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賢者様、貴方をパーティーから追放させてください!  作者: 鳥路
第2章:要塞都市「スメイラワース」/精霊たちの条約

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8:街を歩いて

ノワを部屋で寝かせた後、私は中央市街の露天エリアに足を運んでみた。


「…氷、高いわね」


氷だけじゃない。水とか、果物とかぼったくり価格。

砂漠地帯だし仕方はないけれど、この周辺はオアシスも多くて水源には困っていない。

だから汲みに行こうと思えば簡単に手に入れることができる。


けれど、なぜか徒歩圏内に存在する水源にはスメイラワースの騎士団が常駐し、立ち入りが規制されている状態のようだ。

盗み出す真似はできない。だから、普通に買う道しか残されていない。

…出費がかさむなぁ。

でも、仕方の無い出費。ここで出し惜しみをするわけにはいかない。


「すみません、お姉さん」

「あら、旅の方?どうしたの?」


お店の前に立っていたお姉さんに声をかける。

…小麦色に焼けた健康的な身体。

肌の露出が高い服を着ている影響で、目のやり場に困るけれど…ここでは当然のこと。気にしている人は誰もいない。


「連れが体調を悪くしてしまいまして、氷嚢を売っていただきたいのですが」

「ああ、それなら病院に行くといいよ。旅の方は暑さにやられて具合を悪くすることが多いからね。門を通った時に滞在許可証を貰っただろう?」

「ええ、確かに」


街をうろつくときは持ち歩くように言われていたから今も持っている。

珍しい代物だとは思う。

王都のような主要都市ならともかく、スメイラワースのような郊外の都市で滞在許可証の発行があるのは珍しい。


要塞都市。守りは堅いと受け取るべき…なのだろうか。

都市を囲む壁はともかく、オアシスの警備と滞在許可証はやり過ぎ感が否めない。

そこまでする必要があるほどに、周囲に出没する魔物が危険だったりするのだろうか。


「それを見せて事情を伝えたら、氷も水も提供して貰えるよ」

「情報ありがとうございます」

「いえいえ。ここじゃあ具合を悪くした旅人に水と氷は売らず提供するのが決まりだから。当然のことをしたまでだよ」

「そんな決まりがあるのですか?」

「ああ。だって、旅人は「どこから来たのか」はっきりできるだろう?」


お姉さんは笑っていたけれど、目は笑っていなかった。

この話は触れてはいけないものらしい。


「それもそうですね。そうだ、お姉さん。ついでに果物をいくつか頂けますか?」

「ああ。もちろんだ。特産品の「サボの実」をご所望かい?」

「サボの実は気になるのだけれど、それは病人も食べやすいものでしょうか…?」

「ああ、お連れさんが食べる分か。それなら値は張るけれど、りんごにしておくかい?王都周辺で病に罹った際、これを食べるんだろう?」

「ええ、王国では病に罹患した際、りんごをすりつぶしたものを混ぜたパン粥を頂くこともあります。けれど私の連れは帝国の出身で…」

「それならミカンか…残念ながら扱っていないね。この都市で輸入をしている奴もいないと聞くし、ここで手に入れるのは難しいと思う」


流石にりんごはともかく、ミカンは帝国からの輸入品になるから難しいか…。

一咲ちゃん、ミカンが好きだから食べさせてあげたかったけれど、今回は難しいみたい。


「そうですか…それなら、スメイラワースの病人食を教えてほしいです。どういうものなのでしょうか」

「それこそ、サボの実を使ったものさ。ココナッツミルクで炊いた米に、サボの実の蜜を混ぜる。ほんのり甘くて腹に溜まる。スメイラワースのココナッツミルクに加え、サボの実は栄養がたっぷりだ。すぐに元気になるよ。二人前に加えて、必要な材料をまとめて…銀貨一枚でどうだい?」


