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賢者様、貴方をパーティーから追放させてください!  作者: 鳥路
第7章中:「鈴海」/福音と幸福の断片

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332/390

39:私は、貴方とは違う道を歩くのだから

二十年という時が経過した廃れた空間

私とベリアは過去と照らし合わせてため息を吐く中、ヴェルはこういう場所が初めてらしく、テンションを上げながら玄関を駆けていく


「おい、ヴェル。流石にここは靴を」

「私、鈴海の常識知ってる。玄関では靴脱ぐ!まもっだぁ!」


案の定、飛び出ていた何かを踏み抜いたらしい

いつもはぼんやりしている彼女から出たとは思えない程の声量が家の中に響き渡ってしまう


「ヴェル、だいじょ・・・うぉっ、なかなかエグいことに」

「貫通したぁ・・・なにこれ罠ぁ・・・?」

「手入れはある程度されているようですが・・・誰も住んでいない分、ボロボロになっているようです。安全の為にも靴は脱がないで行きましょう」

「だな。一咲、回復頼めるか?」

「もうやった」

「完治。ぶいぶい」

「早いですねぇ・・・でも遅いです」

「「「「ぎゃー!」」」」


ヴェルを完治させた矢先、玄関先で置物と化していた曾お婆ちゃんに遭遇する

時渡りをしてから全然見かけないなと思ったら、こんなところに居着いていたらしい


「なんでここに鴇宮さんが」

「・・・曾お婆ちゃん、ホームレスは嫌だからって、他人の家に居着くのはヤバいと思うよ。どうやって入ったの?」


確かにこの家には鍵がかかっていた。合鍵は一つだけ

入る手段はどこかを壊す程度しかないのだが・・・まさか


「安心してください。私の万年筆は何でもできるんです」

「万年筆でピッキングとかやめてくれる?それ贈った曾お爺ちゃんが泣くよ?」

「嫌ですね。ちゃんと附属の仕込み針でやりましたよ」

「昭和時代にそんな細かい細工が施された万年筆があってたまるかよ」

「と、言うのは冗談で、実は時渡り中に椎名久遠から鍵を預かったんです。おかげで居処に困りませんでした」


居処に困らなかったとは言うけれど、大人しく私達のうち誰かと一緒に行動したらよかったのではないだろうか

まあ、紅葉さんと優梨さんのところはともかくとして・・・

ベリアとエミリーのところは


「そうでしたかー」

「大変だったなー」


残念。二人とも目を逸らしているあたり「引き取ってくれたらよかったのに」という言及が飛んでこないようにしている

あえて声をかけなかったらしい

エミリーはバイトという名の修練、ベリアは魔具技師認定試験に向けて半年間多忙な生活を送っていた

これに振り回されるのは拒否したかったんだろうな


だからと言って私達のところに来る気は曾お婆ちゃん側がなかったのだろう

曾お婆ちゃんから見たら私はひ孫だし、一緒に暮らすのは自分より年上の孫だ

身内と一緒は流石に気まずそうだ


「とりあえず、見所紹介しておきますね」

「なんで見所紹介してくれんの?」

「一応、人が死んだ場所ですからね。ビビって躊躇してなどなど繰り返していたら日が暮れそうなので。ついてきてください」


曾お婆ちゃんは腰掛けていた椅子・・・台座か?それを脇に抱えた後、私達を先導してくれるらしい

探索はもう済んでいるのだろう。彼女は真っ先に二階へ案内を始めた


「リビングはいいの?」

「家具類は当時のままですが「なにかあった」ものに関しては撤去されています。リビングには何もありませんよ」

「・・・そう」

「ちなみにですが、二階の現場にも何もありません」

「じゃあ、曾お婆ちゃんは何を見せようとしているわけ?」

「貴方が師匠に運ぶべき手紙と、その光景です」


二階に登りきった曾お婆ちゃんは、正面の扉を開いて私をその中に案内してくれる


『・・・』

「・・・もけっ」


目の前の光景に夢中で、舞園が見つけたそれの存在には・・・気がつけていない


・・


「・・・ここは、子供部屋?」

「ええ。貴方の師匠が使う予定だった部屋です。両親と、事件後の現場に駆け付けた綾波伊奈帆以外は立ち入ったことはありません」


時が止まり、誇りが積もったその空間には未来が詰まっていた

ハンガーに掛けられた制服に指定鞄

教科書の山は折り目すら存在せず、学習机だって傷どころか汚れ一つない

机の上には手紙が置かれている。何だろうこれ。持ち帰っとこ


「・・・師匠は、この部屋見たことないんだ」

「記録ではそうですね。隣の部屋のクローゼット・・・そこで椎名愁一の結界に包まれた状態で衰弱していたところを発見されています」

「記録見たの?」

「忍び込むぐらい造作もありません」

「大社の面々には姿見えてるんだよね?」

「舞園弟たちと同様ですよ。認識共有やその手の能力がない限り私は認識できないままです」


じゃあ、見えるとしたら葉桜さんぐらいってことか

