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賢者様、貴方をパーティーから追放させてください!  作者: 鳥路
第7章下:鈴海第零区域/福音の鐘は星の光と瞬く

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9:私の新しい杖

師匠の案内で最深部に辿り着いた私達は、それとご対面することになる

深い地の底でも、一応地上と繋がっているからか

天井からは光が差し・・・その先に、彼女は静かに眠っていた


「・・・時雨さんでいいんだよね」

『そうだよ。彼女はここに来ていないのかな』

「いや、来てるよ。呼ぼうか?」

『自分の死体を見るのはきついだろうから、隠れているのならそのままにしておいてあげて』

「・・・わかった」


箱庭を持つ夜雲さんに目配せをして、彼に内部へ合図を送って貰う

これで現状は向こうにも伝わっているはずだ


「落下したとは思えないな・・・こんな、座ったまま」

『灰にほんの少しだけ残っていた僕の魔力が保護したんだろうね』


師匠はそれから虚詠唱で魔法を使い、小さな容器を作り上げ・・・時雨さんの遺骨を納めてくれる


『これでよし。後は、和夜の元へ帰してあげてほしい』

「・・・預かるわ。それから、一咲ちゃん。お願いできる?」

「分かってますよ」


先程話していたとおり、吸引魔法で師匠の遺灰を回収する仕事は私に

しかし・・・


「誰か何か容器持ってません?」

「ないな」

「ないわね」

「俺も・・・あ、空のペットボトルならある」

「今から人の遺灰を入れるって道具にそれを選びます!?」


やばい!師匠の目が死んだ魚のような目になっている!もう死んでるけど!

けれど師匠に甘えて時雨さんの容器と同じものを作ってくださいとか無理だし!

虚詠唱だから魔法パクるのも無理だし!どうしろってんだ!


『あ、ええっと・・・一咲さん。容器の作り方おし』

「そんな急に言われてもねぇ・・・あ、ベリえもん。何かある?」

「朝食用にヴェルが持ち歩いていたジャムの容器(残量:微)ならあるぞ。ペットボトルよりはマシだが、今ここで食べるか捨てるかしないと」

『じゃっ!?』

「私が責任持って食べるよ。それならヴェルもふてくされるだけで済むだろうし」

『むっ!?』


適当なスプーンをベリアに出してもらい、私は残っていたそれを一掬い

口の中にイチゴの甘みを感じながら、魔法で瓶を洗浄

後は無詠唱で吸引魔法を使うだけでお仕事は完了だ


「ふう、これでよし」

『・・・』

「なんでそんなに怒ってるの師匠!私なんかしちゃいました!?」

『瓶に入れるのは構わないけど、せめてそのラベルを剥がしてくれるかな』

「えー。たかがラベルじゃないですか〜!そんなに嫌ですか?「とれたてふれっしゅ100%!べりべりじゃむじゃむ〜鈴海限定特産ハイイロイチゴ〜」・・・ただのイチゴジャムのラベルですよ?」

