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賢者様、貴方をパーティーから追放させてください!  作者: 鳥路
第2章:要塞都市「スメイラワース」/精霊たちの条約

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26:嘘つきの通信魔法

砂漠からスメイラワースの中へ移動する間、改めてパシフィカに事情を説明しておく。

急いでいた私の説明では、誤解が生じている部分があるかもしれない。

これからの計画に認知の齟齬はあってはいけないというピリカの提案で、それぞれの記憶を擦り合わせながら時系列を辿る。


流石に私たちが転生者である事実を持ち出すと、話が面倒なことになりそうなのでそこは伏せておく。

そんな私たちの意を汲んで、その部分は「話す気はない」とあらかじめ約束してくれた通り、ピリカも上手く伏せてくれた。

パシフィカに嘘をつくのは申し訳ないが、こればかりは仕方ない。


「ふむ…つまり、アリアは砂になったことで、大地の女神の元へ行けたというわけですか」

『よし、転生関連を触れずに上手く状況を伝えられたと思う』

『通信魔法がなければ詰んでいた…』

『この魔法にはいつも助けられてるなぁ…そういえば、私達が入院していた時代、椎名さんって通信魔法の他にも何か使っていたよね。何を使っていたの?』


パシフィカへの説明の為に私たちはノワの魔法を使って、思考を共有した。

「通信魔法」———それは私と一咲ちゃんにとっては非常に馴染みのある魔法だ。

かつて、身体が動かせず、喋ることも叶わなくなった私は椎名さんが来てくれる日だけだったけれども、一咲ちゃんと通信魔法を使って話していた。


椎名さんが真ん中に入って、私たちの手を握りしめて通信魔法を起動させる。

本来なら、通信魔法の仕様に「身体に触れる」必要はないらしい。

彼が私たちの手を握りしめていたのは、通信魔法だけではなく…特別サービスで複数の魔法を使用して、短い間だけれども、私たちが楽しい時間を過ごせるよう工夫を凝らしてくれていたから。

だからこそ、その行動が必要だった。


『通信魔法と意識共有魔法と創造魔法だよ。創造魔法で私たちが会える空間を、通信魔法で私たちの意識を繋ぐ。それから意識共有魔法でその空間に私たちを同時に出現させる…って感じらしいよ』

『一咲ちゃんでも、曖昧?』

『んー…魔法使いってさ、基本的に一つの杖で一つの魔法しか発動できないんだ。今は簡略化されているけど、昔は氷を一つ作るのに、水魔法を使った後に凍結魔法を使っていたそうだよ』

『複数の魔法発動も詠唱や魔法陣の簡略化も高度技術だから、格好いいところを見せたいのはやまやまなんだけどね。今回は期待しないでほしい。私も一応は出来るけど、得意中の得意に該当する魔法だけだからさぁ…』

『それでもできるなら、何が出来るか教えてほしいかも』

『…各トラップ系支援魔法を同時に仕掛ける程度だよ』


旅の途中で、あの時何が起きていたのか一咲ちゃんに聞いたときがある。

魔法の詳細は、今になって知ったのだが…ポンポン使えるような魔法ではないらしい。

どれも大量の魔力を要求されるような、とんでもない魔法のようだ。


『一咲ちゃんって、椎名さんが使っていた魔法はどれぐらい使えるの?』

『…意識共有魔法は勉強中。創造魔法と通信魔法は使いそうだったから覚えたよ。もう二つとも使ったしね』

『凄い』

『あ、師匠みたいに魔法を同時展開できないだけで、意識共有魔法以外は師匠と同等程度に使えるから。安心してね』


創造魔法はどうやらウェクリアの教会地下から地上へ、監禁されていた人たちを逃がすための通路を作り上げた時に使ったらしい。


『ああ、そうか。話してなかったね。創造魔法を使った直後に別の魔法を使えた理由も話しておこうか』

『お願いします』

『この世界にもエリクサーポーション…だったかな。とにかく魔力回復の手段はあるんだよ。私はもっぱら魔石に貯めた魔力だけどね!毎日コツコツ貯めておけば、いざという時に役に立つ!』


現に、あのウェクリアの神父の時は魔石の保管魔力を使ったらしい。

魔石は他にも魔法を封じたりもできるらしい。色々と使い方ができるアイテムのようだ。

魔法使いじゃない人間にも魔法が使えるようにしたものもあるらしい。

色々と使い方があるそうだが、基本は魔法使いの道具のようだし…私には無縁かも。


『魔石貯蓄なんてちまちましたことをすることはない?』

『ちっちっ…永羽ちゃんさん。ポーションはね、滅茶苦茶高いんだよ…具体的には一本でその辺の学校、一年分の学費』

『えっ』

『創造魔法を頻繁に使うっていうなら、材料集めるから錬金術師を仲間にしたいレベル…あの三人以外の仲間を作るのはアウトなのかセーフなのかわからないし、仲間を作らせないって言う私の理念に反するけれど…!節約の方が大事だから…!』


