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賢者様、貴方をパーティーから追放させてください!  作者: 鳥路
第2章:要塞都市「スメイラワース」/精霊たちの条約

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23:日の出前の語りごと

「さて、お前たちの目的は…」

「いや、私たちはアリアを助けに来ただけだから」

「後はよろしくどうぞという感じですね。では」

「ちょいちょいちょいちょい」


帰ろうとするノワと時雨さんを引き留めて、大人しく椅子に座らせる。


「…ノワ、ここでどうにかしないと私の目的が果たされちゃうから!」

「あ、そっか。枷が外れて忘れてたけど、これ加入イベントの途中か」

「え、貴方あの枷外せたんですか?」

「先ほどから訳のわからない単語で会話するな…まあ、貴殿を砂にしたことで、私はおおよその事情を把握している。気を抜け、霧雨永羽」

「え…なんで、え?」

「私は砂の精霊女王。砂を司る精霊を束ねる者だ。我々は、砂に触れることで知恵を得ることができる。もちろん、砂になった貴殿の記憶も…知恵の一つとして覗いてしまった」


狼狽える私を落ち着かせるように、彼女は謝罪を述べる。


「けど、それを本人の前で言わなくてよかったよね?」

「…本人が隠していたことを、このような形とはいえ知ってしまった。その事実は述べるべきであり、同時に私は精霊女王の名にかけて、生涯この秘密を隠し通すことを誓わなければならない。もちろん、賢者である貴殿の秘密も含めて」

「そ。真面目すぎない?」

「そうでなければ、女王なんて務められない。我が道を踏み外すことは、母を貶める行為であり、同時に砂の精霊をこの世から消すことになるのだから」


少しだけうんざりしたような表情と共に、ピリカは話を続けてくれる。

産まれてからずっと、彼女は女王だ。

嫌になる日もあったのだろう。けれど、彼女はその役目から逃げることができない。

逃げること、つまり彼女が女王という役目を終える日が…砂の精霊が滅びる日なのだから…。


「勇者と賢者…二人が転生者という存在であり、そしてこの世界は貴殿らの「元の世界」にとっては「物語」ということは理解できた。信じることは、そう簡単にできやしない」

「そう、ですよね…」

「しかし、記憶が嘘を吐くことはない。いかに夢物語であろうとも、私は貴殿らの記憶を信頼し、話をさせて貰いたい」

「ありがとうございます。事情をある程度理解してくれているのなら…こちらとしても助かります。私の記憶を経由して、自分たちが辿る運命もまた、知ってくれたと思いますから」

「…パシフィカ・グラウゴス。貴殿と一緒にいた精霊の名。それは間違いないだろうか」

「ええ」

「…原初の教育係パークスの忘れ形見だったか。これまた厄介な精霊を追っていたらしい。そちらにも危害を加えずに済んで助かった」

「…どういうこと?」

「自ずと分かる。ただ、あの精霊と関わり続けるというのはあまり賛成しない。神の怒りを買いたくなければ、あれからは手を引いた方が賢明ということは伝えておこう。あれはとんでもないものと混ざった精霊だからな」

「…ご忠告ありがとう」


「これぐらいは。さて…スメイラワースと砂の精霊の集落が滅びた未来を私は知ってしまった。しかしまだスメイラワースも砂も太陽も滅んではいない」

「ええ」

「スメイラワースは無くなっても良いし、太陽なんてさっさと滅びてしまえとは思っている」

「…そうね。貴方達が争っていることは理解しているわ」

「でも…私は砂の精霊を滅びの道に歩ませないように手を尽くさなければならない。例えスメイラワースを存続させ、太陽と手を取り合うことになろうとも、な」

「それなら」

「出来ることはつくそう。私は何をしたらいい。何か計画はあるだろうか」

「話は早いね。じゃあ軽く人質になってくれない?」


私とピリカの話が纏まったのを見計らい、ノワがひょこっと間に割り込んでくる。

そんなノワが発した言葉に全員がギョッとした表情を浮かべて彼女を見た。

流石にノワも失言だと思ったのだろう。

けれど先に話を進めてくれたのは、ピリカだった。


「…突拍子もないな。しかし何か考えがあってのことだろう」

「ああ、ごめんごめん。つまりさ、休戦協定を結べば、双方共に存続は可能だと思うんだよ。作中でスメイラワースと両精霊種を滅ぼした原因になる存在が言うのもなんだけどね」

