第二十話 来襲する賊
わたしは歩いていた。
下り坂なので、今度はひざが痛くなってくる。足も痛いし、ひざも痛いとなると歩くのはきつい。
それでも気力でなんとか歩き続ける。
なんとか夜になるまでに村にたどり着かないと、賊に襲われる可能性が強くなる。急がないといけない。
とはいっても、急ぎ過ぎて倒れてしまっては意味がない。
休みながら歩いていると、ようやくまた馬車二台分と人一人分が通れるところまでやってきた。
主人からの情報だと、これで宿屋のある村まで、あと四分の一ほどの距離。
わたしはホッとする。
しかし、もう夕方になってきていた。
昼頃はこの道を通っていた馬車は、通らなくなっていたし、歩いている人もいない。
夕方ここを通るということは、山越えをするにしても、村に入るとしても夜になってしまうので、安全の為避けているのだろう。
周囲には誰もいない。
急がなければ、村に入るのは、夜も更けてからになってしまう。
それは避けたい。
とはいえ、もう疲労はピークを迎えていた。
後四分の一程の距離とはいえ、歩き続けることはできるのだろうか。
途中で倒れてしまう気もする。
しかし、それでもわたしは歩かなければならない。
わたしは、少し休むと、また歩き出そうとした。
すると、
「お嬢さん、一人でどこへ行こうとしているのかな」
と言う声が聞こえる。
声のした方向に向くと、屈強な体をした五人の男がいた。
わたしの進路をふさごうとしている。
賊だ!
わたしはそう思った。
「これからふもとの村まで行くつもりですが」
とにかく冷静に対応しようと思った。
「ほう、ふもとの村にね」
五人の中のリーダーと思われる男がわたしに言う。
「申し訳ありませんが、通してくれませんでしょうか?」
「通してほしいんだ。どうしょうかな」
リーダーと思われる男は、無気味に笑う。
これが何かを要求してくる表情だ。
「ただで通すわけにはいかないな。少しお金を払ってもらわないと」
「なぜあなたにお金を払わなければならないのでしょうか?」
「我々はこの山中を支配するものだ。だから、ここを通るものたちからは、お金をとる権利がある」
「ここは、王国の直轄地で、あなたたちの領地ではないのですけど」
冷静に話そうとしていたのだが、少しずつ心が沸き立ってくる。
「俺達の領地といったら領地なんだ! 全く王国のやつらめ! 俺達がこの辺一帯を支配しようとしていたら攻めてきやがったんだ。おかげで大打撃を受けてしまった。ようやく態勢を立て直し始めて、また商人たちを襲おうとしたら、どいつもこいつもしっかり武装していやがった。以前の戦力だったら、それでも多少の被害で屈服することはできただろうが。今は屈服させようと思ったら、こちらにも大きな被害が出てしまう。全く、悔しくてしょうがない」
商人たちを襲っていたのだから、討伐はされて当然のことだと思う。
しかし、彼等は、討伐した方を憎んでいる。
逆恨みをしているとしか思えない。
「今日は、それで襲うのを見送っていたのだが、そこへやってきたのがお前ってわけよ。俺たちは腹が立っているんだ。今日これで何も収入がなかったら、俺たちのプライドにかかわる。今まではお金持ちしか狙っていなかったが、もうそうは言っていられないんだ!」
どうやら主人が言っていた方針の転換が行われてしまったようだ。
そして、わたしがその犠牲者の第一号になりそうな情勢。
「さあ、お金を出せ。出せば許してやる。出さなければ、こうだ」
リーダーと思われる男は、剣を抜くと、わたしに突きつける。
「俺だってむやみやたらに危害は加えたくない。お金をだすだけでいいんだ!」
他の四人もわたしを囲み、剣を抜き出してわたしに突きつけた。
わたしはなんとか冷静に対応しようと思っていた。
そして、なんとかこの場を脱出したいと思っていた。
しかし、わたしの生命は、終わりに近づこうとしている……。
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