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賢者様、貴方をパーティーから追放させてください!  作者: 鳥路
第3章:常夜都市「ミドガル」/蜜月にナイトメア

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11:願いを星に宿して

しばらく進んでも、私たちの目の前はずっと暗いまま。


「いくら歩いても、風景一つ変わりませんね」

「面白みに欠けるよね」

「お二人はこれを遠足か何かだと思われていませんか…?」


事実、景色は変わらないし変化もない。

ただ進んでいるだけ。いつか歩いていたら行き止まりか出口に辿り着けるのだろうか。

それすらもわからない。気が狂いそうな無の中をピニャケルは進んでくれる。


「あ、あの…ピニャケル君」

「ピニャでいいですよ」

「それじゃあ、ピニャ君。私たち二人を抱えて歩いて、疲れない?」

「大丈夫ですよ。お二人とも、羽根のように軽いので。と、言うわけでちゃんと食べてくださいね。二人とも、出歩けるようになったとはいえ平均より細いのは変わりないのですから」

「…善処します」

「できる範囲で、頑張るね」


私も椎名さんも生前は難病で入院をしていた。

ピニャ君はずっと痩せた椎名さんの姿を側で見てきたのだろう。

そう思うと、食べてほしいという切実な願いは聞き入れるべき願いとして椎名さんの中に落とし込まれてくれるらしい。


私も、アリアとしても小食な部類だ。

やはり育ち盛りだし、きちんと食べておこう…苦しくない程度に。


「ところで、永羽さん。これは、君の悪夢なんだけども…僕は君の悪夢というか「最も恐れている事象」がわからなくて。君が一番恐れている事って何なんだろうなって」

「そう、ですね…」


少しだけ、記憶を過去に巡らせる。

先程のことを踏まえたら答えは出ているはずだ。


「私は、おそらくですが大事な友達を…一咲ちゃんを失うことが、何よりも怖いことだと思っているみたいです」

「君の家族ではなく、一咲さんが?」

「はい」


私が、霧雨永羽として生きていた時間の中で、最も多くの時間を過ごしたのは家族ではなく、一咲ちゃんだ。

いつも一緒にいる一咲ちゃんが側にいなくて、死んでいて…私のせいで死んでしまったなんて、考えただけでも息が止まりそうだった。


「そっか。だからああいう形で僕が君を責めていたのか」

「椎名さんからしたら、私はお弟子さんの仇みたいなところもあると思いますから…」


思い出しただけでも、胸がきゅっと締まった感覚を覚える。

自然と震えていた手を見た彼は、申し訳なさそうに目を伏せた。


「申し訳ない。辛いことを思い出させたようだ」

「いえ…」

「そんな君に、僕から一つ。君たちの病が治る方法というのはね、僕が関与しないといけないんだ」

「椎名さんが?でも、魔法ではどうにもならないって言っていたのは…」

「僕は君と同じように「願いを宿した能力」を持っている。最もそれは僕の願いではなく、母の願いだから、上手くは扱えない上に代償を払わないといけない代物だけれどね」

「受け継いだということですか?」

「そういうことだね。普通はあり得ないみたいだけれども、母の強い願いで、それは僕に譲渡されている」

「…それは、どんな能力なのですか?」

「数多の事象を改変できる力。代償が大きいほどその改変は大きく行うことができる。代償で記憶は取られるけれどね」


じゃあ、悪夢の中の椎名さんは記憶の大半を失っているのではないだろうか。

一咲ちゃんだけならともかく、私まで治しているのだ。代償は大きなものだっただろう…。


しかし、この話題で彼が何を言いたいのか理解した。

彼は二人揃って治す前提でしか話をしていない。

悪夢のように、どちらか一人を自分たちで決めろなんて、絶対に言い出さない。

それがわかっただけでも、安心感を覚えられる。


「二人を治すことをずっと考えてくださっていたんですね」

