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前語り
――遥か昔。
龍が天を翔け、耳長族が弓を取り、土矮夫が鉄を打つ。妖精が宙で踊って、人間族も魔法を使った。
神秘に満ちていた、黄金の時代。
数千年か、或いは数万年前か。
今でこそ存在すら疑われる黄金の時代は、確かに存在したのだ。煌めかんばかりの繁栄を誇った文明が衰退したのか、未だ解き明かされていない。
定命の種である人間にとって数千、或いは数万年という時間は余りにも長い。記録など殆ど残されてはいなかった。
長命種の耳長族や土矮夫に尋ねることが出来らのならその謎を解き明かせるのかもしれないが、今となっては空を翔ける龍も、人以外の知識ある種族も御伽噺の中にしか存在していない。皆、何処かへ消えてしまった。
ここは、神秘に見捨てられた世界。
人は幻想を御伽噺の中に追いやってしまった。魔法を忘れ、神秘の技を使うことが出来るのは極一部。
そんな世界で、神秘を追い求めて旅を続ける男が一人。
名は、アレス。
これは、遍歴の騎士としてこの世界に残された神秘の残り香を追い求めて国を跨いで流離いながら、様々な冒険を潜り抜けた希代の冒険家であり、後に英雄となる男の物語である。




