使役できるやつ。まぁスキル発動させるには結構弱らせなきゃいけないみたいだから、この世界だとあんまり成功してなくて知られていないのかもしれない」
「これも広めたらヤバいことになりそうな知識ね」
今までただの脅威でしかなかった魔物が、人の味方になる。それだけ聞くと良いことのように思えるが、その気になればいくらでも悪用できそうな感じがする。
「使役できるやつ、できないやつの区別も俺は知ってるけど、知らない場合は手当たり次第になるだろうから危険度も増すだろうしな」
「これも絶対秘密ね。で? 最後の三つ目は?」
「あぁそうそう。それが俺たちにとっては大事なんだ。三つ目の、餌付けすると言うこと聞いてくれるタイプの魔物だ」
「あ! もしかして青牛とか?」
どこかの農業大国が飼育することに成功した魔物がいる、と聞いたことがある。なんでもめちゃくちゃ濃厚な牛乳を生産できるらしい。まだまだ庶民の口には入らないが、いつかは流通するかも、とパン屋のおばちゃんが言っていたのを覚えている。
「あ、そうそう。そいつは結構難易度低いやつだな。めーちゃくちゃ餌がいるだけで、凶暴性も低いし」
「めちゃくちゃってどれくらい?」
「通常餌付けでどうにかなる魔物を1とすると、そいつは7くらい餌を消費する。この手のタイプは一定時間餌をあげないと逃げ出すから、こっちの世界だと毎日の餌付けが7倍必要って考えて良さそうなんだよな」
「7倍も? それじゃあ庶民の口に入るまで普及するのは遠そうね……」
ちょっぴりガッカリするイエナ。いつかは飲んでみたいなと思っていたのだ。
「俺らがペットにするならそういう観点からも厳選しないとだな。餌付けが可能で、めちゃくちゃ餌が必要なわけではなく、できれば騎乗と戦闘ができるやつ」
「騎乗と戦闘も!? 条件厳しすぎない? その上、私たちが移動可能な範囲に生息してなきゃ出会えもしないのよ?」
「一応ピックアップはしておくけど、現状は残念ながら保留だなぁ」
(戦うペット、かぁ……それってもうペットって言わないんじゃ……)
まだまだ異世界人とのギャップに悩むイエナであった。
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