第十五話 異母弟のやさしさ
しかし、異母姉は、今では継母と一緒になってわたしを攻撃する。
異母姉にとってわたしは、この侯爵家の実権を握ろうとする時、じゃまになるライバルの一人でしかないのだろう。
わたしを追放し、ゆくゆくは継母や異母妹もこの家から追放する。
これが異母姉の思っていることだろう。
「わたしも、お母様の決定を支持します。こんなどうしょうもない姉なんて、今すぐにでも追放されてほしかったですけど、しょうがないですよね」
この異母妹、母親以上に言うことが厳しい。
わたしの方は、幼い頃から彼女をかわいがっていたつもりだったのに、その気持ちは通じなかった。
いや、思春期になるまでは、わたしにもなついてくれたような気がしていたのだけど……。
わたしの思い過ごしだったのかもしれない。
いずれにしても、ここにいる異母妹は、その母親以上にわたしに対して冷たい。
「当主もわたしに対して異議はないですよね」
厳しい調子で言う継母。
彼女は、異母妹に対しては甘い母親だが、異母弟については、将来この侯爵家を背負って立つということで、ずっと厳しい態度を取り続けている。
母親のいうことには全部従わざるをえない状態だ。
しかし、その為、心が萎縮されてきているように思う。
異母弟は、もともとは、心やさしくて思いやりもある子だ。
それを生かすことができれば、名君になる素質はあると思うのだけど。
このままでは、その内、心が病んでしまう可能性もありそうな気がする。
かわいそうな気持ちになってくる。
しばらくの間、異母弟は黙っていたが、
「わ、わたしは、姉上がかわいそうな気がします」
と小さい声で言った。
わたしは少し救われた気持ちになった。
しかし……。
「何がかわいそうなものですか!」
継母は大きな声で怒った。
「姉上は長年この家にいました」
異母弟は継母に怒られたのにも関わらず続ける。
「それがどうしたというのです」
「長年この家にいたにも関わらず。追放されてしまうのです。かわいそうだと思って何がいけないのでしょう」
「この子は婚約破棄されるという、当家にとって、とても名誉を傷つけることをしたのです。かわいそうだとなぜ思うのです」
そう言う継母に異母姉は、
「お継母様」
と呼びかける。
「何?」
「異母弟、いや、閣下はそれだけ慈愛に満ちたお方なのです。そのことを褒めてあげた方がよろしいのではないかと思いますが?」
気持ち悪いくらい柔らかい声で言う異母姉。
異母姉は昔から異母弟にだけは甘い。
ただそれも、純粋にかわいいというだけではなく、将来自分が後見役になった時のことを思って対応しているようだ。
「それもそうね」
継母はそう言った後、
「あなたのやさしさは理解した。それはいいと思っている。だけど、それとこれとは話は別だわ」
と異母弟に言った。
「かわいそうというのはいいとして、わたしの決定したことに反対はしないわよね?」
柔らかく言おうとはしているようだが、結局は自分の決めたことを押し付けようとしている。
異母弟は、少しの時間黙っていた。これは彼なりの抵抗なのだろう。
しかし、
「お母様の言う通りに従います」
と結局は言わざるをえなかった。
仕方のないことだと思う。継母に反対することはできない。
でも異母弟は、可能な限り継母に抵抗してくれた。
それだけでもうれしい気持ちになる。
「面白い」
「続きが気になる。続きを読みたい」
と思っていただきましたら、
下にあります☆☆☆☆☆から、作品への応援をお願いいたします。
面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、正直に思っていただいた気持ちで、もちろん大丈夫です。
ブックマークもいただけるとうれしいです。
よろしくお願いいたします。




