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賢者様、貴方をパーティーから追放させてください!  作者: 鳥路
第7章中:「鈴海」/福音と幸福の断片

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16:愁いの久遠から

ひ孫ちゃんとべっさんがお風呂に入っている間

私は居間を抜け出して、未来の彼女が指定した場所へ向かいます


二階に上がって、正面の部屋

そこにあるのは子供部屋

私より一回り小さい存在が使うのに適した道具が詰め込まれたそこの机

その上に・・・回収しなければいけないものが


「何をしているのかしら」

「・・・げぇ」

「姿が見えないと思ったら、こんなところで家捜し?いい趣味してるわね」


例の物に手を触れようとした瞬間、背後にいた存在から声をかけられる

いやはや。背後を取られてしまうとは

私も現役なはずなのに感覚が鈍っていたようです


「こ、これはぁ・・・」

「大丈夫よ、鴇宮紫苑。私が貴方にこうするよう指示をしたのでしょう?」

「・・・なぜそれを」

「流奏で色々な未来を見たの」

「そんなこともできるのですね、その能力」

「ええ。数多の未来を覗いて、何が最善か・・・あの子がここに帰ってこれる時間を探し続けた結果よ。貴方の存在は「副産物」と言うべきものかしらね」


けれどやりすぎちゃったみたいで、あの子が産まれる以前の記憶は無いのよね

椎名久遠は悲しそうに目を伏せながら、子供部屋に足を踏み入れ・・・私の側に立つ

そして手に取ろうとした手紙を颯爽と奪い取ってきた


「ここで回収したら駄目よ。言ったじゃない。「現代」で回収しなさいって」

「私からしたら今いる時間が現代ですよ」

「じゃあ二番弟子ちゃん達が到着した時間が現代とするわ。そこで回収して」

「残っているんですかぁ?」

「残っているはずよ。愁一に守らせているもの」

「・・・結界の能力ですか」


鈴海全土を包み込んでいるらしいそれは、一番弟子同様の強度を持つはずだ

だから結界で守るのならば心配はいらないのだが


「死後二十年でも現役でいられますかね」

「いられるわ。あの人の結界は、譲に対しては特別よ」

「特別」

「ええ。あの子が関わる結界は、あの子が信頼したものが外から触れるまで解除されないのよ。だから回収時には二番弟子ちゃんか、譲が信用していそうな人を連れて行ってね」

「ふぅん・・・」


いい反応をしてたし、ひ孫ちゃんに加えてべっさんと二ノ宮とやらを連れて行こう。きっと楽しいことになりそうだ


「愁一は体の一部を少しずつ削られながら、私は二人の前で穢されながら死ぬとわかっているもの。打てる手段は最大限に用意しているわ」

「・・・わかっているのなら、回避しては?」

「できるものならしたいわよ。けれどね、あの子があれ以上の大病を患うことなく天寿を全うできる時間がここしかないの。それだって、選んだ選択次第では貴方たちがいる時間・・・あの子が死んでしまう時間に辿り着いてしまう可能性の方が高いのだけれど」


それでもこれが、最善の選択肢だと彼女は言うのだろう

狂っている。自分の運命が、考えられる中で最悪の未来を辿るとわかっていても

この女は、息子一人を救うためにそんな運命さえも受け入れてくる


「どうして、そこまでできるのですか?」

「愛しているからよ。ただそれだけ」

「たとえ、側に入れなくても?成長を見守れなくても?」

「そうね。それは「強い未練」になりそうだわ。けれどそれが、私たちの最善なのでしょう?受け入れるほか無いわ」

「・・・彼を見捨てれば、貴方たちが長生きできるとしても?」

「ええ」


「・・・愛さえあれば、そこまでできるものなのですか?」

「人それぞれだからなんとも。けれど貴方もいつかわかるはずよ」

「そうですね。いつかの私は・・・わかるでしょうね」


何よりも、あの子が生きていたのならば

そのためにどんな犠牲でも払ってみせると・・・言ってしまう日が来るのかもしれない


「しかし、その能力で何もかも知っているということは」

「・・・色々と申し訳ない気分になったわね」

「ですよね」

「二番弟子さん・・・ああ、貴方のひ孫さんなんですよね」

「そこも把握しているとは。ええそうですよ。私のひ孫ちゃんです」

「譲の彼女じゃ無いわよね」

「現代でももうすぐ死ぬ身とはいえ、あいつとあんたと血縁関係になるのはちょっと嫌ですね・・・」

「あら、心外だわ」


性格の悪い魔法使いと、息子の為なら記憶をゴリゴリ削ってくる狂人と身内になんてなりたくない

ひ孫ちゃんは幸いにして永羽にご執心。師匠という点で彼に心は開いているでしょうが、そういう感情は一切抱いていない様子

それにひ孫ちゃん自身「師匠と身内とか嫌だし」と言いきっている側の人間ですからね!曾お婆ちゃん安心です!