「ふむ、休戦協定」

「ピルシェゴール、君には証人として私たちについてきてほしい。もちろんピリカも。ある魔法を仕込むために君にもついてきて貰わないといけない」

「構わないが、何をするのだ?」

「私も問題はないが…」

「私たちは帰って太陽の精霊側の女王を人質に取る。向こう側の証人は…そうだな。パシフィカでいいかな。話からして、アリアに聖剣を返すために寄ってきてくれるだろうし」

「そういえば…」


言えない。今の今まで聖剣の存在を忘れていたなんて。

むしろないから快適に歩けるなとか思っていたなんて言えない。

…しばらくは口を閉ざしておこうか。ボロがでそうだ。


「それから憑依魔法の下位魔法である「形代魔法」…簡単に言えば、形代に魂を結びつけて、その形代に害が及ぶとその形代に結びついた魂も傷つくって魔法があるんだ」

「ふむ。まさかそれに両女王の魂を結びつけるのか?」

「ご名答だよ、ピルシェゴール。一つの形代に両女王の魂を結ぶ。形代を守る結界も用意させて貰うから、ある程度は安心してほしい」


ノワの結界があれば、他者に攻撃されることはないだろう。

彼女の結界を破れる存在は、少なくともこの世界にはまだいない。

それにもしも入れたとしても、精霊自体は女王を崇めているし、自ら女王を傷つけにいく真似はしないはずだ。

もちろん、他者を利用して行うこともない。

これで、形代を傷つければ自分の女王まで傷つけるシステムの完成だ。


「これで、滅びの道が回避できるのならなんだってしよう」

「賢明な判断、助かるよ」

「スメイラワースへの襲撃もやめないといけないな。これからはいかに共存して生きるかどうかを決めないと」

「…万物は砂に還るべきという考えは?」

「捨ててはいないさ。けれど今までのように強いるわけにもいかない」


強いてしまえば、滅びの道を歩むのだから。

これからは全て自然に任せると…彼女は述べた。

聡明な精霊だ。精霊女王は皆数百年単位で精霊族をまとめ上げている存在だ。

太陽の精霊女王も、ピリカのように柔軟な考えを持ち、種のために行動出来る女王らしい精霊なのだろうか。

早く会ってみたいものだ。


「これで話はある程度まとまったと思う。早速実行に移すため、スメイラワースに戻ろうか」

「そ、そうね!」

「聖剣もだけど、後…元の服も返してもらわないとね」

「あ」

「その言い方…忘れていたね?」

「だって、その、今の服は前の服と一緒だから。つい…そのままだと思っちゃって」

「そ、そっか。同じだって錯覚させるほどの類似品を作れて、魔法使いとしては誇り高いよ。でも、君衣装を一式預けただろう?通行証とか、国が発行した証明書も含めて渡しているんじゃないかな?」

「…あ」

「返してもらわないとね」

「ん…」


いつものノワなら、冗談で話を締めようとしてくる。

けれど今日は、普通に、真面目に話を終わらせてくれた。

ふと、二人の腕に同じ腕輪がついていることに気がつく。

…仲が悪い二人だから、おそろいとかはないだろうけど。


「ねえ、ノワ」

「何?」

「その腕輪は?」

「「あ」」


ノワと時雨さんは互いに顔を見合わせて、青い表情を浮かべてその腕輪と私を交互に見る。

そして———。


「ああああああああああアリア!身体に異変はない!?」

「具合が悪くなったりとか!吐き気がするとか!頭がクラクラするとか!」

「そ、そんなのはないけれど!頭はぐわんぐわんするから!一度肩から手を離してほしい!」


慌てた二人から解放された私は、改めてその腕輪の詳細を聞くことになる。

どうやらこの空間、高濃度魔力で満ちているそうなのだ。

普通の人間では過ごすことができないその空間で過ごすために、これまた高濃度魔力を保持する椎名さんが作り上げた魔石をはめ込んだ腕輪を身につけているそうだ。

椎名さん特製のそれは、この空間でも問題なく過ごせるように色々と魔法も仕込んであるらしい。ノワですら把握しきれないほどの大量の魔法が、この小さな腕輪の中に存在しているそうだ。


「そうなると、私って今凄くおかしいのでは?」

「おそらく、ここの砂が原因だろう。アリアとしての砂を回収した際、ここの砂まで回収して…混ぜ込んだ可能性がある」

「で、私は今その砂を混ぜた状態で復活している…というわけですか?」

「おそらく。つまり今の貴殿は高濃度魔力空間にも耐性がある勇者。ソナタが到達できなかったオードガリアにさえ挑戦できる可能性が生まれたのだが…どう思う?」


ふと、頭に思い浮かんだのは椎名さんの顔だった。

ノワが「師匠接待用」なんていうから、連れて行かれる未来を考えてしまったじゃないか。

まあ、椎名さんは少なくとも私には普通の「よき友達」をしてくれていたし、一咲ちゃんみたいに弟子でもないから無理強いはされないと思う。

けれどなんだろう。この嫌な予感は…。


「…私も砂になって、ここの砂を蓄えた状態で復活したら、耐性つくのかな?」

「それは難しいだろうな。元々の魔力が邪魔をする。お前は強すぎるから、その方法では逆に害しか生まないはずだ。やめておいた方が賢明だ」


逆に私は邪魔をするレベルの魔力を保持しているわけでもないから、逆に砂が利益をうんだという訳のようだ。

ノワや時雨さんクラスになると、元々の魔力と取り入れた魔力が反発を起こすのかもしれない。

だから、逆に害しか生まないのかもしれない。


「ちぇっ、早く時雨さんとおそろい腕輪から解放されたいのに」

「奇遇ですね。私もです」


砂になって利益を得られないことを理解した二人は、互いに睨み合いつつ歩いて行く。

その後ろ姿を見て…安心した自分はきっと、どこかおかしいのかもしれない。

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