38:僕と私の「最初の相棒」
とんでもない魔道具を与えてきた師匠達に文句を言い終えた私は、ミリアとパシフィカが盛ってきてくれたらしい朝食にありつく
「で、師匠。なんでデカくなっているんです?」
「あ、確かに。パシフィカぐらいになっているな」
『優梨カウンセリングを受けたらここまで成長しました!』
「さくらレビューのテンプレ構文ありがとうごぜーやーす!で、本当のところは?」
『だから優梨カウンセリング』
「嘘吐け!そんなことで身長が伸びたら兄弟子だってカウンセリング受けてるし!葉桜さんはもっと身長伸びてるわい!」
『君、魔力暴走で白目剝いていたとは思えないぐらいに元気だね』
「何か魔力がいつも以上にみなぎっている気がしてね!・・・あれ、どしたの永羽。なんで申し訳なさそうに目を逸らしてんの?」
「あー。いやー。その〜感情、籠もったのかなって」
もしかしなくても、永羽が私に魔力を・・・!?はわわ!
「なるほど。愛の力だね!やっほう!私永羽に愛されちゃってるぅ〜!」
「・・・そういうことにしておいた方が、あいつにとっては幸せだよな」
「こればかりはお姉ちゃんと同意見・・・」
「私は、何も知らないからね?」
そこ三人。妙に不穏な空気を出さないでよ
それではまるで永羽が義務的に私へ魔力を渡したみたいになるだろ
「そんなことないよね、永羽。これは愛情100%な」
「・・・ごめん」
「事実なの!?義務感なの!?そこに愛はない感じ!?」
「そ、それは違う!絶対助ける気持ちで!魔力の譲渡を行ったのは事実だから!でもね!」
「でも・・・?」
「・・・一咲自慢の「山」には、恨みを抱きたい時があるの。わかるでしょ?」
「・・・すみません」
何も悪くないけれど、こればかりは謝るしかない
永羽は思えばこの身体もアリアの身体もまな板。地平線と言っても過言ではない
ずっと気にしているんだよなぁ。私の相棒は
そんなに欲しいの?これ
こんなものない方がいいのに。重いし肩こるし
永羽はこれがない分、身体の線がとっても綺麗というか芸術というか、もう神の領域に達していると私は思うんだけどな
・・・持つ者に対して並々ならぬ恨みがあるから、この話題にはなるべく触れるべきではないな
本人に言ったら不機嫌になるのかなぁ
・・・けれど、綺麗だって事ぐらいは伝えたいんだけどな
まあ、機会はいくらでもあるだろう
何度だって伝えられる。私達はこれからも一緒なのだから
けれど、伝えなければいけない時間と事象は必ず存在しているし、その時は必ずやってくる
「ご主人?」
「あ〜。ヴェルさん?具合はいかがで?」
「ご主人よりマシ」
「あはは・・・そうだよね」
「・・・ご主人というか、ご主人「達」の隠し事、さっき伝えられたから安心して」
「・・・マジで聞いたの?」
「うん。最悪。自分の運命を呪った」
この世の終わりを体現したような真っ黒な目で告げる姿を見る限り、師匠の娘の魂がなんやかんやでヴェルになったことは伝えられたらしい
一体誰が伝えたんだ?
