第二十二話 絶体絶命のわたし
賊のリーダーは、わたしに向かって剣を構える。
他の四人も、わたしに向かって剣を構えた。
五人とも、先程まではわたしに剣を突きつけていたが、まだわたしを斬る気はなかったようだ。
しかし、剣を構えたとなると、本気で斬る気になったと思って間違いはない。
「みなのもの、この女はお金を我々に差し出さない。こちらが譲歩して土下座すれば許してやると言っても従わない。我々に対する礼儀もわきまえない失礼なやつだ。我々にもプライドがある。こいつはここで斬っていく!」
歓声をあげる他の四人。
いよいよ斬られる時がきた、
絶体絶命。
体の疲れが、気力で支え切れなくなり、体が動かなくなっていく。
斬られる以前に、ここで倒れてしまいそうだ。
「まだ惜しいという気持ちはある。全く、人の好意を無駄にしやがって!」
わたしは言い返したかったが、疲れで言葉にならない。
「いよいよお前はあの世に行きくことになる」
リーダーは、剣をわたしに振り下ろす為、構い直した。
お金を差し出さなかったばかりに、ここで生命が終わろうとしている。
お父様、お母様、申し訳ありません。
せっかくこれから一生懸命生きていくと約束しましたのに……。
でも賊には屈しませんでした。
その点は褒めてもらえると思います。
わたしはあの世にいる両親に話しかけた。
それにしても、つらく苦しいことが多い人生だったと思う。
継母や異母姉にはイジメられ、異母妹とは仲が悪かった。
わたしの方は一生懸命仲良くしようと努力してきたのに、その思いは全くと言っていいほど通じなかった。
お母様は、わたしが幼い頃、あの世に行ってしまった。
お父様も、わたしが婚約した後、あの世に行ってしまった。
わたしを愛してくださった両親は、もうこの世にはいない。
ルアンソワ様と婚約をして喜んでいたのもつかの間。
新しい恋人に婚約者の座を奪われ、婚約を破棄された。
そして、子爵家からの追放。
心機一転、新天地である王都を目指していたら、賊に襲われてしまう。
そして、生命の最大の危機……。
わたしは幼い頃から幸せな結婚にあこがれてきた。
いつの日か、わたしと前世もしくはあの世で約束をした人が迎えにきてくれるものと信じていた。
婚約自体は、ボトルンド公爵家とリランテーヌ子爵家で決めたもの。
しかし、ルアンソワ様と婚約するということは、ルアンソワ様が約束した人だからなのだろうと思っていた。
思っていたのだけど……。
結局ルアンソワ様は、約束をした人ではなかった。
婚約破棄されたということは、そういう面でも心の打撃も大きい。
約束した人とは会えず、ここで生命を失わなければならない。
生命を失うこと自体は、もう覚悟はしている。
ただ約束していた人と会えないのは残念でしょうがない。
そして、この世でわたしと出会い、結婚する約束をしていた人の方も、わたしと会えなくなる。
それはとてもつらいことに違いない。
わたしは、せめてその人がどういう人かを知ることができれば、と思った。
でもそれはもうかなわない。
わたしは、その人に詫びることしかできない。
「これでお前はあの世行きだ!」
リーダーがわたしに剣を振り下ろそうとした時……。
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