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第六十九話 殿下の恋人になる為の熱い気持ち

「まあ、わたしも明日すぐに告白するのは無理そうだと思いました。今の状態だと、もう少し時間をかけて、おにいさまへの想いを熱く方がいいと思ってきました。ただ、あまり時間はありません」


「と言われますと?」


「来年からは、いよいよおにいさまの本格的なお妃選びが始まります。その為に、舞踏会やパーティーにお妃候補が集まってくることは、あなたもご存じのことだと思います」


「話では聞いたことはありますが、わたしの家柄では、候補に挙がることもありませんので、遠い世界の話だと思っていました。しかも、今は貴族ではありませんので、ますます遠い世界の話になっています」


「わたしも、あなたが参加できないのを残念に思います。せっかくの、お妃選びの華やかな場だというのに。もしあなたが参加できたら、いつもと違う魅力におにいさまはメロメロになるでしょうし、周囲の人たちも、『この方であれば、お妃としてふさわしい』と言ってくれると思います」


「そうおっしゃっていただいて、ありがたいです」


褒められて、恥ずかしい気持ちになってくる。


「お妃候補たちが、そこにたくさん集まってきて、おにいさまにアプローチしてくるとは思っています。しかし、おにいさまは、決してその女性たちに心を動かすことはないと思ってします。おにいさまはあなたのことが好きだからです」


そう言うと、ラディアーヌ様は言葉を一旦切り、また続ける。


「いや、そう思ってはいるのですが、おにいさまは女性と付き合ったことがありませんので、魅力的で猛烈にアプローチをしてくる女性が舞踏会やパーティーでいたとしたら、心が動かされる可能性はないとはいえません。そこが心配なのです。あなた以外の女性に心を動かすおにいさまは、想像もできないのですが、万が一ということもあります。それで、わたしは、明日にでも告白した方がいいと申しました」


「お気づかいありがとうございます」


ここまで気をつかっていただける方は、なかなかいないと思う。


「とにかくおにいさまが他の女性に心を動かす前に、あなたのものにすべきだと思います」


「わたしのものだなんて……」


「それくらい想わないと、おにいさまの恋人にはなれないと思います」


ラディアーヌ様は、紅茶をまた飲むと、


「おにいさまを自分のものと想うぐらい、熱い気持ちになることが大切です。そして、そういう気持ちになってくれば、おにいさまにその気持ちが伝えられて、想いは通じていくのだと思います」


と言った。


「熱い気持ち……」


「そうです。もっと熱い気持ちになっていってください。わたしは、あなたと初めて会った時から、あなたとおにいさまの仲を応援してきました。これからも、応援し期待していますのであきらめることなく。恋人どうしになり、婚約し、結婚してくださいね」


「どうもありがとうございます。こんなにもやさしい言葉をかけてくださるとは。うれしいです」


「わたしは、おにいさまのこともあなたのことも好きです。その二人が幸せになることを願っています」


ラディアーヌ様はそう言うと、やさしく微笑んだ。


「面白い」


「続きが気になる。続きを読みたい」


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