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賢者様、貴方をパーティーから追放させてください!  作者: 鳥路
第7章上:「鈴海」/星の光と青鳥は君と共に

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25:ここでの思い出

その後、買い物を終えた私達は紅葉さんと優梨さんを経由して合流

葉桜さんが予め予約していた店で、食事を摂ることになった


「・・・私の希望は?」

「今度な」

「私、あのフードコートとやらに洒落込みたい」

「全種制覇する気だな?また今度にしてくれ」

「私クレープとやらだけは食べたかった!食べたかった!」

「移動時間がありますよね!一個だけ!一個だけ買ってくるからね、ヴェル!それで我慢しよ!?ね!?」

「8日!8日には大量に食えるよう手配してやるから!こんなところで駄々こねるな!恥ずかしい!」


おもちゃ売り場で泣き叫ぶ子供のように食べたいと駄々をこねるヴェルを私と葉桜さんが宥めつつ、目配せをして優梨さんに物を何でもいいからとりあえず買ってきて貰う


「もぐもぐ。優梨いいやつ」

「妹がすみません・・・」

「お気になさらず。私としては、食事だけに特化しているとはいえこの世界に興味を向けてくれていることに安心しましたわ。大体の異世界人は怖じ気づくものですから」

「確かに。普通はミリアとかエミリーの反応が普通だよなぁ・・・現地民にビビって、言語もわからなくてあたふたする」

「そうですわね。そんな感じです。永羽と一咲がいるとはいえ・・・貴方たちの適応力には驚かされますわ」

「あたしは記憶が、パシフィカはある程度情報を貰っていたからな。ヴェルは知らん」

「もっもっ」


確かに、情報も何もなく言語も魔法なしでは通らない

そんなヴェルは割と早くこの環境に適応しているように見えるが・・・

実際のところ、どうなのだろうか


「どうしたの、ご主人」

「いや、確かにベリアの言うとおり・・・環境に馴染んでるなぁと思って」

「んー・・・私も一応、困惑している」

「そうだったんだ。私、ヴェルはいつも通りだから大丈夫だと思ってたけど・・・何か不安な事とかあるなら」

「この世界のご飯は美味しい。元の世界では都市名物しか食えない中、ここでは一つの施設で色々な種類の食事が摂れる。こんな便利な施設あっていいの?超困惑」

「困惑のベクトルが違うね」


「うん。私はこの世界、楽しんでいる方だと思う。悪魔的な性質で「楽しいことが好き」って言うのもあるけど、私は知れて嬉しいなぁって気持ちと、もっと知りたいなぁって気持ちが強い」

「どうして?」

「どうしてって、ここはご主人達の出身地でしょ?」

「まあ、そうだね」

「ご主人と永羽が育った場所、見る機会があるとは思わなかったから。せっかくの機会だし、色々見て回りたい。二人がどういう環境で、どういう風に過ごしていたのか・・・半年だけど、ちゃんと知りたいなと。それに・・・」


ふと、ヴェルは永羽ちゃんの方を一瞥する

彼女は視線を向けられた事すら気がつかないまま、エミリーと二人、パシフィカを囲んで何を買ったのか聞いていた

そんな彼女に向ける視線は、ヴェルにしてはぼんやりというか、寂しげだった


「ご主人は忘れているとしても、いい思い出の方が多かったと思う」

「・・・永羽は、ここでの「いい思い出」って言うのがご主人と魔法使い達と出会った事以外ないでしょう?」

「知ってるの?」

「出会った時の私とお姉ちゃん、まずは永羽を・・・アリアを狙ったんだよ。お姉ちゃんが読み取って、私にも共有されているから知っている」


ミドガルのアリア襲撃時のことだろう

本人達は何も言わないが、まさかあの一件のことを知られているとは・・・

まあ、師匠の記憶があるからベリアも知っている前提でいたけれど、ヴェルまで把握していたとは・・・


「半年だけだけど、時間があるのなら永羽に楽しい思い出を作ってほしい。私達がいて、永羽が生前信頼していた人がいる大切な記憶を、作って欲しいから」

「・・・」

「だから、私が初めてに臆する時間なんて不要。そんな暇があるのなら、ご主人と永羽の手を引いて挑戦あるのみだと思う」


だから彼女は、初めてにも臆する様子を見せない

どこまでも彼女は飄々としているけれど・・・不安を隠し、私達の手を引いてくれる

私達を、気遣いながら


「・・・凄い悪魔を隷属しちゃってるね、私」

「私はそこまで凄くない。そう思わせるぐらい大好きな時間を作ったご主人と永羽が凄い。言ったでしょう?私はこの場所が心地いいと思っているから、守りたいって」

「そうだね、言ったね」

「ご飯も同じぐらい好きだから我が儘になるけれど」

「それが結構厄介だよね」

「そういう部分も、私の一部として愛してほしい」

「わかったよ」

「うん。流石はご主人、私が見込んだ女の子だね」


一瞬だけ、ほんの一瞬だけ

年相応に、年長者として私達を安心させるように微笑んだ彼女の背に、白い羽が見えた気がした

福音書の守り手。それに登場する天使の名を持つ彼女

・・・まさか、いや

今の姿が仮初めとか、そういうものではないよな?


