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第九十話 ルアンソワ様も継母も異母妹も、もう間に合わない

ルアンソワ様は、国王陛下と殿下に哀願をする。


しかし、国王陛下は、


「今日、あなたの話を聞いて、もうあなたは公爵家の当主になるのは無理だと判断した。このまま後継者でいるだけでも反乱が発生してしまう。もう、後継者の座を譲り、このまま修道院に行くことだ。それに、あなたは何人もの女性を捨て、つらく苦しい思いをさせたと聞いている。その分も十分反省しなければならない」


と厳しく言った。


すると、ルアンソワ様は、


「何人もの女性を捨てた……。そうだ。わたしはフローラリンデを捨ててから、すべてがおかしい方向に進んでしまったのだ。どうして、どうして、捨ててしまってイレーレナを選択してしまったのだろう……。フローラリンデと一緒にいればこんなことにはならなかった。残念で残念でしようがない。昔に戻れるのなら、わたしはフローラリンデを選択する。でも、もう間に合わない……」


と泣きながらうつむいてしまった。


国王陛下と殿下は黙ってルアンソワ様の言葉を聞いている。


やがて、


「これで話は終わりだ。おとなしく修道院に行って反省しなさい」


と国王陛下は言い、席を立とうとする。


「国王陛下。わたしにチャンスを下さい。まだわたしは若くて、これからのものだと言うのに、修道院行きなんて無慈悲すぎます!」


ルアンソワ様は、国王陛下の心を動かそうと泣き叫んだ。


しかし、国王陛下がその言葉を受け入れるわけがない。


それでも哀願し続けるルアンソワ様。


国王陛下は、


「このものを公爵家に送り届けるのだ」


と側近に言い、その場を去って行く。


「お待ちください!」


とルアンソワ様は懸命に国王陛下に声をかけるのだが、もう振り向くことはなかった。


殿下も、


「修道院でしっかり反省してください」


とルアンソワ様にやさしく声をかけて、その場を去って行った。


しかし、二人が去った後もしばらくの間、


「どうして、どうして、公爵家はわたしのものなのに!」


と言って、ルアンソワ様は泣き叫び続けていたという。


こうしてルアンソワ様は、後継者をブリュノトノンさんに譲り、修道院へと送られていった。


イレーレナさんは、ルアンソワ様が修道院送りになったので、実家に帰された。


「どうして、こんなことになったのだろう……。ルアンソワ様の婚約者になどならなければよかった。フローラリンデが婚約者のままだったら、こんなつらい思いをすることはなかったのに……」


王宮を出る時、涙を流しながらイレーレナさんはそう言ったという。


これが、わたしが聞いたルアンソワ様とボトルンド公爵家とイレーレナさんの最新情報。




リランテーヌ子爵家の方の最新情報も入ってきていた。


激しくなっていく継母と異母姉の対立。


どちらも主導権を握ろうと一生懸命だった。


これだけでも子爵家は混乱していたが、二人に反対する勢力の規模がどんどん大きくなり、さらに混乱に拍車をかける結果となった。


主導権争いは、贅沢さ争いにもつながる。


重い税率の新税を創設し、すぐに取り立てを行って、自分たちの贅沢に使っていく。


子爵家の人々も困っていたが、領民も困窮し始めていた。


「この二人がフローラリンデ様を追放したことにより、子爵家は混乱してしまった。フローラリンデ様は前当主様を補佐して、とてもいい政治をされていた。そういうお方なので、新当主様を補佐すれば、きっといい政治が行われたはず」


と反対勢力の人々は口々にそう言っていった。


わたしの行方はわからないままだったので、反対勢力の人々は新当主に期待をかけるようになっていった。


「新当主様はこの二人と違い、きっといい政治をしてくれるに違いない。しかし、この二人がいるままでは、新当主様の能力は発揮できない。それどころか、その才能をつぶされてしまう。そして、子爵家は混乱したままだし、領民はどんどん困窮してしまうだろう。そこで、この二人を子爵家から追放し、新当主様に一本立ちしていただこう。まだ若くて大変だと思う。しかし、この子爵家を救う為には、新当主様を立てていくしかない!」


二人に反対する人々は、この意見でまとまり、二人に対して圧力をかけていく。


しかし、二人はそれに従うどころか弾圧をしようとした為、反対勢力は子爵家の屋敷へと押しかけた。


結局、その圧力に屈した二人は、子爵家を追放された。


継母は実家に。


異母姉は自分の母親の実家に。


それぞれ送られることになった。


子爵家の領内に入ることは、子爵家の許可なしにはできない。


子爵家の主導権争いどころか、今後、子爵家のことについては、何も口をはさむことはできなくなる。


それは、二人にとって、とてもつらいことだった。


「フローラリンデを追放しなければ、こんなことにはならなかったのに……」


「今になって思うと、フローラリンデの存在は大きかったと言わざるをえないわね……」


二人はそうつぶやいていたという。


しかし、もう間に合わない。


子爵家を去る時、二人は、


「このわたしは新当主の母親。子爵家のすべての権力を握るものなのに、なんでこの子にそばにいることができないの!」


「わたしは新当主の姉。わたしこそ子爵家のすべての権力を握るもの。この子をそばで守ってあげなければいけないの!」


と口々に言って、泣き叫んでいた。


わたしの異母弟である新当主は、気丈にも、じっと黙って聞いていたという。


これがリランテーヌ子爵家の最新情報。




ボトルンド公爵家もリランテーヌ子爵家もこうして大きな混乱を経験した。


両家ともわたしに対する酷い仕打ちから、混乱が発生している。


もう今となっては、何も言うことはない。


両家ともいい方向にいってほしい。


わたしは強くそう思うのだった。


「面白い」


「続きが気になる。続きを読みたい」


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