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第九十二話 殿下の招待

新当主はこれからリランテーヌ子爵家を立て直そうとしている。


その応援もしたい。


そういう意味でも招待を受けてほしいと思っていた。


まだ異母弟とはいっても、かわいい弟。


その弟と仲良くしていきたいという思いもあった。


その願いが通じて、新当主は結婚式にきてくれたのだ。


新当主は、わたしたちの前に来ると、


「お姉様、いや王太子妃殿下。そして、王太子殿下。わたしはリランテーヌ子爵家の代表として、王太子妃殿下を子爵家から追放したことをお詫びいたします」


と言って、頭を下げて謝った。


「わたしが追放を止めることができなかったのは、とても申し訳なく思っています」


新当主は涙を流し始めていた。


新当主であるわたしの異母弟は、有能であるし、こうしたやさしさを持っている。


わたしは、


「もうそれは過去のことです。これからは、あなた様が中心になっていい政治を行い、リランテーヌ子爵家を発展させてください」


とやさしい言葉をかけた。


殿下も、


「あなたのような方が当主なら子爵家も大丈夫です。よろしくお願いします」


と柔らかい口調で言った。


「ありがたいお言葉。お二方がおっしゃる通り、きっと、リランテーヌ子爵家を発展させていきます」


新当主は涙声になりながら言い、そして、


「ご結婚おめでとうございます」


と頭を下げながら言ってくれた。


「ありがとう」


「ありがとうございます」


わたしたちも頭を下げながらその思いに応えた。




そして、殿下は、結婚式が終わった後、


「これで結婚が成立しました。それで、今晩、その……」


と恥ずかしそうにわたしに言ってきた。


殿下は、今日、わたしと二人だけの世界に入りたいとおっしゃろうとしているのだ……。


わたしは心が沸騰し始めた。


もともと結婚が成立した後、そういう世界に入りたいと言っていたので、心の準備はしてはいたのだけど……。


いざとなると恥ずかしい気持ちになってくる。


殿下は少しの間躊躇していたが、やがて、


「わたしの寝室に招待させていただきます。その、今までのように抱きしめ合い、キスをするだけではありません」


と言った。


その瞬間、わたしの心は沸騰してくる。


そして、


「わたしは、今日、あなたと二人だけの世界に入っていきたいのです」


と殿下は頭を下げながら言った。


二人だけの世界……。


いざ言われてみると、これほど恥ずかしい気持ちになる言葉はない気がする。


心が沸騰する寸前まできていて、コントロールすることは難しくなってきている。


しかし、そう言っているわけにはいかない。


殿下の気持ちには応えなければならない。


わたしは、勇気を振り絞って、


「わたしでよろしければ……」


と小声で言った。


恥ずかしくて恥ずかしくてたまらない。


「ありがとうございます。この夜がわたしたち夫婦の素敵な出発点になるようにしたいと思っています。それでは今晩よろしくお願いします」


殿下はホッとした様子。


殿下も緊張していたのだと思う。


殿下の期待に応えていかなくてはいけない。


まだまだ恥ずかしいけれど、その恥ずかしさを乗り越えていかなくてはいけない。


それが、夫婦というものだと思う。


今晩わたしは殿下の求めに応え、殿下との愛をより一層強いものにしたい。


わたしはそう思うことによって、恥ずかしい気持ちを乗り越えようとしていた。


わたしは殿下のことが好き。


殿下の為にわたしを捧げていく。


国王陛下と王妃殿下が言っていたように、殿下をもっと愛していかなくてはいけない。


わたしは強くそう思った。


「面白い」


「続きが気になる。続きを読みたい」


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