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賢者様、貴方をパーティーから追放させてください!  作者: 鳥路
第1章:水上貿易都市「ウェクリア」/勇者と賢者の始まり

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3:ミリア・ウェルド

「お腰の剣は先代勇者ソナタも使用していたアヴァンス!」

「え、ええ…そうよ」

「じゃあ貴方が勇者様なのね!」

「その通り。私が今代勇者のアリア・イレイス。神の信託を受け、勇者の任をうけ…」

「きゃー!本当に勇者様!私とあまり年齢は変わらないみたいですね!こんな可憐な少女だとは!」

「あ、ありがとう…」


私の両手を自分の両手で包み込み、嬉しそうにはしゃぐミリアに振り回されつつ、心の中で彼女と巡り会えたことにガッツポーズをしておく。


改めて彼女のことを振り返っておこう

「ミリア・ウェルド」

この水上貿易都市にある教会に務める修道女だ

勇者パーティーに加わった際は、僧侶として同行してくれる。

元々アリア…というよりは、伝説の勇者の物語が大好きのようで、自ら勇者パーティー入りを志願した…と、設定に書かれてあった。


加入時からどうもノワの事を敵視していた様子。

物語ミリアは、アリアと組んで率先してノワをいびっていた存在だ。

そんなことをするように見えないのは…気のせいではないはずだ。

何か、そうさせるきっかけがあったのだろうか…。


「ところで、貴方は?」

「あ、申し遅れました!私、ミリア・ウェルドと申します!この教会で修道女をしています!好きなものは「伝説の勇者様」で、嫌いなものは魔法の訓練です!」


彼女の特筆すべき点は「勇者が大好き」な部分だろう。

寝る前に必ず先代勇者ソナタが歩んだ旅路を記録した勇者伝説の絵本を読むのが趣味らしい。


彼女にとって、ソナタは憧れみたいな存在なのだろう。

勇者の言うことは絶対という少しどころか、かなり盲目的なところが心配になるところもある。

だからこそ、物語アリアの行動に何も疑問は抱かないし、咎めることもなかった。

勇者が言うことは絶対。勇者がすることは絶対。

その理念が今も一緒であるのなら…彼女もまたノワの追放に一役買ってくれるだろう。


それに、彼女の加入は今後の為に必要だ。

私一人だけでは、ノワを追放するのに押しが足りない。

そんな中、彼女がいてくれたらどんなに心強いか!


「…魔法の訓練が嫌いだぁ?魔物が襲いかかってきたらどうするんだよ。生き残れないぞ」

「こんな平和な時代に魔法なんて使わなくても生きていられますもの。それに、私自身苦手なのよ。攻撃魔法。私が得意なのは回復と支援で…」

「その体たらくじゃ、両方私以下のような気がするけどね」

「…なにこいつ。なんでこんな失礼なのが勇者様の側にいるのかしら」


しかし、彼女がそれを邪魔してくる。

自分の追放だけじゃなく、他のメンバーのパーティー入りまで拒絶しているノワ。

早速行動に出るのはわかっている話だ。


高圧的なノワの態度に、ミリアが訝しんだところに割って入り、二人で話を進めていく。

まずはノワを蚊帳の外に出さなければ。

話が進まないというか、彼女の勧誘すらできやしない。


「ミリア。貴方は攻撃魔法以外なら使えるのかしら?」

「ええ。回復魔法に限れば都市一番の使い手です!勇者様、どうですか?今なら私、お買い得ですよ!」

「よし、か」

「ステイ、アリア」


買うわ、と言う前にノワから口を塞がれる。

息がしにくいので、必死に暴れて彼女の拘束から身をよじって必死に抜け出しておく。


「ぷぺっ!何するのよ!」

「…このやけに距離が近い女をパーティーに入れるの?」

「入れるわよ」

「攻撃魔法が使えない人間を?」

「ええ」

「回復魔法しか使えない人間を?」

「ええ。もちろんよ。彼女も了承してくれているし」


「私、両方できるよ?絶対力量も上」

「知っているわよ。知っていてやっているんだから!」

「ならもうちょっとパーティーメンバーの編成ぐらい考えて?現在進行形で偏りすぎだよ?前衛探そ?」

「貴方がいなくなっても大丈夫なよう、編成ぐらいちゃんと考えているわよ?」

「ちゃんと考えていたら、私以外いらない結論にたどり着くと思うんだけどな?」


笑顔で述べる彼女の姿勢は変わらないまま。

やはりミリアのパーティー入りを邪魔してくるらしい。


「あの、黙って聞いていれば…先程から貴方は何なんですか?」

「私?私はノワ・エイルシュタット。王都魔術学校を首席で卒業して、今は勇者に同行する旅の賢者やってます。アリアの側は渡さないよ。私だけの特等席だから」

「渡した覚えどころか、特等席を制定した記憶もないのだけど…まあ、今は私とこの変態の二人でパーティーって感じね」

「さり気なく変態扱いしたね、アリア。でも悪くないかも…」


ひょこひょこ寄ってくるノワを片手で止めつつ、ミリアとの会話を続ける。

彼女はそんな私とノワを交互に一瞥しながら、私に憐れみの視線を向けてきた。


「大変そうですね。こんな初対面で喧嘩を仕掛けてくるような、とても賢者とは思えない愚行をする者が勇者様の隣に立つなんて、とてもおこがましい」

「…そう。面白いね」

「勇者様、なぜこの賢者を連れているのですか?」

「仲介役の紹介」

「なるほど。事情はわかりました。貴方としても、こいつの同行は不本意だということも」


ミリアとノワの間に、一瞬火花が散る。

目の錯覚だろうか。疲れでおかしくなったのかもしれない。

…早く休んだほうがいいかも。


「勇者様としても、この愚者と一緒にいるのは耐えきれないようで」

「さりげなく私を愚者呼ばわりしたな小娘。私賢者ぞ?」

「どう考えても愚者の奇行でしょうに!」


言えているわね。愚者の奇行。

最適な表現すぎて何も言えないわ。


「ほお…なるほど小娘。お前が私に喧嘩を売っていることはとても理解できたよ」

「小娘はよしてくださいな。私、これでも十八歳。立派な成人なの。そんなに若く見えるかしら?」

「うっそ。私より年上?ババアじゃん…」

「ババっ…」


ノワ、流石にそれはまずい発言だと思う。

ミリアだけじゃなく、全国のお姉さんたちも敵に回した気がするわ。

けれど彼女たちは止まらない。


「言わせておけば…!勇者様!この者は勇者パーティーにふさわしくないと思います!」

「いーや。私が一番ふさわしい。何でもできる。一人いれば魔王討伐以外は何でもこなせる!道中は全部私一人で蹴散らせるね!」

「ではそれを証明して頂けます!?」

「構わない。どんな無理難題でも押し付けておいで。私の実力を見せつけてやるから」

「いいでしょう。ノワ・エイルシュタット…!貴方の実力、私が直々に試させて貰うわ!」

「望むところ」


火花どころか、彼女達の周りに熱気が漂い始める。

なんだろう。後ろで炎が燃えている気がするわ…。

やっぱり疲れているのね、私。


あぁ…どうして普通に仲間に勧誘できないのだろう。

どうしてこう、ノワとミリアの決闘なんかに話がもつれているのだろう。

うん。意味がわからないわ。


わーきゃー言い合う二人を遠目に、私はあくびを一回。

やはり旅の疲れが響いているらしい。

話が終わるまで、椅子の上で寝かせてもらおう。


長椅子へ横になり、二人の言い争いをBGMに目を閉じる。

眠気が私の意識を飲み込むのに、そう時間はかからなかった。

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