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第二十四話 追跡

 

 「実はこういうわけで……行方不明の商人を探してるんだ」


 「あぁ、そいつなら見たよ。確かにアイゼン平原の方に歩いてったね」


 

 漁師エリスから、件の商人についての情報を得た。

 しかしアイゼン平原に向かったのは三日前。半日でこことは別の仲介市場へと向かい、一泊して戻ってくるにしても三日は長い。道中で何かあったのかもしれない。


「どうするシェリス。勝負の期限は日没だから……それまでには見つけないと」


「そう……ですね。エリスさん、他に何か気づいた事とかありませんか?」


 私はエリスさんへと、商人の様子などを伺う。

 普段サボりがちの商人が、半日かけて到達する仲介市場まで商品を調達する理由。

 私はそれが気になっていた。漁師とは言え万能では無い。毎回毎回いい魚介類を採ってくるとは限らない。いい商品が並ばない事など、今回に限った話ではない筈だ。


 でもその商人はわざわざ仕入れに走った。その理由が分からない。


「うーん……まあ、いつも通りだと思ったけどなぁ。直接話したわけじゃないから何とも言えないけど」


「……もしかして例の話と関係あるのかな……」


 その時、ロランが何やら気になるワードを。

 なんだ、例の話って。


「ロラン、例の話というのは……?」


「あぁ、知らない? 王都の四大貴族の一つ……っていうかザリア様なんだけど、近々結婚するらしいのよ。んで、その相手っていうのがアルベインって家の娘さんでね。アルベイン家は王都を拠点にする貴族だけど、ローレンスにもそれなりに影響力持ってるから……商人達はここぞと盛り上げて儲け話に繋げようとしてるんだ」


 思わず私は背筋が震えてしまう。

 アルベイン家がローレンスに影響力を持っている?

 いや、それを言うならザリアの……ベディヴィア家の方が影響力は大きい筈だ。なにせローレンスの騎士隊を指揮しているのだから。


「ロラン……アルベイン家は……そこまでローレンスに影響力を持っているのですか?」


「そりゃそうだよ。アルベイン家が主に扱ってる鉱石は値上がりする一方なんだ。三大商家も無視できないし、その辺の商人だってアルベイン家の傘下を狙ってる人も多いと思うよ」


 確かに……アンキルエイトの値上がりは知っていたが……そこまでだったとは。

 私はまだ世間知らずの箱入り娘だったという事だろうか。


「それで……件の商人もアルベイン家の傘下を狙っている……という事ですか?」


「そこまでじゃないと思うけど……四大貴族とアルベイン家の婚約だからね。それなりに貢献すれば名前を覚えてもらえるじゃない。商人にとってそれは大きいよ」


 つまり件の商人はここぞとばかりに野心を燃やしたと……。

 確かに筋は通っているだろうか。

 

「そうなると、やはり三日も戻ってこないのは腑に落ちませんね。彼がすべきことは、一刻も早くベディヴィア家やアルベイン家に自分を売り込む事です。結婚式がいつかは……知りませんが、その時までに参列者として並んでも不自然では無い立場にならなくては」


「それって……結構難しくない? 参列者になるって……」


「そんな事ありませんよ。アルベイン家の娘は所詮……箱入りのお嬢様です。商人なら、そんな世間知らずな娘一人言い包めなくてどうしますか」


「結構ボロクソ言うね……もしかしてシェリス、知り合いだったり……」


「そんな事より……彼が戻ってこない理由はもう一つしか思い浮かびません。何らかのトラブルに巻き込まれたとしか……」


 もう進むしかない。

 アイゼン平原へ赴き、彼を見つけて連れ戻す。

 




 ※





 時は金なり……と誰かが言っていたのを思い出した。

 今まさにそんな状況だ。日没までに彼を連れ戻さなくては。


 私とロランは馬を走らせ、アイゼン平原へと入った。

 王都近辺の平原よりも遥かに広い。というか木々が見当たらないし、見る限り地平線が広がっている。


「ロラン、仲介市場の方角はこっちで合ってますか?」


「あぁ、うん、たぶん……」


「たぶん?」


「俺もそんなに行った事ないんだよ。前に行ったときは馬車の中で寝てたし……」


 まあいい、ひたすら西に向かえば途中で商人なり村人なりと会うだろう。

 

「そういえばロラン……シーラ様は本当に貴方に惚れているようでしたね。というか気づいてますか? エリスさんも結構好意的だと思いましたけど」


「いや、シーラはともかく……エリスも? 彼女は俺みたいな男に恋なんてしないよ。もっと逞しい海の男の方が……」


 それは激しく同感だ。海の男の方が、ロランなんかより余程頼りになりそうだ。

 しかしロランは王都直属の騎士だった経緯がある。


「ロラン、貴方はもっと自分を見直した方がいいかもしれませんよ。ザリア様に認められるほどなんですから、もっと自信を持ってもいいと思いますけど」


「そりゃ、認められたのはうれしいけど……やっぱり俺には騎士なんて向いてないよ。魔人と戦うなんて俺には……」


 何故そこまで自信が無いのか。

 確かにロランは頼りなさそうに見えるが、あのザリアが認めた男だ。

 もしかして、何か他に理由があるのかもしれない。


「まあ、とりあえず今は例の商人を探す事に専念しましょう。急ぎますよ」


 私は速度を上げ、アイゼン平原を駆け抜ける。

 何らかのトラブルに巻き込まれたであろう、商人を探しに。




 ※




 アイゼン平原には、遊牧民が開いた村がいくつかある。

 その一つへと私とロランは立ち寄り、例の商人の情報を聞き出そうとしていた。


「すみません、三日程前に、ここに商人が立ち寄ったと思うのですが……マリスフォルスとの仲介市場に向かった商人です」


「んー? 商人なんて結構来るけど……どの人?」


 やっぱり何かしらの特徴でも知らないと探すのは困難か。

 私もロランもその商人の顔さえしらない。いざ出会ったとしても……


「あぁ、そういえば今にも死にそうな顔してる商人は居たなぁ。話しかけても何も答えないから、村の人たち怒ってたよ。この村では人と交わす言葉は宝としてるからね」


「死にそうな顔をした……商人?」


 ロランと顔を見合わせながら、小さく頷く。

 もしかしたらその人かもしれない。


「その人、どこに行ったか分かりますか?」


「さあ。でもマリスフォルスの仲介市場には向かわなかったようだよ。ここから北の方に行ったって誰かが言ってたから」


「北?」


 アイゼン平原から北……それはグランドレアに到達するための街道に当たる経路だ。

 

「ロラン、ちょっと……」


 私は話を聞いた商人にお礼をいいつつ、その場を離れロランと人気のない場所へ。


「ロラン、どう思いますか? もし本当にグランドレアに向かったのなら……」


「あぁ、逃げたんだろうね。動機は分からないけども」


「そうですね。その日の仕入れが出来なくても、確かに痛手ですが逃げるほどではないはずですし、ましてやあの店主はそれを責め立てるような人にも見えませんでしたし」


「ぁ、そういえば……ここから北には教会があったよね。聖女の育成をしてるような所……」


「そうなのですか?」


「うん。そこにも行ってみよう。何か分かるかもしれない」


 私とロランは再び馬にまたがり、教会へと向かう。

 

 聖女の育成を行っているという小さな教会へと。





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