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第五十一話 周囲にほとんど敵なし (ルアンソワサイド)

わたしはルアンソワ。ボトルンド公爵家の後継ぎだ。


ボトルンド公爵家は、この王国の中でも一二を争うほどの家柄。


わたしは、幼い頃から、「周囲にほとんど敵なし」と言う状態で生きてきた。


頭もいいし、ハンサムなので、女性からモテる。


魅力いっぱいのわたしだ。


一年前に、父親から公爵家の権限のほとんどを譲られたわたしは、お金の方もほぼ自由に使えるようになった。


領地というのは、わたしの欲望を満たす為にあるのだ。


しかし、公爵領の財政状況は、決してよくはなく、赤字がここ十年程度続いていた。


土地が豊かではない為、収入がそれほど入らないのが大きな要因ということだ。


わたしはそれまで、公爵領の財政のことはあまり気にしてこなかったが、自分が財政にもたずさわるとなると状況は違ってくる。


いや、家の財政は気になるが、それ以上に、赤字が拡大していくと贅沢が制限されることの方がはるかに大きい。


せっかく権限のほとんどを握ったのだ。


贅沢をしていく為、その権限を使わせてもらう。


わたしは、公爵領の財政担当の大臣に、


「もっと増税して、収入を増やせ。そうすれば財政の赤字などすぐに改善される」


と言った。


大臣は、


「それは無理です。父公爵閣下は、領民の為を思い、この十年、税率を上げてきませんでした。税率を上げたら、領民たちはさらに貧しくなり、生きていけなくなるものも出てまいります。そうすると、結局は税収のさらなる低下につながってしまうのです。領民の為、公爵家の為、それだけは思いとどまっていただくよう、お願いします」


と言ったのだが、わたしにとっては、的外れなことを言っているとしか思えなかった。


「お前は何を言っているのだ。領民というのは、公爵家の為に存在しているものだ。領民の為に公爵家があるのではない。お前は大臣なのに、そんなこともわからないのか。全くどうしようもないやつだ。もうこれまで十年ほど赤字だったのだろう? それを改善しないと、公爵家が倒れてしまうのだろう?」


「おっしゃる通り、このままでは……」


「だったら、わたしの言う通り増税しろ!」


わたしはそう言った。


「ルアンソワ様、それでは反乱が発生する可能性があります」


「発生すれば鎮圧すればいい。それだけの力をもっているだろうが」


「せめて、父閣下と相談してくださいませ」


「わたしは父上から権限を委譲されたのだ。いちいち相談する必要はない」


「ルアンソワ様……」


家のものたちは、何かにつけて父親のことをもちだしてくる。


父親は、偉いのかもしれないが、財政の赤字は改善できなかった。


わたしはその父親を越え、父親のできなかった贅沢をしていくのだ。


大臣は、


「父閣下のご意見こそ大切です。決めるのはそれからでお願いします」


と言って、なかなかわたしに従わなかった。


しかし、


「もういい。これでもう話すことはない。税率を上げる為の作業に入れ!」


とわたしは厳しく言った。


「ルアンソワ様がそこまで申されるのであれば……」


大臣は渋々ながら従う。


これで、贅沢をする為の準備は整った。


これからは、今まで以上にわたしの好きなことができる!


そう思うと、うれしい気持ちになっていくわたしだった。


「面白い」


「続きが気になる。続きを読みたい」


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