第十二話 継母の怒り
「そんなことを言って……。ただわたしのことが嫌なだけでしょう?」
「わたしはあなたのことを思って言っているのよ」
「そんなわけないでしょう」
それを聞いて継母は、
「帰りなさい!」
と言って怒りを爆発させる。
「嫌です! わたしはこの家にいます! わたしはこの家の長女なんです。この家は、お継母様だけのものではありません!」
異母姉も譲らない。
しばらくの間、怒りと怒りがぶつかりあう。
継母の方は、異母姉を今すぐにでもこの家から追い出したくてたまらないようだ。
後見役になって実権を握ったとは言っても、異母姉にも一定の発言権はある。
このまま家にいられたのでは、うるさい存在で全権を握れなくなってしまう。
誰かと婚約して家を出て行ってもらうのが一番いいと思っているようだが、それがなかなかうまくいかない。
その為、母親の実家に帰ってほしい、ということを最近しきりに言うようになった。
それも今日だけではなく、毎日のように言っていた。
しかし、異母姉はずっと断り続けている。
無理矢理帰すことは、家と家との力がほぼ同じくらいなのでできない。
この点、継母としては憤懣やる方ないようだ。
異母姉の方も、今までさんざん継母の嫌味な言葉と冷たい態度に耐えてきた。
それが継母への怒りにつながっている。
さっきも言っていたが、意地でもこの家を継母の思い通りにはさせたくないのだろう。
絶対に譲るつもりはない。
しかし……。
「今日はあなたのことが主題ではありません。ですから、これくらいにしておきます。今日は、これ以降、あなたのことは話さないようにします」
と継母は言うと、
「お継母さんがそう言うならここまでにしておきましょう。言いたいことは数え切れないほどありますけど」
と異母姉も言った。
最後の言葉に対して言い返すかと思ったが、継母は言い返さなかった。
どうやら一時休戦になったようだ。
「それじゃ、今回の婚約破棄について、改めて話をすることにしましょう」
「お継母様、それでは話を始めてください」
二人の怒りが、先程よりも強くなってわたしの方に向き始めていた。
「今回の婚約破棄は、いずれにしてもこの侯爵家に対して大きなダメ-ジを与えている。それはあなたも理解しているでしょう? あなたはどう責任を取るつもりなの?」
継母は、厳しい表情でわたしに向かってくる。
「責任と言われましても、困ります。破棄に至ったもともとの原因は、ルアンソワ様の浮気にあるのですから」
「まだそういうことを言っている!」
「あなたもお継母様と同じくらい性格が悪いわね。婚約破棄されたのをルアンソワ様のせいにするなんて」
何を言っているのだろう。
わたしは異母姉みたいに、わがままをいうことはなかったし、人のことを思いやろうといつも努力しているのに……。
「では婚約破棄の責任は、自分にはないと思っているということね?」
継母が先程より少し柔らかい声で言ってくる。
どうしたのだろう?
わたし寄りの意見に変化をし始めたということだろうか?
いつもの調子であれば、それはなさそうだけど。
いずれにしても、婚約破棄の原因はルアンソワ様の浮気にある。
「そう思っています」
「全くないと思っているの?」
異母姉も先程よりは柔らかめな言い方だ。
「面白い」
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