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第八十八話 抵抗するルアンソワ様

国王陛下は、ルアンソワ様に対し、


「領民の為の政治をしなければならない」


と言った。


しかし……。


「わたしが公爵家で圧制をしているとのことでしたが、なぜそれがいけないのでしょうか? 領民は我々に尽くす為の存在だあというのに。こんなつまらないことの為に、呼んでいただきたくはなかったです」


胸を張って言うルアンソワ様。


全く国王陛下の言うことに従う気はない。


当主である父親はうつむいていた。


何か反論したいようだったが、老いと病で言う気力がないのだろう。


国王陛下も殿下もあきれている。


「ルアンソワ、あなたは、領民が苦しんでいることをなんとも思わないのかね?」


国王陛下がそう言うと、


「思うわけがありません。むしろもっともっと税の取り立てを厳しくいようと思っておりました。贅沢をすること。それが我が公爵家の威光を保つことになるからです」


とルアンソワ様は応える。


「家の威光というものは、領民と一緒に作っていくものだと思います。そういうことは思ったことはないようですね。領民が生活に困っているようでは、威光もなにもあったものではないかと思います」


殿下がそう言うと、


「それは違うと思います。領民など公爵家の威光にはなんの関係もありません。領民だけでなく王国民だとしてもそれは関係ありません。それくらいは理解していただきたいものです」


とルアンソワ様はていねいな口調ではあるが、抵抗をしてくる。


「あなたはこれからも圧制を続けると思っているのでしょうか?」


殿下は柔らかい口調で言う。


それに対してルアンソワ様は、


「もちろんでございます。圧制を続けなければ、わたしの贅沢は維持することすらできませんし、この程度の贅沢ではまだまだ足りません。もっと贅沢をする為には、もっと税率を上げなければなりません。わたしが贅沢をしているのは、公爵家の威光の為でありますが、それは、最終的に王国全体の威光を高めていくことにもつながっていきます。これは王国の為でもあるのです」


と胸を張って応える。


「王国の為……」


「どうしてそう思うのだろう……」


国王陛下も殿下もあきれてしまってどうしょうもない状態。


「いずれにしても、圧制をしているという理由でわたしを呼んだのであれば、今すぐ帰らせていただきたいと思います。王国の為になることなのに、逆に難詰されるとなれば、国王陛下や王太子殿下の威光に傷がついてしまうと思っております」


ルアンソワ様はそう言って笑った。


自分は絶対に正しいという強い自信。


国王陛下と殿下は、しばらくの間じっと黙り込んでいた。


この間に二人は、ルアンソワ様が少しでも反省することを望んでいたのだろう。


そこで、


「今まで圧制をしていたのは、わたしの間違いでした。これからは領民の為の政治を行っていきます」


と言ってくれれば、二人は対応を変更したかもしれない。


しかし、ルアンソワ様は、全く反省することはなかった。


「あなたは自分のしていることが間違っていないと言うのだな?」


国王陛下はルアンソワ様に言う。


「もちろんです。間違っているなどということは、全く思っていません」


「わたしからも聞かせてもらいます。これからも圧制で公爵家の人々を苦しめると言うのですね? 領民たちのことを苦しめる政治をしていくのですね?」


殿下もルアンソワ様に言う。


「もちろんでございます」


「国王陛下もわたしも、あなたが領民のことを思う政治を行うことを望んでいます」


「領民のことを思う政治……」


「そうです。あなたにもそれはできるはずです」


やさしく言う殿下。


それでもルアンソワ様は、


「領民は、わたしに尽くすべき存在です。苦しもうがなにしようがどうでもいいのです。それよりも、公爵家の威光の方が何倍も大切です。どうしてそういうことがわかっていただけないのでしょう?」


と言って抵抗を続けていた。


「面白い」


「続きが気になる。続きを読みたい」


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