【コミカライズ8~10話番外編】ありがとう、さようなら
ゼニス「お久しぶりです、こんにちは! コミカライズ10話が更新されました」
ティト「このコラム?はずいぶん間が空きましたね」
ゼニス「うーん、書こうとは思っていたんだけど。8話は漫画としてとびっきり面白いからこそ、ここじゃ『尻です』『爆発するところでした』『尻です』くらいしか言いようがなくて」
ティト「お尻連呼やめてください」
ゼニス「だから書けなかったの! で、9話はもちろん見どころだくさんだったけど、作者がちょっと不調で書けなくて」
ティト「まぁ仕方ないですね」
ゼニス「というわけで、9話からいっちゃうよー」
+++第9話の話
ゼニス「魔法使いになった私が町歩きをして、新しい出会いを果たすお話です。回廊広場はローマ、ユピテルの代表的な建築物。屋根のない広場を列柱回廊が取り巻いているの。ここでは市場が立ったり政治集会が行われたりと、市民の生活に密に関わっていたよ。『フォルムが◯割埋まる人波』とかで人混みの多さを表現したくらいだよ。漫画家さんは相変わらずの美しい筆致で、ユピテルの生活を描いてくれている」
ティト「地方都市ならフォルムは町ごとに一つ二つですが、首都のように大きな町だといくつもありますね」
ゼニス「そうだね。で、首都の一番大きなフォルムは『フォロ・ユーノー』。ローマならフォロ・ロマーノ。元老院議会場や各種の公会堂、それにウェスタ神殿なんかが揃い踏みした名実ともに首都の中心街だけど、中小のフォルムはまた別にいくつもある」
ティト「今回は小さな市場が開かれていました」
ゼニス「市場は食品市とか布市とか種類ごとに立つ場合もあるけど、今回のようにジャンルを限定しないものも多いよ。そして人が集まれば当然、食べ物や飲み物を提供する人も出てくるわけで……」
ティト「マルクスのバカがいた、と」
ゼニス「バカはひどい。出会ったばかりの頃のマルクスは、そういえばあんな感じで調子が良くて図々しかったっけ。でも商売人としてどっちも必要な素質じゃない?」
ティト「まあ、そうですね。あいつは何だかんだ言って頭の回転が早いし、今回はお母さんの病気の件で必死だったのでしょう」
ゼニス「おかげで私も新しい商売を思いついたわけで。ちなみに『マルクス』は『ガイウス』と並んで当時のローマではありふれた名前。2つ合わせて全体の3割くらいいたんじゃないかと」
ティト「マルクス! ガイウス! と呼んだら男性の3割が振り向くわけですか」
ゼニス「そう考えるとちょっと怖い(笑)」
+++第10話の話
ゼニス「そして第10話。冷凍冷蔵のプレゼンと魔法実験の話です」
ティト「あの時のティベリウス様は怖かったですね……」
ゼニス「そうそう。普段優しげなのにふっと冷たい感じになったから、ビビった……いや、驚いたよ」
ティト「お嬢様の言う冷凍や冷蔵の話は、あたしにはよく分からなくて」
ゼニス「無理ないと思う。古代世界じゃそもそも冷蔵も冷凍も発想の外だったんだ。現実世界の古い記録では、紀元前4世紀のアレクサンダー大王が攻城戦の際に、地面に穴を掘って雪を入れて食物を保存したという話があるけれど。それ以外はほとんどなくて、ましてや輸送に使った話は完全にゼロ」
ティト「フェリクスのお屋敷の氷室も、北西山脈から運んできた氷が入っているだけですものね」
ゼニス「私からすればもったいないと思ったよ。だからティベリウスさんが冷蔵の話を知っていたのはさすがに博識って感じ。ユピテルは温暖な国だから、真冬でも池が凍ったりはしないしね」
ティト「プレゼン?の話も一度は失敗しかけたけど、オクタヴィー様のとりなしでうまくいきました」
ゼニス「ほんと、師匠には感謝。いつもはいい加減だけど、ここぞって時はけっこう助けてくれる。いい師匠を持ったよ」
ゼニス「それで後半は魔法の呪文の実験をしてみた」
