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第七十二話 倒れていくわたし

四月中旬のある日。


この地にも春がきた。花が咲き、緑が萌え始めている。


夕方のことだった。


わたしはいつものように、殿下と打ち合わせを行っていた。


どうも体の調子が数日前からよくない。


熱はないし、喉も痛くないし、咳も出ていない。風邪というわけではなさそうだ。


でも体がフラフラする。


疲れているのかもしれないと思った。


この頃、ますます忙しくなっていて、殿下もわたしも、執務室での仕事が終わった後も夜遅くまで部屋で対策案を練っていることが多い。


三月下旬以降は、休日も部屋で対策案を練るようになっていた。


ラディアーヌ様とのお茶会も開催できなくなり、それはつらいところ。


この仕事が峠を越えたら、ラディアーヌ様とお茶会がしたい。


いろいろまたおしゃべりをしたい。


そういう希望をもっていた。


わたしたちの財政再建案に反対している人たちの多くが、賛成側になり始めてきている。


ここを乗り越え、賛成する人がもっと多くなってくれば、王国活性化への希望が開けていく。


それだけに今が一番大切な時だ。


睡眠時間が短くなっているが、それは我慢しなければならない。


しかし、そういう時でも、殿下とアンデーデさんの仲は気になるところ。


以前聞いたよりも、仲が進展してきているという噂が聞こえてきたりする。


そういうことを気にしている場合ではないし、ラディアーヌ様もその噂は気にしなくていいとおっしゃっている。


わたしはなるべく気にしないように心がけていた。


殿下は、


「いつも助言ありがとうございます。おかげさまで、とても助かっています。ただ最近無理しすぎていると思います。このままでは、あなたは倒れてしまうかもしれません。わたしはあなたのお体が心配です。一日、いや数日は休んだ方がいいと思います」


とおっしゃられる。


殿下のそういう気を配ってくださるところも好き。


しかし、殿下は昼も夜も一生懸命仕事をされている。


尊敬の思いで一杯だけど、殿下のお体の方も心配だ。


わたしの方からも殿下には、


「殿下こそせめて一日お休みになられてはいかがでしょう。この王国は、殿下あっての王国です。その殿下が倒れられては、この王国自体が苦しくなることになってしまいます」


と言ったのだが、殿下は、


「わたしは大丈夫です。今まで鍛えてきていますから、これくらいのことでは倒れることはないです。でもわたしのことを心配してくれてありがとうございます。その気持ちは、ありがたく受け取っておきたいと思います」


と言って、休もうとしない。


殿下が休まない以上、わたしだけが休むことはできない。


休むことはわたしの甘えだと思って、休まずに仕事を続けていた。


この日も、なんとか通常の終了時間まで耐えきることはできたのだが……。


体の限界がきていた。


頭がフラフラして気分がよくない。


体に力が入らず、席から立つことができない。


「フローラリンデさん、大丈夫ですか?」


殿下がやさしく声をかけてくる。


「大丈夫です」


と言って立ち上がろうとする。


しかし、体がフラフラして立ち上がりきれないまま、テーブルに倒れ込んでしまった。


意識がだんだん薄れていく。


「フローラリンデさん、フローラリンデさん!」


殿下の声がだんだん遠くなっていった……。


「面白い」


「続きが気になる。続きを読みたい」


と思っていただきましたら、


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