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賢者様、貴方をパーティーから追放させてください!  作者: 鳥路
第2章:要塞都市「スメイラワース」/精霊たちの条約

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16:迷い道のアリア

追放しないといけない。それこそ賢者ノワの「物語が始まる条件」なのだから。

けれど私は、一咲ちゃんともっと一緒にいたい。

生前、途中で終わってしまった時間を望みたい。

けれどそれは許されることではない。


「…なんで、ノワが一咲ちゃんだったんだろうな」


彼女じゃなければ、もう少しやりようがあった。

ノワが物語に準じた存在であれば、追放するのにも抵抗はなかった。

キャラクターであるノワが好きだからこそ、彼女には物語を始めてほしいと思えただろうから。

けれど中身が一咲ちゃんだと迷いがでる。

それだけじゃない。欲も一緒に出てきてしまう。

もっと一緒にいたい。話していたい。今度こそ、お別れしたくない。


「自分が思っている以上に、私は一咲ちゃんのことを大事に思っていたんだろうな」


病気で辛い中、自分も辛いはずなのに寄り添ってくれた彼女を、小さな世界ではあったが大事に思っていたのは確かだ。

けれどその感情は想定していたよりも、重い物だったらしい。


「…」


けれど、この感情はどういうものなんだろうか。

友達に向ける感情としては重すぎる。

友情?それとも依存?どれもしっくりくる名前ではないと思う。なんとなくだけど。


「アリア、ですか?」

「…パシフィカ。さっきぶりね。ここは巡回の経路なの?」


先ほど別れたばかりのパシフィカと道ばたで再会する。

あの後も巡回を続けていたのだろう。けれど、こんな場所で会えるとは思っていなかった。


「はい。アリアこそ、ここで何を?迷ったのですか?」

「いいえ。散歩中。せっかくだから観光をしようかなと」

「そうですか。そうだ。巡回のついでになりますが、案内をしましょうか?」

「いいの?でも、仕事中じゃ…」

「大丈夫ですよ。案内をしながら、仕事をしたらいいのですから」

「邪魔にならない?」

「そうであれば、提案などしません」


恭しく私の手を取ったパシフィカは、安心させるように微笑んでくれる。

太陽を連想させる真っ赤な目をこちらに向けながら、まっすぐに。


「私に案内をさせてくれませんか?」

「じゃあ、お願いしてもいい?」

「勿論です!まずは名所を見て回りましょうか。他都市から来た方がよく行かれる場所は…経路から考えると、まずは「アルシアの彫刻」ですね。早速向かいましょう!」


パシフィカに案内されるとは想定外だった。

けれど、地の利がある存在に案内して貰えるのは助かる。

パシフィカの後ろをついていきながら、街を見渡してみる。

意外と低い建造物が多い気がする。どこもかしこも平屋…なのかな。


「おや、パシフィカ。迷子の親探しかい?」

「今日も巡回ご苦労様」

「あ、いえ。この子は旅人で…」

「パシフィカ!鎧脱げ!暑苦しい!」

「動きにくいでしょう?」

「い、いやこれは仕事着ですから…」

「パシフィカー!後で本読んでー!」

「寝る前に一冊。決めておいてくださいね」


パシフィカは巡回騎士。こうして街中を歩くから、他者に顔を覚えられる。

皆、親しげにパシフィカに声をかけている。

固そうな鎧。一瞬接しにくそうな空気を出しているけれど、子供からも慕われている。


「人気者なのね、パシフィカ」

「ま、まあ巡回をしている間に、話をしたり、相談に乗ったり、頼み事をこなしている間に、こんな感じに…こら、鎧の留め具をはずそうとしない!」


子供たちを追い払うパシフィカの声は、心の底から嫌がっている感じではない。

もちろん子供たちも本気で留め具をはずそうとしている様子でもないようだ。

けれど、子供の一人が本気で留め具を外してしまったらしい。

そこを外したらあっという間に鎧がボロボロと地面に落ちていく。


この世界の鎧がどんな構造をしているかわからないし、精霊の特殊な技術だったりするかもしれない。

普通はこんな風に鎧が落ちたりしないだろうな、と思いつつ、鎧が落ちていく光景を眺めていた。

頭のそれも胴体と一緒に落ちるらしい。どういう原理なのかさっぱりだ。

けれど、脱ぎ着は楽そう。


瞬きを数回した後、その中にいたパシフィカは素顔というか、ありのままを衆目に晒してくれていた。