魔力の問題は、あのノワが特定職の仲間を加えたいと願うレベルの切実なものらしい。

一咲ちゃん自身も膨大な魔力を保持していたはずだ。

彼女は紫色の瞳をもっていた。鈴海では魔力が質と量共に最優良とされる紫を———。


それにノワも元々の魔力がかなり多い部類だったはずだ。

そんな彼女が「魔力を増やす手段」を求めるとなると、相当な魔力消費だという事が窺える。


『師匠も何を食えばあんな魔法を開発できるんだろうね。私には理解ができない』


ふと、話に入らず傍観に徹していた時雨さんに視線を向ける。

あの人の想像力の根幹にはきっと、彼女が大きく関係しているのだろう。


「アリア?」

「あ、ああごめんなさい。ちょっとぼおっとしていたわ」

「まだ、本調子ではないのでは?」

「色々あった上に休む暇もなかったから。でも、もう少し頑張るわね」

「無理をしないように…」

「ありがとう。それじゃあ、話の続きをさせて貰うわね」

「お願いします」


魔力のことを考えていたら、本題であるパシフィカへの事象の説明を放っておいてしまったらしい。

パシフィカに声をかけられた後、私は再び話に戻る。


「…どこまで話したかしら」

「砂になって、グラウシュペリア様で会ったところまで」

「ありがとう。それでね、グラウシュペリア様に会った私は、近いうちにスメイラワースと砂の精霊に待ち受けている未来を教えて貰ったの」

「勇者はこれでも空の女神の神託者だからねぇ…だから女神に接触できたんじゃないかなぁって思うわけですよ」


話の信憑性を高めるために、さりげなくノワが補足という名の予想を加えてくれる。

あくまで予想だし、嘘だけれども。

同時にそれを確認する手段を、パシフィカは持ち合わせていない。


「それで、グラウシュペリア様は我ら子供たちを、そして太陽の精霊である貴殿ら…同族を失わないよう、勇者殿に予知した未来を知らせてくれたようだ」

「スメイラワースと砂の精霊、どちらも近いうちに滅びてしまう未来を、ですか」

「そうね、両方滅びる最悪の未来を…回避するために」

「その為に、砂の精霊女王は外に出て、何かを成そうとしているということでしょうか」

「そういう訳ね。できれば、太陽の精霊女王にも合わせて欲しいの」


そういえば、作中では太陽の精霊女王という存在は一度も出てこなかった。

だから私たちは、太陽の精霊女王側の協力がなければ…彼女に会うことも叶わない。

太陽の精霊女王はどんな存在なのだろうか。

ピリカみたいに、色々ありはしたけれど、すんなり事情を理解してくれる存在だと助かるのだけど…。

なんなら、面倒を回避するため、ピリカみたいに私の記憶を何らかの方法で読み取る能力とかあってほしいなとか思うぐらいだ。


「二人の精霊女王の協力の下、私はとある魔法を「和平の象徴」の下に仕組む予定。互いに傷つけ合うことを許さない魔法をね」

「賢者の魔法で、争いを止める…それを、アルシア様の下に」


アルシアといえば、パシフィカと出会った時に案内をして貰った名所の名前ではなかっただろうか。

アルシアの彫刻…精巧に形成された精霊の彫刻。

ただの観光名所だと思っていたけれど、パシフィカにとってそれこそが和平の象徴らしい。

そしてまた、ピリカにとっても。

一緒にいるピルシェゴールにとっても…それは共通しているようだ。


「事情はわかりました。太陽の精霊女王の下にご案内します」

「ありがとう。それから、パシフィカ、一ついいかしら?」

「なんでしょう」

「アルシアという存在は、貴方たち精霊にとってどんな存在なの?それに、あの彫刻はどういう意図で制作されたものなのかしら?」

「話しながら歩いて行きましょう」


遠い昔の話。それこそ、百年ほど前の話だそうだ。

スメイラワースが完成した直後。

とある旅人が、この都市に迷い込んだことが、全ての始まりだったそうだ。

その旅人こそ「アルシア・オージェンス」

オヴィロ帝国に存在する芸術都市からはるばるやってきた旅芸術家だった。

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