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賢者様、貴方をパーティーから追放させてください!  作者: 鳥路
第1章:水上貿易都市「ウェクリア」/勇者と賢者の始まり

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2:教会での挨拶

森を抜けた先にある水上貿易都市「ウェクリア」

きちんとした陸地もきちんと存在しているのだが、ウェクリアのメインは水上に建設されている都市。

他都市と貿易を円滑に行うために陸地もきちんと有しているのだが、基本は街中に張り巡らされた水路とそれに沿うように作られた道が人々の移動手段となっている。


貿易都市としての役割を果たすこの都市は、王都近郊都市の中では最も人の出入りが多い。

もちろん情報の出入りも同じように。


ここならば、私の欲しい情報を手に入れることができるだろう。

主に、魔王が召喚した魔物が引き起こした被害とか。

賢者ノワ本編に突入する前の私達は、日銭を稼ぐ目的や名声を広める為にだとか…そういう魔物被害への対処も行っていたようだし。

本編に向かうためには、こういう細かい積み重ねもしておくべきだと思うから。


それに、このウェクリアには…勇者パーティーの一人である「ミリア・ウェルド」がいる。

出番の少ない彼女だが、一応キャラクター紹介に「ウェクリアの出身」と記載されていた。

なので彼女は間違いなくここにいる。


確か役割としては「僧侶」回復や支援に特化した存在だ。

…専門職である彼女も、ノワには及ばないみたいだが。



「アリア」

「何かしら」

「なんでここに寄るの?」

「それは…情報を得るためよ。魔物による被害とか、有益な人材の情報とか」

「前者はともかく、後者はいらなくない?私がいればもう何も必要ないよ」

「絶対に必要でしょ?今後も貴方と二人なんて嫌っていうか無理。盗撮とセクハラをしなければねぇ…」

「…それは申し訳ないというか、事情が」

「事情?あるなら言ってみなさいよ」

「それはまだ言えなくて。いいたいけど、言ったら怒られる」

「誰から?」

「師匠から」

「…貴方、師匠なんていたの?」


ノワのキャラ設定では、確か師匠という存在はいなかったはず。

魔法は独学で学び、それ以外は魔法学校で学んだ彼女。

しかし元々の出身が平民以下。先生たちも腫物扱いで話しかける人はいなかった。

これもキャラクター紹介に書かれていたことだ。

なので、間違いはないはずなのだが…。


「うん。いるよ、師匠」

「どんな人?」

「すず…世界一の、魔法使い。訓練は厳しいけれど、私はあの人に巡り会えたことを後悔はしていない。あの人がいたからこそ、私は今ここに立てている」

「世界一の魔法使いって…もしかして、マルグリット・エヴァンス?」

「誰そいつ」

「…」


…この世界で一番の魔法使いの名前だと、お父様が言っていたのだけれど。

しかし彼は弟子を取らないと言っていたそうだし、なんなら二十年前にお亡くなりになっている。

言っていてなんだが、ノワの年齢は一応十六歳ということになっている。

彼の存命期間とは一致しない。

…自分でも何を言っているのか、不思議に思ってしまう。


「あ〜。待って。何か思い出したかも。そのお爺さん、二十年前ぐらいに死んでない?」

「私も今それを思い出したところよ…で、結局貴方の師匠ってどんな人なのよ。とんでもない人だというのは、聞かなくてもわかるけれど」

「そうだね。魔獣…じゃなくて、魔物を見かけたらすぐにヒャッハー!って叫びながら無双しだすような人だよ」

「やっぱり頭のネジが外れている人種じゃない…。弟子が弟子なら師匠も師匠ね…」


でも、討伐関係で功績を上げているようだ。

いずれ巡り合うことができるかもしれない。

その時は…スカウトしてみようかな。一応、師匠だし。強そうだし。


「あー…凄く仲間にするかどうか悩んでいるところ申し訳ないんだけど、師匠は仲間にできないよ。あの人は「観測者」だから。よっぽどの事がない限り、私達に干渉をすることはないと言っていた」

