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集う役者たち

 撮影期間もある程度経過していたため、スタッフ含め見知った顔ばかりです。今夜前乗り出来た演者は仕事の都合上数名のみでした。


 この夕食会は二人いる監督の一人でありながら自ら演者も務める伊達 賢治(ダテ ケンジ)さんが用意してくださったものです。


挿絵(By みてみん)


 周りに飲食店もない場所でしたから気を遣ってくださったのと、ご本人がお酒を常に持ち歩くほどお好きでして。明るい飲みの場、所謂飲みニケーションがお好きなのもあったかなと思います。

 それに気さくでユーモアのある伊達監督は、共演者にもスタッフにも好かれていて。なのでみんなも夕食会をとても楽しんでいました。


 もう一人の監督、野田 栄一郎(ノダ エイイチロウ)さんはその様子を楽しげに見ていました。


挿絵(By みてみん)


 皆様もよくご存知かと思いますが、俳優としても大ベテランでとても頼りになる方です。


 伊達監督とはこの作品で初めてご一緒させていただきますが、野田監督とは何度か共演させていただいています。

 何かあっても、例えばどこにでもお酒を持っていく伊達監督が羽目をはずしすぎてしまっても、野田監督がいれば大丈夫だろうという安心感がありました。

 

「おはようございまーす! すごいねえ、あの二人また飲んでる」

「しぃちゃん!」


挿絵(By みてみん)


 挨拶をしながら女優の蒼月(アオツキ) しずくがやってきました。彼女とはプライベートでも交流があり仲良くしています。しっかり者のしぃちゃんがいることで、私は安心して過ごせるのです。

 繊細さと大胆さのバランスが絶妙で、演者として、そして同じ女性としてとても尊敬しています。


 互いに、しぃちゃん、万桜、と呼び合い、今回同じ作品に出られるということでとても楽しみにしていました。

 

 しぃちゃんの示す先では、伊達監督がいつも持ち歩いてるウイスキーを煽り、さらにもう一人、可憐な美少女が次から次へとお酒の入った缶を空にしていきます。


 和食屋やよいの一人娘、琉美(ルミ)を演じる宇良霧 時世(ウラキリ トキヨ)ちゃんです。


挿絵(By みてみん)


 アイドルとして活動していた経歴を持つ、最近話題の女優さんです。

 アイドル活動中に突然声が出なくなってしまったのですが、天性のミステリアスな魅力に加え、過激なアクションもこなす運動神経の良さを生かして今は女優として注目されています。


 彼女もまたお酒に強く、伊達監督と二人でよく撮影後に呑み会を開いていました。これだけ吞んでいるお二人ですが、酔ったところは誰も見たことがないそうです。

 

 この六人が、その日前乗りした出演者です。

 お酒にやたらと強いお二人以外は完全に素面の状態でした。もちろん伊達監督と時世ちゃんもいつも通りで、とても酔っているようには見えません。スタッフの方々も静かに食事をとる人、演者の世話を焼く人、様々でしたが何もわからなくなる程呑んでいそうな人はいなかったと記憶しています。

 

 ですから今となってはおかしなことなのですが、宴会も終盤に近付いたころ誰かが言い出したのです。

「廃病院に行ってみないか」と。

 そうです。明日の撮影現場であり、道中で見かけ、悪夢に登場した、あの廃病院です。


 後になって何人かに聞いてみたのですが、“誰が言い出したことなのか分からない”と全員が言うのです。私にも分かりません。ですが、誰かが提案した──ということだけは確かなのです。何故だかそういった話になってしまったのです。


 この時一番乗り気に見えたのは伊達監督でした。「行きたい奴はついてこい」と楽し気に外へ出かける準備を始めたのです。私達も行こう行こうと席を立ちました。

 そんな中、野田監督が眉間に皺を寄せ手を振っています。


 「こんな時間に行くのか?」


 今考えてみると至極まっとうな疑問、と言いますか、他にそう言う人が出なかったのが不思議な程です。


 外はすっかり暗くなっていて、普通なら撮影日以外に連れだって現場に行くなんてことはあり得ません。万が一近隣住民や管理者の方のご迷惑となってしまった場合、撮影が危ぶまれるからです。


 「おい、伊達くん。酔ってるのか? 第一、施設の管理者には許可取ってるのか?」


 野田監督は怪訝な顔をしています。


 「ああ、いつでも入って良いと言われてるんだ。このくらいの酒で酔うわけがないのは、野田さんが一番よくわかってるでしょ」

 「……そうか。なら良いが。俺は念のため残る。誰から連絡があるか分からないしな」


 前乗りしていない出演者や、施設の関係者から連絡があった時のことを考慮しての発言でしょう。


 「よーし。じゃあ野田さんからもOK出たので、行きたい人は表に集合してくださーい! 十分後出発なー」


 普段ではあり得ない状況だったのですが、私はとても高揚していました。そこに行くととても良い気分になれそう、行かなくてはならない、そんな気がしていたのです。


「しぃちゃんも行くよね?」

「え、行くの? 信じられない、どうしたの?」


 私が、当然行くでしょ? と言わんばかりに問いかけると、温厚なしぃちゃんにしては珍しく険しい表情を浮かべていました。


「今何時か分かってる? 二十ニ時。明日撮影だよ? おかしいって、変だと思わないの?」

「しぃちゃんも行ったほうが良いよ! 楽しいよ!」

「万桜……本当にどうしたの? お酒飲んだ?」


 彼女が怖い顔をしている意味がこの時は理解出来ず、一緒に行ったほうが良いのに──そう思うばかりでした。

 やめようと言う彼女を振り切り、ホテルの表に行こうとした時です。

出演俳優:伊達賢治さん

    :野田栄一郎さん

◇劇団になろうフェス主催のいでっち51号様からお借りいたしました!

出演俳優:蒼月しずくさん

◇劇団になろうフェス参加者の高山由宇様からお借りいたしました!

出演俳優:宇良霧時世さん

◇劇団になろうフェス参加者の浦切三語様からお借りいたしました!


皆様ありがとうございます!

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