「うん。けれど永羽さんが亡くなる二日前…願いはあるかって聞いたら、永羽さんは答えられなかったし、一咲さんも生きるつもりはなかったみたいで…」

「そうだったんですか…」

「その代わり、僕はある願いを叶えるためにその能力を使った。君達は理解しているはずだ。どんな願いが、叶えられたか」


勿論理解している。私も一咲ちゃんも、同じ願いを抱いた。

次も一緒にいられますように。

だからこそ、今もこうして一緒にいられる。


「しかし記憶は、その…」

「大丈夫。当時の僕にとって記憶を失うことは怖くないことだったから。むしろ君たち二人が元気に歩き回れる時間を作れるのなら、記憶の一つ二つ、払えるよ」

「なぜ、そこまでしてくださるのですか?他人、ですよね?」

「嫌だな。せめて他人ではなくて、友達だと言って欲しいな」


難病で苦しむ友達の為なら、もう必要のない記憶の一つ二つは払えるものだからと。

どうやら私は彼みたいな有名人の友達だったらしい。

病室に何度も訪れてくれているからきちんと「友達」だと断言できるのに。

なんか、変な感じだ。


「私、有名人の友達って初めてです」

「君も将来同じところに立つんだよ?」

「舞鳥・・・ですか?」

「そう。大社の中でも選りすぐりの能力者には「羽」と「称号」が与えられる。僕が「青鳥」と呼ばれるように、君は「舞鳥」と呼ばれ、人々に親しまれる大社のエースになるんだよ」


私はこの剣の力で、椎名さんと同じ場所に立った。

強い能力者だと認められたのだ。そうとう強いんだろうな、あの剣を出す能力は。

だからエース…と、呼ばれているのかもしれない

しかし、優梨さんからも言われていたが、エースと呼ばれるとなんだかむず痒くなる。

椎名さんたちはそれに耐えているんだろうなぁ。

慣れるものなのかな、そういう呼び名って。


「エースと言われるのは、むず痒いです。それに私には、そんな風に言われるほどふさわしい力がないから」

「「今は」その限りではないよ」


椎名さんは子供らしからぬ悪い顔を浮かべる。

その辺りやはり、姿だけが子供なんだなと感じさせられるが…彼は一体何を考えているのだろうか。


「巻き込まれたことは不運だが、それすらも踏み台にしてやろう。僕を巻き込んだんだ。思い通りになると思うなよ…!」

「やはり、根には持っているんですね」

「当然だよ。できれば僕の手で嬲り殺してやりたいぐらいだけども…それは、君の仕事だから。任せるよ、永羽さん」

「…とりあえず、この悪夢を作り出した張本人の相手は、私がしないといけないと思いますので。頑張ります」


どんな残酷なことを考えているのか、理解しかねるが…やはり、私が今回の敵と相対することになりそうだ。

戻ったらきちんと覚悟を決めて、剣の修行をしていかないとかも…。


「さて、本来なら予定外ではあったけれど、僕が君の稽古をつけよう。剣は素人程度だから、帰って桜哉と水に聞いてほしい。僕が受け持つのは転生特典である「舞光」の扱いだ」

「…あの剣のことですか?」

「そうだよ。あれが君の転生特典。あれを使いこなすことができれば、今後が多少楽になりそうだとは思わないかい?」

「そうですけど、私は…能力なんて」

「ちっちっち。今の状況を踏み台にして利用するんだ。どういうことかわかるかい?」

「…?」

「今の君は「舞鳥の霧雨永羽」だ。能力を最適な状態で使える状態とも言える。悪夢に巻き込まれたこの状況が作り出してくれた偶然にして最適の産物だ。今の力の流れを覚えることができたら…君はもっと強くなれるよ。僕が保証しよう」


小さな魔法使いはこんな状況の中でも悪巧みをしっかりしていたらしい。

敵の術中でありながら、それすらも自分の糧にする計画を。

きっと隣に一咲ちゃんがいたら、同じようなことをしそうだ。


なんせ、彼は一咲ちゃんの「師匠」なのだから。

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