14.講習を終えて
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冒険者講習は滞りなく終わった。多分、おそらく。
講習を行うのは本当に初めてだったらしく、担当者が物凄くワタワタしていた。なのでこういう感想になってしまう。けれど、得られた知識は本物なはずだ。
少なくとも、講習を受けずに旅に出ていたらヒドい目に遭っていたと思う。
「たくさん知らないことがあったわ……」
「だよなぁ盲点っていうか」
カナタも同じ感想だったようでちょっと遠い目をしている。
「当たり前のことだけど、自然界にはモンスターだけじゃなくって虫とかもいるものね。巨大化してモンスター扱いされているやつも含めて。虫よけって大事」
虫がルームの中まで入ってこれるかどうかは正直わからない。敵意を持つモンスターであれば入れないとは思うが、ただただ生き延びるためだけに迷い込んだ虫は入ってこれる気がする。用心するに越したことはない。担当のお姉さんの気合いが入った虫による被害報告の数々は、思い出しただけで体が震えてくる。
「虫対策も大事だけど水や食料の確保とかもな。ルームがあれば大半解決するとはいえ出せない状況も十分考えられるし、まったく準備していなかったら怪しまれる」
当然ながら人間は飲まず食わずでは生きていけない。基本冒険者は自己責任の職業なので遭難したとしても救助のあては皆無に等しい。飲まず食わずになれば判断も落ちる。常に冷静な判断をするためには睡眠と食事は超重要項目なのである。わかっているつもりではあったが、やはり実際にあったケースを聞くと一層気をつけねばならないと思う。
「あと足元の環境整えるのも必須だな」
冒険者はギルド推薦の靴を買うように言われた。正直最初はあまりにも高くて「ぼったくりじゃないか」と思ったが、理由を聞くと納得した。街の外は足場環境が悪いのだ。それは実際に外で採集をしたイエナにもわかる。
街から離れれば離れるほど道路状態は悪くなり、最後には道ですらなくなってしまう。山沿いを行けば張り出した木の根が、水辺に近づけば湿った下草やぬかるみが、それぞれ執拗に歩みを妨げてくる。なまじな履き物ではすぐに使い物にならなくなるだろう。その上、コンディションが悪化した靴で歩き続ければ、健康被害も考えられる。
その点冒険者ギルド推薦の靴は少なくとも耐久性が一定基準以上はあるらしい。もちろん乱暴に扱えば壊れるのは当然だけど。
「靴に関しては一足買って研究してみたいなぁ……。上手くすれば売ってるのより丈夫なの作れる、ような気がする」
今まで靴には手を出してこなかったが、意識してみると製作できそうで心が躍った。もちろん最初からうまくいくはずはないけれど、やはり新しい製作物を考えるのは楽しい。
「あーーっと。その辺もおいおい説明させてほしい。イエナが作るモノは生活の向上に直結するから」
どうやら作る際にも何か転生者の知識が応用できるようだ。
正直に言うと、製作物に関しては「職人の矜持」がうずかないこともない。だが、これから二人でパーティを組み、街の外へと行くのだ。快適さには代えられない、というのもわかっている。
意地を張って知識の活用をしないのはもったいない。知らないことで命を危険に晒すのは論外だ。
「了解。んじゃあとで説明お願いします」
「製作系に関しては目いっぱい頼りにさせてもらうよ。俺はうまいこといい素材を手に入れられないかルート考えてみる。あと俺らのレベリングも考えないとな。申し訳ないけど今回の講習は戦闘とかレベリングとかそういった方面はあんまりだったし」
「カナタにとってはそうかもね」
カナタは不満があるようだが、基礎の基礎から学ばなければならないイエナとしては悪くなかったように思う。
街の外は本当に命のやり取りをする場所で、少しの油断も文字通り命取りになる、と改めて認識した。
(気軽に女一人旅って思ってたけど、本当に安直すぎたな。クビになってフラれてって重なったせいで変な方向にはっちゃけてたかも。もう少し落ち着かないとな……)
とはいえ、やはり旅に出たいという気持ちに変わりはない。
的確に準備を整えれば、格段に安全性を高められるということも学んだ。今はじっくりと準備をする期間なのである。
部屋から退去するまではまだ日数があるし、その日までに準備が整わなかったらカナタと宿にでも泊まって続ければ良い。
「まずはこの周辺の地図と記憶の照合かな……。モンスターの分布ももしかしたら違うかもしれないし」
「部屋をどうするかもあるわよ。思っているよりもやることが山積みね」
往来でルームのことを言うわけにはいかないため、ぼかした表現になるが、こっちの相談も必須だ。
さっさと人目につかないところに行って相談したい。だが、何もしなくてもお腹は空いてしまうものだ。講習がそこそこ長丁場だったこともあり、まずは二人で腹ごしらえのために大通りへと向かっていく。
「まぁやることがなくてヒマよりはいい、と思おう」
「ご飯食べたらウチ来る? その方がゆっくり相談できるもの」
「んじゃお言葉に甘えて。その代わり今日のメシは俺の奢りってことで」
「え? 私払えるわよ?」
これからパートナーとしてやっていくのだから、奢ったり奢られたりというのは避けた方が良いのではないか。そう思ったのだが、カナタは首をふった。
「今後借りが増えてくのは目に見えてるからさ。あと、俺に生活能力あるぞーというのを見せたいのもあるかな」
「……じゃあ、今回はお願いしようかな。それとは別にあとでパーティのお財布についても検討しましょ」
「オッケー」
そんな会話をしながら適当な店に入っていく。
楽しそうな二人の姿を、じっと見つめる影があった。その人物は二人が店の中へ消えると、何処へともなく雑踏に紛れていった。
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