視界に映ったのは、きめ細かな白い肌。

どうやら常日頃から肌を鎧に隠していることで、強い日差しの効果を受けていないようだ。


もちろんパシフィカもまた、スメイラワースに住まう精霊。

衣服だけは、他の住民と同じように、露出の激しいものだった。

けれど、パシフィカの場合はギリギリを攻めたようなものではなく、きちんと大事なところは隠れていた。

周囲のように見えそうとか、若干見えているなんて事態は起きていないようだ。


そんなパシフィカをみて、子供たちは何故か呆れかえっていた。


「パシフィカ、着替えが面倒なのもわかるけどさぁ…」

「鎧の下に、装束を着るのはよくないと思う」

「だって、仕事が終わったらすぐに奉納だから…」

「奉納?」


子供たちとパシフィカの会話についていけない私の声に、子供たちが反応してくれる。


「お前は外から来たんだよな。教えてやるよ」

「私たちはね「お母さん」への挨拶を踊りで行うの。今日はパシフィカが当番」

「お母さん?パシフィカのお母さんって、偉い精霊だったりするの?」

「アリア、私たちにとっての母というのは、産みの母も該当しますが…ここでは、種族としての母を指します」

「種族ということは…」

「太陽———太陽神フレアルテ様への奉納になります。私もですが、この子たちも、皆太陽の一部から誕生しています」

「ええ。スメイラワースは太陽の精霊が作り出した都市。精霊と聞いた時点でそうなんじゃないかと思っていたわ」

「話が早くて助かります。それで、この服装の理由ですが…私たちは母を出迎える際と母を見送る際に、踊りを奉納する風習があるのです」


舞ったら綺麗そうなひらひらとした布もあるし、踊り子みたいだなとは思っていたけれど、本当に踊っていたとは。

けれど、そういう文化があるんだ。

パシフィカの故郷…スメイラワースは本編開始時点ではなぜか滅びていたし、こうして知れなかった文化を知ることができて、私自身凄くわくわくしている。


「そのひらひらとした布といい、街中にいる人と比べたら装飾品が多いわね。それにも何か意味があるの?」

「ええ。布は「風」を…金の装飾品は全て「光」を現しています。せっかくの機会です。踊りの意味も説明できたらと思うので、今夜の「見送りの舞」を、朝の「出迎えの舞」を見に来てくれると嬉しいです」

「じゃあ、パシフィカの代わりに俺が解説してやるよ!」

「私が説明する!」

「じゃあ二人にお願いするわね」

「任せろ!」

「任せて!」


子供たちは満足したのか、二人して遠くに走り去っていく。

パシフィカはそれを見送った後、再び鎧を身につけた。


「あら、もったいない。綺麗なのに隠しちゃうんだ」

「そう言って頂けるのは嬉しいのですが…仕事ということもありますし、なんならこの格好、恥ずかしいので…」

「ああ…」

「これでよし…と。ではアリア、巡回を再開しましょう」

「ええ」


鎧を着込んだパシフィカとのんびり歩きつつ、スメイラワースの巡回および観光を続けていく。

アルシアの彫刻は、アルシアという人物がかつて作り上げた二つの石像らしい。

この土地に存在する「ミョリス石」という普通の石より削りやすいものを使用しているそうだ。

砂の塊みたいなそれは削りやすいらしい。けれど、なぜか形が崩れにくく、こういった芸術作品の制作にはよく使われるそうな。


舞うような光景を模して作られたそれは「挨拶」を題材に作られたものだそうだ。

そしてそれは同時に…「友好の証」とも言っていた。

アルシアは他種族である太陽の精霊との友好の証として、太陽の精霊が行う舞を参考にした像を造ったということだろうか…?

友好の証がなんなのかは理解できないけれど、ここで過ごしている間にわかると思う。そう信じていたい


それからも色々な場所を回り続けていると、私とパシフィカは巡回の終着点———大広場にやってきていた。


「あ、さっきの姉ちゃんだ。こっちだ!」

「ここ、見やすい場所確保しておいたよ!」

「アリア、私は今から見送りの舞の奉納へ向かいます。子供たちと共に過ごしていてください」

「ええ。楽しみにしているわ」

「ありがとうございます。ではまた」


巡回の終着点はどうやら、舞の舞台だったらしい。


気がつけば日が落ちかける時間帯。

スメイラワースで一番太陽が長く見られる場所で、青空と星空の境界を背にパシフィカはひらひらとした布を舞わせ、舞を始めた。

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