「へ?」

「…君も会ったことあるよ。私が言えるのはここまで。これ以上は師匠に怒られる」

「はぁ?」


ノワはそれで話を切り上げて、どんどん先へと歩いていく。

世界一の魔法使いで、ノワの師匠で…私も会ったことがある人。

そんな条件、満たせる人はいないと思う。

それに、これを育てた変人なんて絶対に記憶に残っているはずなんだけども…。

本当に会ったことあるのかな。


「さて、最初の目的地はここよ」

「帰ろう」

「なんでよ」

「だってここ、教会じゃん…最初に寄るのは役所でいいじゃん。むしろ役所しか寄るところないよね?討伐依頼は役所って相場が」

「いやね。私、これでも神様の託宣で選ばれた勇者よ?立ち寄った先にある教会で神様にご挨拶と近況報告をするのは当然の流れよねぇ?」


その目的もあるが、実際には教会にいるはずのミリアへ会いに来たのだ。

彼女を仲間にするならば、まずは出会いから始めなければならない。

教会に勤めている彼女と出会うためには教会に通うしかない!


「いやいやいやいや。そういうの後回しでいいと思うから。まずは勇者としての義務を果たそうよ。魔物討伐行こ?私、アリアが今どこまで戦えるのか見ておきたいな?」

「嫌よ、疲れているもの」

「じゃあ宿屋に行こう。私と部屋は別でいいから。まずは旅の疲れをね?ね?」

「神様にご挨拶をした後でもいいでしょう?先に帰っていてもいいのよ?」

「いーや。ついていく。私は勇者パーティーの最初の仲間だからね。私も挨拶をするのは当然の流れだと思うんだよね!」

「ぐぬぬ…」


教会に行きたがらない様子だったから、来なくてもいい選択肢を出したのに。なぜついてくる流れになっているのだろうか。

わからない。ノワ・エイルシュタットの考えが全くわからない。

彼女と共に、渋々教会の中へと立ち入る。

誰もいない神聖な空気が漂うそこで、私は祈った。


…神様、私は「やるべきこと」を果たすためにここへ来ました。

主にノワのせいで上手くいかないことばかりですが、これも試練だと思いつつこなしてみせます。

…しかしなぜ彼女は法則から外れたことばかりするのでしょうか。

私の知るノワとは大違い。唐突にセクハラしてきたり、さりげなく盗撮をしてきたりするのはなぜなのでしょうか。

物語の彼女は、とても格好いい賢者様だったと思うのですが…

…まさか、ノワも私と同じ「転生者」だったりしませんよね?

そういうことは流石にありませんよね?


「…ふう」

「挨拶終わった?」

「…ええ、まあ。貴方こそ、挨拶しないと〜とか言っていたけれど、今まで何してたの?」


私に問いかけてきた彼女は、しゃがんだ様子なんて一切なかった。

ぼんやりとした目で私を見下ろし…大あくび。

とてもじゃないが、先程まで挨拶をしていた人間のすることではない。


「耳の穴ほじってた。ふわぁ…」

「本当に貴方何しにきたの!?」

「私は知っている。神はいない」

「そういう考えはありだと思うわ、でもね、いる前提で建てられている教会の中でそれを言うのは流石に貴方が空気の読めないダメダメ賢者だとしても、駄目だと思うわ…」

「凄い言われようだね…」

「それを言わせているのは貴方でしょう?」


なんか言い争っていると、頭が痛くなってきた。

ストレスだろうか、疲れだろうか。

はたまた両方だろうか。

わからないけれど、ミリア探しは後回しにして今日は休んだほうがいいかもしれない。


「…なんだか疲れたわ。宿を探して休みましょう」

「ん?」


提案をした瞬間、教会の扉が勢いよく開かれる。

紺色のシスター服。なびく髪は銀。

その姿は本のキャラクター紹介でも見た姿。

探し求めていた人物と完全一致。

不幸中の幸いというのはこういう事を言うのだろうか。


「こちらへ勇者様がいらっしゃったと聞きまして!」

「げぇ…」

「…やった」


予想外の登場をしてきた「ミリア・ウェルド」

私が探し求めていた、未来の仲間は自らの足で私達の元へやってきてくれた。

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