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第六十話 婚約破棄の成立 (ルアンソワサイド)

今までは、一番長くても半年程度の付き合いだったので、一年もし付き合ったとしても、一番長い付き合いになってくる。


いずれにしても、わたしはイレーレナとの生活を楽しむだけ楽しんだら。別れるつもりだ。


その後は、また別の女性を恋人にしていく。


そう思っていると、


「ルアンソワ様、どうなさったのですか? 具合が良くないのですか? せっかくあの嫌な女性と別れることができたのに」


とイレーレナが言ってくる。


少し嫌な気分になったが、


「なんでもない」


と言った。


すると、


「ルアンソワ様、わたしと婚約すると言ってくださって、とてもうれしいですわ」


と言いながら、イレーレナがわたしに抱きついてくる。


そして、


「絶対、正式な婚約をして、結婚してくださいね」


と甘えた声で言ってくる。


婚約すると言った以上、正式な婚約の式はしなければならないが……。


まあいい。


先のことなど今はどうでもいい。


今イレーレナとの生活を楽しむことができればそれでいいのだ。


わたしは、イレーレナを抱きしめた。


「好きだ。イレーレナ」


「わたしも好きです、ルアンソワ様」


そして、唇と唇を重ね合わせた。




少し嫌な気分になったことはあった。


イレーレナとの関係を今後どうするか、ということはある。


しかし、これでフローラリンデに婚約破棄することを伝えることができた。


後は父親と母親の説得をしなければならないが、権限を委譲されている以上、反対はできない。


フローラリンデに話すよりも先に言えばよかったのかもしれないが、後でも先でも、反対はできないのだからどうでもいい。


わたしは、イレーレナと唇と唇を重ね合わせた後、両親のところへ行き、了解を求めた。


二人は、反対意見を言ったが、それは想定内のこと。


「フローラリンデは、わたしの伴侶としてふさわしくないのです。だから、婚約破棄をするのです。もう、反対はしないでいただきたい!」


わたしの強い言葉に、それ以上、二人は何も言えなくなってしまった。


公爵家内部でも反対する人物はいるようだが、気にすることはない。


無視すればいいだけだ。


いちいち相手をするのは時間の無駄。


それでも反対し、わたしに直接言ってくる人物がいたら、


「お前は誰に向かってものを言っているのだ。わたしはこの公爵家のほとんどを握っている人間だ。お前に口出す権利はない! 身の程しらずめ!」


と言ってやるつもりだ。


わたしは、そういうことを言えるだけの権限をもっている。


いつでも言ってこい! 絶対に言い負かしてやる!


そう思っていた。


そして、公爵家内部の反対勢力が大きくなった場合には、武力も使おうと思っていた。


しかし、わたしの意志が固いことが伝わったのか、そういうことを言ってくる人間は結局いなかったし、勢力が大きくなることもなかった。


みなわたしに屈したのだ。


これにより、婚約破棄は成立した。


わたしは、うれしくてしょうがなかった。


子爵家に戻ったフローラリンデは、家を追放されたそうだ。


それも、財産と呼べるものは何も持たされずに。


普通だったら、同情するのかもしれない。


かわいそうだと、少しは思うのかもしれない。


しかし、もうわたしには全く関係のない話。


どうでもいいことだ。


これからしばらくはイレーレナと楽しく過ごそうと思っていた。


しかし……。


婚約破棄したことに対する影響は、わたしが思っていたよりも、はるかに大きいものがあった。


わたしが知らない間に、フローラリンデの人望が領民の間で高まっていた。


その領民たちが、婚約破棄のことを聞いて、もう一度婚約者に戻してほしいと騒ぎ出したのだ。


これは、驚くべきことだった。


「面白い」


「続きが気になる。続きを読みたい」


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