第三十二話 殿下への助言
「以上がわたしの提案になります」
わたしは、王国の活性化についての話をした。
主な内容は、減税と無駄な費用の低減、農業・商業の振興、そして困っている人々への援助。
この王国は、様々な名目で税を集めていて、しかもその税率は高い。
ただ、それで王室が贅沢をしているのかというと、そうでもない。
王国の赤字は、毎年どんどん積み上がっている。
もともと土壌がそれほど豊かではなく、あまり農業が盛んではないのと、商業もそれほど盛んではない為、経済全体が弱い。
国民全体の所得が低い為、低い税率だと王国の収入が少なくなる。
その為、税率が高くなっているのだが、歳出の分を補うことはできず赤字のままの状態。
税率を高くしたままでは、いつまで経っても問題の解決にはならない。
まず税率を下げ、国民の負担を減らす。
税率が減ると、王国の収入は減ってしまうが、それは無駄な経費を減らすことによって対応する。
それは充分可能だと思う。
そして、税率が低くなれば、国民もやる気が出てくる。
それだけでなく、土壌の改良、自然と共存しながらの新しい耕作地の開発、品種の改良を進めていく。
そして、農作業の改善を進めていくとも大切だ。
それにより、農民の全体的な待遇改善を進め。農業の振興をしていく。
また、商業についても、流通システムそのものがまだまだ整っていないので、そこから着手し、そして様々な振興策を行っていく。
わたしは、十二歳の頃から、お父様に領内の経営について助言をしてきた。
こういうことができたのも、幼い頃からお父様の方針で領内経営についての教育を受けてきたからだと思う。
もちろん王国と子爵領では、領域に大きな違いがあるし、問題点もその対策内容も違う点はあるが、
その経験を生かすことはできる。
わたしは、その経験も交えて、なるべく具体的に話をするように心がけた。
わたしは王国の中の人間ではないので、情報が足りないところがあり、言っていることの全部が妥当かどうかはわからなかったが、方向性はこれでいいと思っていて、殿下のお役に立てると思っていた。
殿下はわたしの話が終わると、
「ありがとう。ここまでいろいろ話をしていただけるとは」
と言って喜んでくれた。
「お役に立つことができればうれしいです」
「恥ずかしながら、今の王国には、ここまで言える人物がいないのです。赤字を改善する為の方策と言えば、『もっと税を重くすべきです』という声ばかりです。無駄な経費を減らす方策どころか、それを言い出す人物さえもいません。税を重くすれば、ますます国民の力がなくなっていき、王国の力は衰えていくというのに……。あなたの言う通り、この王国には無駄な支出が多いと思われますので、それは減らせると思っています。また、農業や商業の振興については、発言する人はいるのですが、具体的な方策となるとなかなか難しいものがありまして……」
「そうだったですか……」
「この王国は決して豊かではありません。そこで、わたしはこの旅の第二の目的として、有能な人材を集めたいと思っていました。その人材に、わたしへの協力をお願いしようと思っていたのです。ただ、それは難しいものでして、結局そういう人物には出会えないまま、今日を迎えていたのでした。それで、もうこれは無理だと思い、王宮に戻ろうとしていたのです。そうした時にあなたと出会いました」
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