第五十話 殿下のことがますます好きになっていく
この一週間で、対策案は形になってきたと思う。
王国の一番の悩みは、赤字財政なこと。
それを改善する為に、増税を繰り返してきたが、それが大きな原因で、王国全体の活力が低下してしまっている。
わたしは、王国内の無駄な支出を減らしていけば、充分減税は可能だと思っていた。
この一週間で、その自信はますますついていた。
ただ減税だけでは、活性化にはまだ遠いので、農業・商業の振興についても検討をした。
具体的な方策も、殿下に伝えることができた。
今日の夕方。
権限移譲式を終えて、執務室に戻ってきた殿下は、
「いよいよ明日からは、本格的な改革の始まりです。この改革を進めていけば、王国内にも活気が戻ってくるようになるでしょう。ここまで対策案をまとめることができたのは、あなたの協力あってのことです」
と言った。
「ありがとうございます。そう言っていただけると光栄です。ただ反対する方も多そうなので、それを乗り越えていかなくてはならないと思います」
「大丈夫です。あなたのことはわたしが守ります。二人の力があれば、それを乗り越えてきっと改革を成し遂げることができます」
殿下はそう言うと、
「これからもよろしくお願いします」
と言って頭を下げた。
わたしは一気に心が沸騰した。
殿下……。わたし、ますます殿下が好きになってきています。
「殿下の為に、これからも尽くしていきます」
「ありがとう。わたしもあなたの為、全力を尽くしていきます」
殿下、今こそわたしを抱きしめてください!
いや、抱きしめるだけではなくて、キスしてください!
せめて、手だけでもつなぎたいです!
わたしは心の中で強く思った。
しかし……。
殿下は動かない。
わたしと手をつなごうとする気もないようだ。
殿下はわたしのことを異性と思っていただいていないのかもしれない。
それは寂しいことだ。
異性として、恋の対象として、そういう存在になりたいんだけど……。
わたしは、この一週間でますます殿下へ心が傾いていった。
殿下のことが好き。
それは、今までのような好意の延長ではなく、恋の対象としての好き。
仕事はもちろん一生懸命していたが、殿下への想いも熱くなっていて、コントロールするのに苦労していた。
それをなんとか両立させようと努力していた。
仕事が一段落したところだと思うので、殿下に求めてほしかったのだけど、まだまだ無理なのかなあ……。
結局わたしは殿下に求められることはなく、自分の部屋に戻ってきた。
残念だけど、まだまだ先は長い。
とにかくわたしは、殿下に自分のことをもっと好きになってほしいと思う前に、殿下の為にもっと尽くさなければならない。
殿下は、あれほど一生懸命に動いていらっしゃるのだ。
わたしも、もっと殿下のお役に立っていく必要がある。
しかし、夜、こうして部屋に一人でいると、殿下が恋しくなってくる。
明日になればまた会えるのに、と思うのだけど、心のコントロールはなかなかできない。
朝も昼も夜もずっと一緒にいたい。
一瞬でも離れるのはつらくなってきている。
夜、殿下にこの部屋にきていただいて、抱きしめていただきたい。
そういう日が来るとうれしいんだけど……。
わたしはそう思うのだった。
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