第七十九話 わたしの前世・殿下のことが好きです
わたしは殿下に一生懸命話しかけていた。
「殿下、もう一度、もう一度、その声をお聞きしたいです」
しかし、殿下の意識は戻らないまま。
このままではお話ができないまま、殿下はあの世に旅立たれてしまう。
それはあまりにも悲しい。
もう無理なのだろうか。
意識が戻りそうな様子がまるでない。
せめて、殿下の病状が一層悪化し始めた一か月前にここに来ていれば、もう少し殿下のお支えになることができたのに……。
わたしは殿下のことが好き。
その好きという気持ちを伝えたかったという思いはもちろん強い。
でも、まずは殿下のお支えになっていきたかったと思う。
わたしは結局、殿下をお支えすることはできなかった。
それがとても悲しい。
わたしの気力は次第になくなり始め、絶望し始めていた。
体調も良くない。だんだん苦しくなり、つらくなってくる。
このままではわたしは倒れるかもしれない。
しかし、わたしは思い直した。
こんなところで倒れるわけにはいかない。
今までできなかった分、殿下を支えていかなくてはいけない。
たとえ、周囲の方々が、殿下の生命は後わずかだと言っていても、そのわずかの間でもお支えしなくてはいけないと思う。
そして、わたしはまだ殿下にその想いを伝えていない。
殿下のお気持ちも伺っていない。
わたしの気持ちを伝え、殿下のお気持ちを伺うのは、わたしのわがままなのだと思う。
殿下は、わたしに対して、好意以上のものを持っていない可能性はあるからだ。
しかし、せっかくこの世でお会いし、多分前世でもお会いしていると思うので、この縁は大切にしたい。
わたしは、もう一度殿下に話しかけた。
「わたしは、殿下ともう一度お話がしたいと思っています。そして、殿下をお支えしたいと思っています。殿下、つらくて苦しいと思います。お力になれず申し訳ありませんが、もう一度意識を取り戻していただけるとうれしいです」
お願いします!
と強く願った。
しかし、それでもまだ意識は戻ってこない。
わたしは、さらに強く願った。
すると、
「う、う、う」
という声が殿下からし始める。
これは意識が戻り始めたのでは。
一気に期待が高まってくる。
そして、
「こ、ここは?」
と言って殿下は目を開けた。
「殿下!」
わたしは、うれしさで大粒の涙がこぼれてきた。
周囲にいた国王陛下、王妃殿下、二人の側近、侍医も涙を流している。
「フォルテーヌさん、来てくれたんですね、うれしいです」
殿下の目からも涙がこぼれてくる。
「あなたも体があまりよくないと聞いていました。それなのに無理を言って申し訳なかったです。でもそれだけあなたにお会いしたかったのです。そこのところを理解していただけるとありがたいです」
殿下は、苦しそうにしながらも、しっかりと話す。
わたしは、
「わたしのことを気づかっていただき、ありがとうございます。でもわたしは自分の体より、殿下のお体の方がはるかに大切だと思っています。今回、殿下の病状が悪化して、わたしに会いたい。とおっしゃっていたと伺い、絶対にお招きに応じなければと思いました。わたしは残念ながら今までは殿下をお支えできませんでしたが、これからは殿下をお支えしたいと強く思っています。そして、何よりも、わたしに会いたいとおっしゃられていたのが、何よりもうれしく思います」
と涙声になりながら言った。
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