「それ、誰から聞いたの?」
「魔法使い本人」
「師匠直々とか更にダメージでかそ〜」
師匠にもダメージ入ってそ〜
もしかしなくても、地面にできた謎のサークルって・・・
師匠の服も泥だらけだし間違いないだろう
こいつら、自分で事実を告発した後・・・地面で悶えてやがる
ヴェルは幸い拘束魔法でいもむしをやっているから、泥が拘束魔法に付着している
・・・しかし、この拘束魔法は師匠がかけた代物だよな
「ヴェル」
「なあに?」
「・・・よく動けるね」
「お姉ちゃんからも言われた〜」
師匠が出す拘束魔法は魔力を流し込んだ極太ワイヤーの形状だ
私の触手より柔軟性はないが耐久性は高く、ヴェルほどの悪魔でも問題なく拘束できる代物
本来ならがっちり拘束するはずのそれで芋虫のように動き回れる時点で既におかしい
でもまあ、ここまでできるってことは私が心配するほど、彼女はもう衰弱していないらしい
「ヴェル」
「なあに?」
「後で落ち着いて話す時間、貰っていい?」
「ん」
「じゃあ、師匠。とりあえず拘束魔法を・・・」
『解かないよ。依代の修理をするまではそのまま』
「「いもむしけいぞく〜!」」
『ん〜。君、なかなか凄まじい壊し方をしてくれたね。細かいパーツがぐちゃぐちゃになって・・・時間遡行をピンポイントでパーツにかけるのが滅茶苦茶難しい』
「あの、先生。時間遡行魔法を纏めてかけるのはダメなんですか?」
『そこそこの大きさなら問題なくかけられる魔法なんだけど、こんな拡大鏡で見ないと全然分からないような小さいパーツだと上手くかからないんだ。よし』
師匠は魔法の発動を中断し、周囲を見渡してから・・・息を吸い込む
そして
『ちはやー』
「呼ばれた気がして」
「「来るの!?」」
「お、俺があれやっても来てくれないのに・・・」
情けない声で千早さんを呼ぶと、すぐ近くにいたのか、猛ダッシュで来たかは不明だが、千早さんが師匠の隣にやってくる
・・・師匠が小さな声でも自分を呼びさえしたらやって来るのか、怖いなこの人
『千早。目を貸してくれるかな』
「いいわよ。この細かいパーツを見たらいいのね。背中、抱きつくけど大丈夫?吐かない?」
『問題ない。よろしく』
「はーい」
千早さんは師匠の霊体に抱きついた後、指先を師匠の目元に触れさせる
イエローグリーンの魔法陣を足下に描いた後、師匠の目が千早さんと同じ目の色に染まった
「・・・あの、紅葉さん。千早さんと先生は何をされているんです?」
「ああ。ミリアも来たのか。あれが千早の視界共有。千早は魔力操作が下手な部類だから、ああして密着しないと対象に目を貸せないんだ」
「師匠、大丈夫なんですか?あれ絶対嘔吐する奴でしょ?」
「大丈夫。デカくなったついでに触れられても吐かなくなったって」
「へー。しかし、二ノ宮さんとしては複雑では?」
「まあ、複雑ではあるけれど・・・あいつら昔からあんな感じだぞ。譲が吐くようになってからはやめたけどさ」
「昔から?」
「ああ。元々、譲と千早は小学校が同じなんだ。譲は俺より千早と出会った時の方が早いし、千早も俺じゃなくて譲と出会った時の方が早い。水さんの一件も、あいつら二人で解決している。言ってしまえば、譲と千早が最初の相棒同士なんだ」
水さんが死んだ事件を解決したのは、十二歳の師匠と千早さんだと聞いていた
師匠と一緒にいる二人の能力者は、その事件に噛んではいない
この二人が最初に手を組んで、事件を解決した相棒同士なのだ
「で、その相棒は解散して・・・」
「俺が譲の仕事上の相棒、千早の人生の相棒になりました!」
「「「ぱしぱしぱしぱし・・・」」」
「・・・お前ら、拍手音いつもそれだよな」
「けれど、こうしてみると魔法使いと千早がいちゃついてるようにしか見えない」
「まあ、そうだな。俺もそう思う」
「浮気で処す?魔法使い処すの手伝うよ?」
「処さねえよ?事情はわかってるし。俺もそこまで心が狭いわけじゃないし」
隙あらば師匠に手をかけようとするヴェルを私とミリアは宥めつつ、二ノ宮さんの話に耳を傾ける
ぼんやりとした目で二人の姿を見守る二ノ宮さんは、どこか嬉しげだった
相手が相手とはいえ、親友が難点を克服し・・・かつての姿を取り戻している姿は彼的には嬉しいものなのだろうか
でも、彼は寂しげな目を浮かべてから・・・二人から目を逸らし、一足早くテントから出て行ってしまった
ヴェルの依代が直ったのはその一時間後
元通りになったことを確認した師匠と千早さんは、拘束魔法を解いてから直ったばかりの依代を私に預け・・・紅葉さんを追いかけに行ってしまった
「とりあえずヴェル。戻る?」
「うん」
悪魔体から依代の身体に戻ったヴェルは動きを軽く確認し、元通りになっていることを報告してくれる
「問題ない?」
「うん。でも久々だから、ちょっと慣らしたい。二人でお散歩しよ、ご主人」
「いいよ。じゃあ、私も身体を動かすついでにお散歩してくるよ」
「無理しないようにね」
「何かあったらすぐに連絡してね、一咲。ヴェル」
「気をつけろよ」
五人の見送りを受けて、私達は散歩に出かける
今まで見たいに無茶ばかりの鬼ごっこではない。息抜きを兼ねた散歩だ
勿論、ただ歩くだけでは終わらないが