ティト「やたらに長い呪文でしたね。あれは何を唱えていたんです?」
ゼニス「んー、氷より冷たい物質としてドライアイスを出そうとして、でも『ドライアイス』が魔法語になかったので四苦八苦してた」
ティト「(苦笑)」
ゼニス「けどおかげで、魔法語にそれそのものがなくても特徴を羅列していけば物質を生み出せると分かった。これってすごいことだよ!」
ティト「でも魔法で出したものは丸一日以内で消えてしまうんですよね」
ゼニス「うん。だから金銀や宝石を作って売り払うのは難しい。何故? と思うけど、それはWEB版の後半で判明するので、ここでは横に置いておこう。兎にも角にも工夫次第でいろんなことができるのが魔法の楽しくていいところ!」
ティト「お嬢様は工夫の人ですね。思いついたことをいろいろ考えてやってみる」
ゼニス「はたから見ればバカみたいな行動に見えるかもだけど、私としては仮説・検証・実験をやってるつもりなんだよ。お尻の時もそうだったんだから!」
ティト「はいはい、分かりました」
ゼニス「工夫の結果で一歩ずつ前進して、ここまで来れた。商売だってお金稼ぎだけじゃなく、ユピテルの人たちを笑顔にできた。私、すごく嬉しくて」
ティト「……そうですね。お嬢様はよく頑張ったと思います」
ゼニス「ティトが褒めるなんて珍しい! 私の物語は正直言えばまだまだ序盤だったんだけど、コミカライズはここまでになっちゃった」
ティト「とてもいい漫画を描いてもらっただけに残念ですが、仕方ありません」
ゼニス「作者も原作の力不足だとへこんでいたよ。でもまあ、売れるかどうかは運にもよるから。たくさんの人に読んでもらった幸運と素敵な漫画にしてくれた漫画家さんに感謝しなきゃ」
ティト「コミカライズ第2巻は2025年3月15日(土曜日)発売です」
ゼニス「漫画家さんによるおまけ漫画では、この後のダイジェストストーリーが描かれています。なんとグレンが登場するよ! 漫画に出られて本人めちゃ喜んでた!」
ティト「原作者の書き下ろしSSは、実家の犬の話です。白犬のプラム目線」
ゼニス「紙の漫画と電子、どちらもよろしくお願いしますね!」
ゼニス「いやー、これで本当に私の物語は終わりになるねぇ」
ティト「2022年の12月にWEB連載を始めて以来、2年以上ですか。早いものです」
ゼニス「ほんと! 実を言うと小説の書籍2巻は打ち切りが決まる前に原稿を書いていたせいで、張り切って風呂敷広げすぎちゃったみたいなの」
ティト「農場やハミルカルやキイさんの話ですか」
ゼニス「そうそう。作者としては3巻があれば書き下ろして続きを追加したかったんだけど、まぁ無理で(笑)」
ティト「まったく商業は厳しいです」
ゼニス「でもその代わりに、当時考えて温めていたネタを別の小説に生かしたりしているみたい」
ティト「転んでもタダでは起きないってやつですね」
ゼニス「今書いているのは『異世界コスプレイヤー、古代ローマ風国家で服飾革命を起こします!』という話。タイトルが全てを語っています」
ティト「コスプレイヤー……」
ゼニス「転生大魔女は紀元前1世紀のローマモデルだけど、コスプレイヤーはもう少し古くて紀元前2世紀のローマがモデル。当時の世相を折り込みながら、魔法などのファンタジー要素は控えめで、ものづくりと商売に邁進する話です。転生モノで10歳の女の子が主人公。こちらもよろしくお願いしますね! ブックマークや評価をいただけると飛び上がって喜びます!」
ティト「新作は作者ページからどうぞ。目次の作者の名前からリンクしています」
ゼニス「それでは、この長いお話にお付き合いいただいてありがとうございました。さようなら、またいつかお会いしましょう!」
☆★ ゼニスとティト、深々とお辞儀をする。周囲がふわりと暗くなり、ENDマーク ★☆





