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第六十七話 遠いところにある恋、婚約、結婚

ラディアーヌ様の話はまだまだ続く。


「おにいさまに、思い切って『好きです』と言ったらどうでしょう、そうすれば、おにさまは、恥ずかしがるでしょうが、きっと受け入れてくれますよ。おにいさまは、あれだけ女性にモテて、婚約・結婚したいと思う女性はたくさんいるのに一度も女性と付き合ったことがありません。そのおにいさまが、素敵だと褒めているのですから、自信をもって進むといいと思います。明日告白してもいいくらいですね」


「明日は無理だと思います。まだ心の準備ができていませんので。それに、殿下の気持ちもわからないので……」


殿下がわたしに恋をしてくれているといいんだけど。


「おにいさまは、あなたのこと好きで、恋をし始めてます。だからこそ、あなたの方から行くべきなんです」


とラディアーヌ様は言う。


殿下がわたしに恋をし始めているとラディアーヌ様は言っていて、わたしも殿下に恋をしている。


ラディアーヌ様の言う通り、わたしからアプローチをすれば、相思相愛になれそうな気がする。


しかし……。


恥ずかしいと思う気持ちはまだまだ強くて、勇気がまず出てこない。


殿下への想いがもっと強くなっていけば、違ってくるのだろうが、その点わたしはまだまだあと思う。


そして、もし殿下がわたしに恋をしていなかったら、殿下に失礼なことをしてしまうことになる。


それで、仕事に影響が出てしまっては、殿下につらい思いをさせることになる。


わたしは殿下のお助けをする為にここにいる。


そのことを忘れてはいけないだろう。


「ラディアーヌさんの言われることはわかります。でもわたし、殿下への想いがまだまだ弱く、そこまでの勇気がありません。それに、わたしは、殿下のお役に立つことが求められています。そういうことを思ってはいけないのではないか、という気持ちもあります」


わたしがそう言うと、ラディアーヌ様は、


「フローラリンデさんのそういうところ、わたしは好きです」


と言って微笑んだ後、続ける。


「でもフローラリンデさん、もう一度伺いますけど、おにいさまに恋をしているんですよね?」


恋という言葉を聞くと、どうしても恥ずかしい気持ちになってしまう。


「先程申しました通り、好意というか、それ以上のものがあるというか……」


「まずはそこですよね。他の人にはともかく、わたしには、おにいさまに恋している、と言えるようになれば、想いも強くなってきたといえるかもしれません」


「申し訳ありません。今はまだそこまでは……」


「いや、いいんです。恥ずかしくてなかなかいえない、という気持ちも理解していますから。そして、仕事と恋愛の両立はできると思います。いや、しなければならないと思います。おにいさまの為に仕事で尽くし、恋人どうしとしても支え合う。それが発展していけば、婚約、

そして、結婚へとつながっていきます。わたしはおにいさまの妹として、それを望んでいきたいです」


「婚約、結婚……」


その言葉は、わたしにとって遠い言葉になっている。


「あなただって、それを望んでいるんでしょう?」


「望んでいないことはないんですが……。今のわたしには、あまりにも遠くにある言葉ですので」


「そんなことはないですよ。あなた以上に、おにいさまにふさわしい人はいないです」


「それは、褒めすぎでは……」


「褒めすぎなことはないです。わたしは、あなたとおにいさまが結婚すれば、二人はきっと幸せになると思っています」


とラディアーヌ様は言って微笑んだ。


「面白い」


「続きが気になる。続きを読みたい」


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