一つ分の価格で二つ分。材料もついてくると来た。お買い得としか言いようがない。

買わない理由はないだろう。


「ええ、買わせて頂きます。しかし、なぜ二人前?」

「病人食だけど、君も食べてみなよ。せっかくの機会だしね」

「ありがとうございます」


お姉さんに銀貨を渡し、引き換えで商品を受け取る。


「調理は宿屋の主人に相談してみな。金はかかるけど、作って貰えるから」

「色々とありがとうございました」

「いえいえ。滞在中はうちをご贔屓に!」

「勿論!次は連れも一緒に!」

「ああ!」


お姉さんの見送りを背に、今度は病院へと向かう。

そこでお姉さんに教わったとおり、滞在許可証を見せて事情を伝えると…氷と水を手渡された。

それから、熱中症の対処も軽く。

手厚い保護。旅人には優しい環境。

しかし…。


「あ、あの。水を…」

「また来たのか!お前にやる水はない!帰れ!」


ボロボロの布を纏ったお婆さんが病院の職員に水を求めるけれど、その願いは聞き入れられていない。

滞在許可証を出せば簡単に水が貰える旅人とは大違いだ。


…滞在許可証を出せば、また水は貰えるのよね。

私はお婆さんに受け取ったばかりの水を渡そうと歩み寄るが、それは固い何かに阻まれる。

見るだけでも暑苦しい鎧から伸びた手。

その手に、私の手が掴まれている。

———その鎧を私は見たことがある。


「…やめておいた方がいいですよ。一時の善意で、将来痛い目を見ることだってあるのですから」

「けれど」

「ここに滞在している間、スメイラワースに住まう者たちから怒りを買うとしても?」

「…そんな重大な問題なの?」

「それがこの都市に根付く問題です。一時的にしかスメイラワースを見ない旅人あたたたちには、理解されない側面とも言えるでしょう」


鎧越しでも女性か男性かわからない中性的な声。

———出会いは、いつでも突然なもの。

鎧の騎士は、兜のバイザーをあげて、顔を見えるようにしてくれる。

白髪の赤目。中性的な容姿を持つこの人物こそ————私がこの都市で会いたかった存在。


「申し遅れました。私はパシフィカ・グラウゴス。スメイラワース陽光の騎士団に所属している巡回騎士です」

「…パシフィカ」


予想外のところで出てきたスメイラワースに住まう勇者パーティーに属することになる最後の仲間。

パシフィカと私は、想像もしていなかったところで出会ってしまった。

一咲ちゃんがいない、絶好の環境で———!


「申し訳ないわ。私はアリア・イレイス。ここに来たばかりで事情をよく知らなかったの。引き留めてくれてありがとう」

「いえ。お気になさらず。しかし、実際に水をあげようとする人が現れるとは」

「そうなの?」

「ええ。見て見ぬふりをする人が半分。違和感を覚える人も半分。そこから行動に出たのは…実のところ、貴方が初めてです」

「なるほど。しかし、なぜあのお婆さんに水をあげてはいけないの?今にでも脱水症状で倒れそうなのに」

「決まり、なんですよ」

「決まり?」


商人のお姉さんが、水と氷を買い求める旅人が来たら病院に誘導する決まりを持つように、他にも決まりが存在しているようだ

それも、スメイラワース全体で共有している決まりが。


「あれは、スメイラワースに忍び込んだ存在です。決して住民ではありません」

「…?」

「スメイラワースの近くに、異分子の集落があるのです。スメイラワースの壁を取り払うべきだと、意味のわからないことを告げる連中でしてね。あれはそこに属しています」

「これまた危険が進言をする存在がいるのね…」

「ええ。そういう「不法滞在者」には、何も施しをしてはいけない。スメイラワースにはそんな決まりがあるのです。アリアは旅人なので厳罰には処されないかと思いますが、住民は幇助罪で捕らえられ、鞭打ちの刑を受けるほどの重罪です」

「そんな…」

「誰かに手を差し伸べようと思えた貴方は優しい人。だけどここでは命取り。無自覚で罪を犯す前に止められてよかったです」

「本当。貴方がいてくれて良かったわ、パシフィカ。ありがとう」


私たちみたいな腕に覚えがある旅人ならともかく、一般市民や子供には大きな被害を生みかねない存在なのに。

どうして「守り」を取り除こうなんて…。


これこそが、スメイラワースに根付く最大の問題であり、私たちが新たに巻き込まれる問題。

この時点の私はまだ、その事実に気がついていない。

おまけ「賢者様はおいくつですか」


アリア「今の私は15歳」

永羽(前世も今世も享年が16歳になりそうだけど…)

ノワ「私は17歳だね。まあ、本当に17歳なのかは定かではないけれど」

一咲(転生関係でノワは今15歳だったということを知ってしまったのは黙っておこう)


ミリア「私は18歳ね」

パシフィカ「私は200歳を越えていますが…人間で言うと17歳ぐらいだったりしますよ」

エミリー「私はノワ・エイルシュタットと同級生でしたからね。お察しの通り16歳です。誕生日がまだな関係ですから!次で17歳!」

ノワ「身長はアリア以下なのにね、エ…エニーさん?」

エミリー「エミリーです!」

ノワ「てかミリアはガチの最年長だったんだね。本当にババ」

ミリア「これ以上敵を増やしたくないなら、口を閉じなさい」


譲「「僕」は享年22歳だね」

時雨「私は享年17歳です。霧雨さんと二番弟子とは、産まれた年が同じなんですよ」

一咲「時雨さんタメだったの?敬語使って損した」

永羽「一咲ちゃん!?」


おまけおわり

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