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賢者様、貴方をパーティーから追放させてください!  作者: 鳥路
第2章:要塞都市「スメイラワース」/精霊たちの条約

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25:精霊騎士と賢者

母が姿を現し、朝を知らせてくれる。

目覚めた私はスメイラワースの外に出て、砂の精霊の集落…その入口があると言われている地点まで駆けていた。


あの後、無事に眠りについた私は、砂の精霊からの襲撃に遭うことなく朝を迎えられた。


『勇者なんだから。必ず守ってみせるわ。だから…』


金髪の、私より何十倍も若くて、幼い勇者の少女に救われた。

騎士である私が、だ。


「アリアっ…!」


夜、目覚めていた者達の情報によると、太陽の精霊の踊り手と似たような姿をした少女は、砂の精霊に捕獲されたそうだ。

———私のせいで、彼女は捕まってしまった。

鎧を着込み、彼女が預けたアヴァンスを片手に空間の裂け目を通り、砂の精霊が住まう空間に入り込む

敵だらけの環境だ。私は戦えないが、防御には自信がある…!

勢いで突っ切ることができれば…自ずと中心まで行けるだろう。


「あれ?パシフィカ?」

「アリア!無事だったのですね!」


そんな私の勢いを、助け出したかった筈の存在が一気に引き落としてきた。

…予想とは大違い。出会った時と同じ様相のアリアが、入口付近で予想外の存在と共に立っていた。


「太陽の原初。母の教育係パークスの忘れ形見。パシフィカ・グラウゴスか。話には聞いていたが、目覚めてすぐに駆けつけたか」

「…」

「返事が出来ないのか「忌み子」」

「…そんなことはありません」

「ソレアの奴は教育もまともにしていない訳ではないだろう。友好的にしろとは言わないが、挨拶ぐらいしたらどうだ。品位を問われるぞ」

「…太陽の精霊、パシフィカ・グラウゴス。越権の機会をお与えいただき、感謝を申し上げます」

「よろしい。できるではないか」

「しかし…砂の精霊女王。ピリカ・ミョリス。なぜこんなところにいるのですか?玉座にいるとばかり」


アリアを中心に、対立する者同士睨み合う。

ここにアルシア殿がいたら…きっと、悲しまれる。

そう、心の片隅で考えながら———。


・・


睨み合う二人の真ん中で、私は狼狽えることしかできなかった。

外はもう朝が来たらしい。パシフィカが動いているということはそういうことなのだろう。


「ぱ、パシフィカ…」

「アリア、私の後ろに。今度は私が…」

「砂の精霊の集落なのだから…ピリカがいて当然でしょう?」

「呼び捨て!?」

「…至極真っ当であるが、今回は現在に至るまでの説明した方がいいぞ。アリア・イレイス…」

「ざっくりでもいいから、とにかく今は和解済ってことを伝えた方がいい」

「わ、わかったわ!あのねパシフィカ」


現在に至るまでの事をパシフィカにしっかり説明しておく。

こうしてピリカと並んでいることも納得してくれたらしく、剣を収めてくれた。

ふと、パシフィカの視線がノワに向けられる。

なんだかんだでこの二人、初対面なのよね…。

けれど、なぜだろうか。

初対面なのに、なぜか、凄く…険悪そうな気がする。

ノワはともかくと言える。彼女は仲間の加入を阻止するために立ち回っているのだから。

けれどパシフィカはなぜ?


「さて、パシフィカ・グラウゴス。貴殿の目的は?」

「勇者様を、アリアを探しに」

「そうか。見ての通り勇者は無事だ」

「砂にされた上に、変な特性も身につけたけどねぇー…」

「別に困るものじゃないから」


「何!?変なことをされたのですか、アリア!おのれ砂ぁ…!」

「なぜそこで食いついてくるのか理解できないわ、パシフィカ」

「身体に異常はありませんか?動かしにくいとか、かゆいとか…」

「大丈夫だから!汚いから触っちゃだめ!」


服はともかく、私自身は元砂だ。

全身はまだ砂っぽさが消えていない。早くお風呂に入ってさっぱりしたいぐらい。

それに全身汗だらけだし、今のパシフィカどころか、ノワにも時雨さんにも…他の誰にも触らせたくはない。


「ぐっ…穢された後だったか。おのれ砂…!」

「汚された?まあ、そうかも」

「おい、精霊騎士。なんか違う気がするぞ。思考回路が私と一緒に感じたぞ」

「何か違うことでもあるのか」

「事情をちゃんと聞いていたのかな?アリアは砂の精霊に、砂に変化させられていた。時間も短かったし、術も綺麗だったから普通に動けているけれど…元砂だよ。全身砂だらけだし、汗だくなわけ」

「あ、ああ…」

「つまりのところ…普通に汚いだけ。そういう意味じゃない」

「そ、そうか…盛大な勘違いをしていたようだな。申し訳がない」


ノワとパシフィカはなぜかお互いに納得したように、うんうんと互いに頷いていた。

…勘違いをする場面なんてどこかにあっただろうか


「…?」

「アリアさん、どうされました?」

「時雨さん、私は全くわかりません。二人は何を勘違いしていたのでしょうか」

「言わぬが花という言葉があります故、ノーコメントでやり過ごさせていただきます」


…彼女から意見を聞くことは叶わない。

では、もう一人はどうだろう。


「パシフィカの勘違いは、その女がよく抱いていそうな思考と一緒だよ。性的なことさ」

「ノワ」


さりげなく、ノワが私に抱きついてくる。

時雨さんに取られたと思ったのだろうか。彼女らしからぬ行動で、少し驚く。

…距離が近いと、何度も何度も思い出して、意識をしてしまう。


「むう…」

「精霊って女王以外は無性らしいね。そうなってくると交配も人間のそれとは異なるだろう。なぜその手の知識を得ているのか、私はそこが引っかかるけれどね…アリアは何か知らない?」

「う、ううん。全然」

「そっかぁ。娯楽とかで認知されていたりするのかなぁ…」


さらに、ぎゅうっと抱きしめられる。

嫌な気持ちはしない。本当は抱きついてほしくないけれど。

…綺麗なローブが、汚れてしまうだろうから。

彼女はもう汚れているから気にならないとかいいそうだけれども、私としては気になってしまうのだ。


「ノワ、離して。汚れちゃう」

「今更だよ」

「それでも。なんでこのタイミングでくっついてくるの?」

「牽制かな」


「パシフィカ相手でしょ」

「察しがいいね。その通り。アリアも成長しているんだね。私、嬉しい!」

「嫌でも察しがつくわよ。勇者と二人仲良し。お前が加入する間はない!って意味でしょう?」

「…そうじゃないんだけどな」

「?」

「まあ、アリアもいつかわかるよ」


さらに力強く背後から抱きしめられる。

それと一緒に、一瞬。ほんの一瞬だけ…パシフィカの方から嫌な気配がした。

鎧で隠されているから、表情は読み取れないけれど。

何か、嫌がっている?

それもそうか。なんならここは敵の住処。

パシフィカとしては、早く出たいところだろう。


「ノワ、とりあえずここから出ましょう。ピリカもパシフィカもそれでいい?」

「構わない」

「私も、問題ありませんが…お二人は何をしようと?」

「それは、外に出てから話すから」

「わかりました」


合流したパシフィカと共に砂の精霊の集落を後にする。

そして私は久々ではないはずだけれど、久々な感覚と共に都市外の砂漠へ足を踏み入れた。

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