『・・・なんかやだ』


「我が儘ですねぇ。ほら、ラベル剥がしてやりましたから」

『・・・それならまだいいかも』


我が儘な師匠の後ろで、五人が必死に息を押し殺しながら笑う理由はさっぱり分からない

師匠が怒ったのが面白いのかね。そういう姿も見せなかっただろうし、当然と言えば当然かな


『それに、よく僕の遺灰だけ吸引できたね』

「修行の成果ですよ。私とて、この半年間何もしていなかった訳ではありませんし」

『そうかい。じゃあ、あの子も君を受け入れることができるのではないかな』

「あのこ、ですか?」


師匠が指で示した先は、時雨さんの遺骨が存在した場所

そこには何か光るものが落ちている


「指輪・・・って、これ!」

『君用にカスタマイズを施している。約束の通りだ。持って行くといい』

「だから虚詠唱で魔法使っていたんですね、師匠」


私へリュミエールを渡すため、既にリュミエールを譲渡状態にしていた

ここに置いて、私用にカスタマイズをひたすら施していたのだろう

言ってしまえば、私用にカスタムしすぎて・・・師匠には使えない状態とも言えるかもしれない


「ありがとうございます。ええっと、杖の指輪って」

「左手の中指につけるのが基本だね」

「なんで?」

「杖を顕現させたとき、手の真ん中に出現するから。持ちやすさ重視」

「・・・何かマジカル的な理由があるわけじゃないんですね」


指輪を左手中指に嵌めると、真ん中の魔石が照り輝く


「これでいいのかな」

『問題ないよ。その杖はもう君の杖だ』

「遂に私がリュミエールを・・・」

『あはは。改造しすぎてリュミエールとはまた違ったものになってしまっていてね』

「効果的には?」

『問題ないよ。ただ、その子はもうリュミエールと呼べる代物ではない』


顕現させてご覧と促され、私は指示通りに杖を顕現させる

確か、現れろ〜とか考えるだけでいいんだよね


「わっ!」


杖を両手で支えながら、私は顕現したそれを見上げる

普段見ていたリュミエールとほとんど変わらないけれど、唯一変わっているのは魔石の部分

師匠が使用していた時は空のように澄んでいたそれは、今では深海のように青い魔石となっていた


「これって」

『僕が改造で魔力を込めすぎた影響か、青くなっちゃって』

「他にも色々機能がついたのなら・・・別物って意味も分かるけど」

『名前は君が決めるといい。ただ、リュミエール以外で頼むよ』

「う、うん」


杖に名前をつけるのは・・・初めてだ

にょきにょき草もそのままだし、仮の杖には全然名前をつけてないし

沢山の憧れを抱いて、やっと手にしたそれに名前までつける

とても、重いな


「まあ、今すぐでなくてもいいんじゃないか?」

「その時が来たら、ピンとくる名前が思いつくよ」

「そうだといいんだけど・・・」

『さて、これからどうしようかな。僕としては、このまま成仏をしても言いところなんだけど』

「成仏できるの!?」

『うん。僕の未練はもう分かっているからね。その気になればいつでも成仏できるよ』


流石に冗談かと思ったが、冗談では無いらしい

師匠はいつでも成仏できる

それは、そんなのは・・・


「どうしようかとか考える暇があるのなら、全員にお別れ参りでもしろ。唐突にいなくなったもんだから、ちゃんとお別れしたかったとか思う奴いるんだぞ。俺含めて」

「本当よ」

「一晩、いや一週間時間作れって。な?それぐらいできるだろ?」

『えぇ・・・仕方ないな』


三人に話の軸を持って行かれる横で、紅葉さんが小さくピースサイン

・・・時間、作ってくれたのか

一週間もあれば、全員師匠に対する未練を断ち切る時間ができるだろう

私も勿論だが・・・


「・・・一週間もあれば、何かできるよな」


隣にいるベリアもまた、この一週間を大事なものにしなければならない


「とりあえず、外に出ようぜ」

「そうですね。ここから舞光で階段を作ります。地上に繋がりますよね、椎名さん」

『うん。じゃあ、お願いできるかな。永羽さん』

「勿論です。見ていてくださいね」


永羽が舞光で階段を作り、先導する永羽。それから夜雲さん、紅葉さんが千早さんを支えつつ歩き・・・その後ろを私とベリアがついていく


「そうそう、椎名さん」

『なにかな』

「周囲に力を借りて、春風柊ぶち殺しておきましたので」

『・・・え?』

「貴方の名前と生前の目的を出したら一発でしたよ。貴方は人に頼ることを覚えましょう?第二部隊は貴方に寄り添ってくれる人ばかりなのですから」

『・・・嫌味かい?』

「ちょっとだけ。それから、入院費用のことありがとうございました」


『別にいいよ。使い道に困っていたし。君の延命に僕のお金が役立つのならお金も本望だろうさ』

「それから、葬儀やお墓のことも」

『え、あのクソ親やっぱり葬儀代もお墓代も払ってないの?』

「お恥ずかしながら。けれど、忌明法要の時にボロが出たみたいで・・・弟が両親の元を離れられるきっかけになりました」

『じゃあ君は弟さんに会ったのかい?』

「はい。私を家族だと思ってくれる大事な弟に」

『それはよかった。彼との出会いは君にいい影響を与えたようだね』

「・・・弟に与えられたかどうかはわかりませんけど」


『何かあったか、聞いていいのかい?』

「椎名さんで言えば、野々原さんみたいな存在と化していると言えば」

『・・・何となく理解したよ。とんでもない成長を遂げたようだね』

「将来弟が結婚できるのか既に心配です。無用な心配でしょうか」

『あはは・・・陽雪はああ見えて彼女いるけど、永翔君は一生君を崇めていそうな気さえするのは何故だろうね』


兄弟子彼女いたのかよ・・・と衝撃情報を背後で聞きつつ、剣の階段を歩いて行く

そういえば、エミリーとパシフィカはここに到着しただろうか

ヴェルとミリアは、無事だろうか・・・

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