この世界でも曾お婆ちゃんは好き放題しているらしい。らしいと言えばらしいな


「・・・あの夫婦は思ったよりも、惨たらしい殺し方を息子の前でされていますよ。だからあまり本人の前では触れてやらないように」

「師匠、全部見たの?」

「全部見せられたの間違いだなぁ」


この場にはいない男性の声に、私は振り向かずに杖を静かに構える

来るとは思っていた

むしろ、こいつ以外に来ることはないと


「椎名の血は、貴方にとって不都合だったのかな」

「いいや。むしろ喉から手が出るほど欲しい代物なんだ。あの血は世界を書き換える。特に、シルヴィアと瓜二つであるお前の師匠は」

「記憶を代償に、世界を書き換えさせる気だったの?」

「記憶なんざどうでもいいよ。記憶を代償にしたところで変えられるのはほんの少しだ。根幹を変えるのには到底足りない」

「・・・世界を根幹から書き換える。それがあんたの目的かな。春風柊」

「ああ。「世界を構成する魔法」新たな世界の再起動魔力導線リブード・ライン俺が恐れた、二十年前の事件を起こした理由だ」

「誰もが欲しがりそうな魔法だね。自分好みに世界を作り替える魔法とかさ」

「欲しかねぇよ、あんな魔法」


師匠がかつてぼんやりと呟いた世界構成の魔法。まさかここで聞くことになるとは思っていなかった

シルヴィアが作り上げ、魔力器官を・・・命を対価にして、世界の在り方を根本的に変える魔法

その気になれば魔法がない世界とかも作り出せるらしい

しかしこれはシルヴィアと彼の生まれ変わりでないと起動できないらしい

シルヴィア以外であれば、起動権を持つのは師匠だけ

理由は何にせよ、あの男は世界構成が邪魔だからあの事件を引き起こした

師匠が苦しむ原因を作り上げたのだ


「なるほどね。つまり、これは罪の告発ってことでいいのかな」

「そうだな」

「一つ聞かせてくれるかな。どうして二人を師匠の前で殺したの?」

「愁一はそうだな。下手な動きをしたら同じことをするっていう脅し。久遠はあれだな。あいつに子供作られると困るんだよ。だから性的な事に拒絶感を生むように仕込んだ」

「目論見通りに・・・?」

「そう。世界構成魔法は椎名じゃないと起動できない。あいつは起動できただろうけど、身体が脆いから命の保証はできない。しかし、その後に魔力を十分に供給し・・・生還できる魔法使いが、複数回世界構成を使用できる魔法使いが生まれたらどうする?」

「・・・その未来を潰すために、人にトラウマを植え付けた」

「ああ」


簡潔な返事の後、私は魔弾を奴にぶち込む

煙はなるべく出さないように。隠している方の杖で当たるかどうかわからない毒をばらまくが、おそらくは無駄だ


「危ないねぇ。ま、最期のあがきとして受け取っておいてやる」

「なっ・・・」

「冥土の土産だ。真実に辿り着いた事と、お前のせいで死んだ事を、お前の師匠に語ってこ・・・」


春風柊が星紋と思われる櫛を構えた瞬間、その手がゆっくりと落ちていく

落ちた手首とその先には、光の剣

そして私の前には、薄墨の髪を靡かせた女の子


「語らせません。今はまだ・・・彼女をあの人の元へ送る訳にはいかない」

「・・・永羽ちゃん」

「弟子を狙えば君が出てくるわけ?おかしいな・・・「舞鳥」」

「彼女は私の親友で、大事な人です。傷つけようとするなら、容赦はしません」

「お前も同じ目に遭いたいのか」

「いいえ。私は彼と異なる道を歩みますから、同じ目になんて遭いません」


永羽ちゃんは机の上に一瞬目を向けた後、舞光を舞わせて天井を突き破る

それが合図だったのだろう。家に向かって様々な能力や魔法がぶつかり、外壁が外れて私達は宙へ投げ出される


「私は、彼とは異なる道を歩みます」

「守りたいものがあれば、守り抜きますし」

「憎むべき対象がいるのならば・・・」


「よお、柊。こんなところでまた殺人未遂か?」

「この瞬間を待っていましたのよ、春風「元」司令官?」

「光輝、確保命令出たか?」

「・・・殺していいってさ。手加減するなよ、お前ら!」


「・・・同じ志をもつ人に相談し、共に戦うことを願います。一人で歩む真似はしません」


私を抱きかかえたまま、宙にばらまかれた破片を足場にして彼女は舞う

私なんて重りがないかのように、軽々舞う彼女は光の剣を無数に出し、同じく宙に浮いている春風柊に向かってそれを全て投下した


「改めて、鈴海大社特殊戦闘課第二部隊「舞鳥」霧雨永羽。華麗に舞い踊り、守るべき存在をこの手で守ってみせます」


貫いたそれは力なく落下し、追撃と言わんばかりに周囲を囲んでいた能力者達に蹂躙される

あの失血だ。どう足掻いても・・・


・・・思ったより、あっけない終わり方だったな。師匠の復讐対象

もしも彼が一人だけで復讐を果たそうとするのではなく、こうして信頼する誰かの手を借りることができていたら

・・・師匠の未来は、変わっていただろうか

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