「貴方の息子さんの彼女は貴方の夫を殺した男の子供ですよ。私に迷子防止ハーネスをつけて喜ぶような変態です。ご注意ください」

「その表現やめてくれる?子供に罪は無いから・・・。それに、迷子防止ハーネスが何なのかはわからないけれど、絶対に貴方が何かしでかしているでしょう?私にはわかるのよ。久遠さん何でも知ってるのよ」

「ちっ!」


これだから未来を知っている女は!色々とやりにくいではないですか!

まあいいでしょう。そろそろこの茶番も終わらせないといけませんからね


「・・・そろそろ、下に降りましょうか」

「そうね。二人がお風呂から上がってきちゃう。上に興味を惹かせるわけにはいかないの」

「どうして?」

「まだここを見られるわけにはいかないの。未完成なのよ、この部屋は」

「何か、足りないものでも?」

「ええ。この部屋が威力を発揮するのは・・・私達が死んだ後。生きている間じゃあ、インパクトが弱いわ」


意味がわからないというわけではない

このタイミングだろうが、現代に帰ろうが・・・この部屋をひ孫ちゃん達が見たら同じ印象を抱くはずだ

「へえ、師匠の両親は師匠の為にこんな部屋を用意してくれていたんだ。ご両親から愛されていたんだね」・・・とか


今であれば、その光景はひ孫ちゃん達の中に優しく降り積もるだろう

両親が生きている愛情に包まれた暖かな空間

帰りを待ちわびている両親の寂しげだけれど、どこか楽しそうな姿を隣に感じながら、一時を過ごせるはずだ


けれど、そこに夫妻の死というエッセンスが加われば・・・

部屋を見た印象は一気に変わる

夫妻はもうどこにもいない。あの日夫婦がどのようにしてこの部屋を作り上げていたのか感じることが出来ない

それに加え、これを見るべき人間もここには辿り着くことができない

愛情に包まれた空間には、知るべき人間も待つべき人間も辿り着けないのだ

これを悲劇と言わずして何というか


「・・・なかなかいい性格をしていますね、貴方」

「よく言われるし、死の間際でも言われたわ」

「でしょうね。ここまで計画的に物事を進めている女にはそうそう会えません」

「その女の計画に乗って色々と動いているのは誰かしら」

「私ですね。けれど、そうでもしないと私は成仏できません。そうでしょう?」


「ええ。貴方は私に協力して譲を成仏させて、二番弟子ちゃんの強化を行わなければならない。リュミエールがあの子の手に渡らなければ、あの子はこの先、生き残れないというか・・・飲まれるわ」

「・・・」

「そして貴方は二番弟子ちゃん達と物語の完結を目指し、あの子を救わなければならない」

「・・・ノワ」

「そう。ただそれは二番弟子ちゃんが模するノワ・エイルシュタットではないことは、わかっているわね」


わかっている。私が救わなければいけないのは

適切な終わりを与えなければいけないのは、未完の烙印を押してしまった彼女

ひ孫ちゃんではない、本来のノワ・エイルシュタット

ひ孫ちゃん達が「物語ノワ」と呼ぶ存在だ


「ええ。私が書き上げ、私を模した女」

「貴方は救える?貴方が最後に残してしまった「心を壊してしまった魔法使い」を」

「私一人では無理なので、ひ孫ちゃん達に知恵を借りますよ。私は誰かを頼れる女ですからね。貴方の息子とは違うんです」

「そう。なら、これで話はおしまいね。健闘を祈るわ、鴇宮紫苑」

「そちらこそ、せいぜいこれから待ち受ける地獄の中で悔いを残し・・・最後に猛威を振るいに来てくださいな、椎名久遠?」


階段を仲良く下り、ちょうど風呂上がりだったひ孫ちゃん達と合流する

それから久遠はひ孫ちゃんに「未来の息子に宛てた手紙」を手渡した

加えて、現代に戻ったら椎名家の二階に向かい、七歳の息子に宛てた手紙と戸村夏乃なる人物に預ける予定のノートを二冊回収してほしいとも


色々頼み終えた後、食事を用意してもらい・・・時刻は23時

愁一の手引きで「誰にも見つからずに飛び立てる」場所を紹介してもらい、結界が解かれる瞬間を待つことになった

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