第四十五話 侍女
リデーヌさんは、
「リデーヌです。これからお嬢様のお世話をさせていただきます」
とあいさつした。
特に厳しい表情はしていない。
今のわたしは貴族ではないので、冷たい態度をとるのかなあ、と思っていたが、そうでもないようだ。
とはいっても、話はしづらそうな雰囲気をもった女性だ。
わたしは殿下に、
「わたしは、世話をしていただく女性をつけていただくほどのものではないと思っていますが、よろしいのでしょうか?」
と言った。
「あなたはこれから王国にとって大事なお方になるのです。そういうお方の日常生活での負担は少しでも減らさなくてはいけません」
「いや、わたしにはもったいないと思いまして」
「そんなことはないです。今は一人ですが、その内増員したいと思っています」
子爵家でも公爵家でも侍女は一人しかついていなかった。
今の状況では、一人でももったいないと思っているのに、想像を越えてくる話だ。
「あなたのお役に立ってくれる女性だと思っています。彼女にあなたの世話をさせてください」
「殿下がそう言われるのであれば、ありがたく受け入れさせていただきたいと思います」
「ありがとうございます」
殿下はそう言うと、微笑んだ。
「部屋は、選択の余地が少なかった中で、一番よさそうところを選択したのですが、気にいるかどうかはわかりません。気に入らなかったら申し訳ありません。その時は対応させてください」
「ご配慮ありがとうございます。でもわたしには選択権はありません。住むところがあるだけありがたいと思っています」
「そう言っていただけるとありがたいです。でも合わないようだったら言ってください」
ここまで気を配ってくださる殿下。
頭が下がる。
お互いに紅茶を飲んだ後、殿下は、
「それではまた明日。今日はゆっくり休んでください」
と言った。
殿下との今日のお別れ。
「ありがとうございます。明日からまたよろしくお願いします」
わたしは頭を下げる。
殿下と別れるのは寂しい。
この二日間で、それだけわたしの心は殿下に傾いた。
心の準備は整いきってはいない。
それでも殿下に抱きしめてほしいという気持ちは強くなってくる。
殿下の方はどうなのだろうか?
残念ながら、そういう気持ちはないように思える。
多分、そこまでのわたしに対する想いはないのだろう。
それは仕方がない。
殿下からすると、出会ってからまだ二日目の女性でしかないのだ。
わたしの方もまだまだ殿下への想いは足りない。
また明日会えるし、これから毎日会うことができる。
そこで仲良くなっていければいいと思う。
わたしは殿下に見送られて、侍女のリデーヌさんと一緒に自分が住むことになる部屋に向かった。
わたしの部屋は、殿下のいる建物とは別の建物にあるが、それほどの距離は離れていない。
「ここでございます」
「案内していただいて、ありがとうございます」
リデーヌさんがドアを開け、わたしはそこに入っていく。
部屋は、わたしが思っていたよりも大きい。
ベッドは二人が寝られるだけの大きさがある。
今は夜だが、窓が庭に向いているので、眺めもよさそうだ。
そうじがされていて清潔。
こういういい部屋に住むことができる。ありがたいことだ。
わたしは、改めて殿下の為に尽くしていこうと思った。
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