第四十一話 相思相愛になれるといいんだけど……
婚約してからは、豪華な服を着たこともあった。
しかし、その時も心の傷がうずいたのと、周囲の嫌味な声が聞こえてきたこともあって、なるべく質素な服を着るように心がけた。
それが、公爵家夫人としてふさわしいことでもあると思っていた。
質素であることは美徳であると思っていた。
しかし、それは婚約を破棄される理由の一つになってしまった。
それは悲しかった。
もう着ることはないと思っていたドレス。
豪華ではないというが、わたしにとっては豪華な服だ。
こういう服を着ると、どうしても心の傷がうずいてしまうが、これから謁見に行かなくてはいけない。
名誉なことなのだから、失礼があってならない。
「素敵なお嬢様誕生というところですね。今までもきれいだと思いましたが、その魅力はますますアップしています。これなら、おにいさまもフローラリンデさんにますます夢中になりますよ」
ラディアーヌ様はそう言って微笑む。
「そんな、ラディアーヌ様はお上手なんですから……」
「そんなことはありませんよ。自分の姿を御覧ください」
鏡で自分の姿を眺める。
自分で言うのもなんだが、今までよりもきれいになっている気がする。
いや、それはわたしのおごりなのかもしれない。
これはドレスの力が大きいのだ。
「ありがとうございます」
「これで自信がつきました?」
「ドレスのおかげだと思います。ありがとうございます」
「いや、ドレスはフローラリンデさんの魅力をアップするものであって、ドレスだけでは成り立ちません。フローラリンデさんの魅力あってこそなんです。相乗効果で、ますますきれいになっているのです」
「そう言っていただけるとうれしいです」
「おにいさまもきっとその魅力に夢中になりますよ」
ラディアーヌ様はそう言って微笑む。
言ってくれるのはありがたいんだけど……。
まだまだ自分に自信はない。
「ではおにいさまを呼んできます」
そう言うと、ラディアーヌ様は部屋の外に出た。
そして、殿下と一緒に戻ってくる。
「きれいだ……」
殿下は部屋に入ってくるとそう言った。
「おにいさま、フローラリンデさんにうっとりしていますね」
ラディアーヌ様は、いたずらっぽく笑う。
「今までももちろん美しい女性だと思っていました。でもドレスを着て、より一層美しくなっています……」
「フローラリンデさんのこと、ますます好きになりましたよね。恋し始めました?」
恋……。
殿下は何というのだろうか。
恋をし始めていると言っていただけるとうれしい。
胸がだんだん熱くなってくる。
「そうですね、って、いや、そうじゃないです。フローラリンデさんは、仕事を一緒にしていくお方これから一緒にこの王国を豊かにしていこうとするお方。もちろん好意はもっていますけど……」
恥ずかしそうに言う殿下。
「それでしたら、もういっそのこと、フローラリンデさんを恋人にすべきだと思います。そうすればより一層政務に集中できると思います。フローラリンデさんの方も、おにいさまを意識していると思いますので、二人は相思相愛だと思います。恋人どうしになったら、わたしもうれしいです」
相思相愛。
素敵な言葉。
ただわたしは、殿下に恋をし始めた段階。
恋人としてやっていけるかどうか、心配な面も大きい。
なんといっても、殿下とつり合いが取れていない気がしている。
こういうわたしがもし恋人になったとしても、すぐに嫌われて捨てられてしまうのではないか、と思ってしまう。
いや、殿下はそういう方ではないと思う。
もし嫌ったとしても、辛抱強くして、改善されるのを待つタイプだと思いたい。
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