「もぐ。とりあえずおやつタイムも終わり。真面目な私も終わり。ごちそうさま。美味しかった」

「切り替え早いね」


考える暇を与えることなく、いつもの調子に戻ったヴェルはマジックポケットの中に包み紙を収納する

ゴミは帰ってから捨てるらしい


「でもまだ物足りない。いうわけだからおかわり欲しいな、ミリアママ」

「へっ!?なんで私が・・・それに私は貴方のママじゃないわよ。その呼び方やめてくれる?」

「ミリアママのケチ」

「誰がいつ貴方のお母さんになったのよ・・・」

「でも、最近のミリアは保護者気質というか、ママみが増した気がするね。何でかな」

「そんなことないわよ。自分の事で必死なのに・・・他人の世話をしている暇があるわけないでしょう?ほらヴェル。口にクリームついてるわよ」

「舐め取っていいよ」

「そんなはしたないことするわけないじゃない・・・ほら、ハンカチで拭うから。動かないでよ」

「んー」


頬を差し出し、されるがままミリアにクリームを拭って貰う姿はただの子供で・・・

さっきまで格好いいことを言っていた存在の姿とは到底重ならなかった

けれど、こういう一面も「ヴェルらしい」ものなんだろうな


「一咲、駄々っ子は食べ終わったか?」

「はい。今ママに口元のクリームを拭って貰っているところです」

「完全にお子様じゃねえか・・・。悪魔って基本的に皆こうなのか?姉が例外なのか?」

「ベリアが例外側だと思います。でも」

「?」

「それって何か、重要なことですか?」

「・・・関係あるかないかで聞かれたら、ある方かな」

「なにか、あるんです?」

「さっきも一瞬だけ観測したけど、ベリアの方は弱いけど常駐。ヴェルの方はたまに出てくる感じだな。これ、見えるか?」


葉桜さんが提示してくれたのは、魔力感知のデータ表

しかも七つの枠組みに分かれている


「この全く動きがないのはパシフィカ。体内に微量な魔力がある程度だな」

「逆にこの高い記録ばかり出している三枠は」

「お前と霧雨とエミリー。揃いも揃って魔力量、純度共に優秀だな」

「あざーす」


こうして目に見える形で魔力量や純度を示して貰ったことはない

様々なデータを見ている葉桜さんからの「優秀」はきっと、紛れもなく優秀なのだろう

魔法使いとして少しだけ自身が付いた気がする

しかし、これが本題というわけではない


「そしてこれがミリア。平均よりちょい上程度だけど・・・」

「なんか、ミリア枠の線、白くないですか?」

「そう。あいつは基本的に浄化がメインになるんだろう?で、これが紅葉の魔力感知表なんだが・・・同じだよな」

「確かに、紅葉さんも白いですね。形状も何か似てません?」

「浄化作用っていうか、聖属性の魔法とか能力を高い水準で使える術者って、大体こう白くなるんだよ。形状が似ているのは気になるが、今は置いておこう。それよりも重要な存在がいるからな」

「へぇ・・・」

「ミリア・ウェルド。作中では勇者パーティーの修道女程度だったモブに聖女要素を含めた隠し球が来るとは俺も予想外だ。それはパシフィカとエミリーにも言えるな。あいつら作中以上の強さを誇っている」


そういえば、永羽ちゃんの話だと葉桜さんは賢者ノワを読んでいる立場の人間だ

それに魔力感知表という信頼ができるデータを持ち、大社の面々の詳細も把握している彼なら

・・・あの情報を提示しても、受け入れて貰えるかもしれない


「その詳細は曾お婆ちゃんと師匠から話を聞いているんで、葉桜さんにも聞いていただきたく・・・」

「お前・・・それ事情聴取の時、誰か話したか?」

「・・・困惑させると思って誰にも。あの場には私と師匠と曾お婆ちゃんしかいなかったので、私以外知らない情報です」

「・・・黙っていたのか」

「駄目でした?」

「いや。余計な事を言って不安を煽るような真似ができないと判断したんだろう?構わない。でも何で俺なんだ?」

「この場で誰よりも、全員の情報に触れている葉桜さんなら受け入れてくれた上に、推論も立ててくれるかなと」

「・・・大役だな」

「ええ、大役です。でも物語組の「師匠の関係者と繋がった縁の影響」に関する話は・・・貴方にしかできません」

「縁の影響ねぇ・・・それなら、さっきのもだけど・・・コレにも説明が付くのか?」


葉桜さんが最後に提示してくれたのは、残りの二人のデータ


「ヴェルは先程の一瞬、聖属性の魔力が感知した。ベリアは微量だが常に常駐している」

「・・・なんで」

「それに加えて、ベリアの魔力紋なんだが・・・魔力紋って何かわかるか?」

「指紋みたいなもの!」

「ああ。そうだ。ちなみに親子で形状が似るのも特徴だな」

「マジで!?」

「魔法陣とかも、親子で一致している部分が多いんだぞ。今度調べてみろよ」

「へーい」


「で、これがベリアの魔力が一番開いたと思われる時の魔力紋。くっきり出ているだろう?」

「そうですね・・・」

「俺はこの魔力紋に似た形状の魔力紋に心当たりがあってな。これなんだけど」


葉桜さんが提示してくれたのは、これまた綺麗に出ている魔力紋

美しい線を描いて円を作り出したそれは、確かにベリアの魔力紋とそっくりだ


「この魔力紋は譲のものでな」

「う゛ぇ?」

「ちなみにヴェルはこちらの魔力紋と似ている」

「これまた綺麗ですね。誰のですか?」

「和夜の妹」

「・・・は?」

「こんな場所で問題提起をするのは申し訳ないが、心に留めてほしい疑問がある」

「・・・聞きます。聞かせてください」

「あの双子は、譲たちのなんなんだ?」


和やかな時間の後ろで進み出す、私達に関する疑問

未完の戯曲は動き出し、彼の守り手は語り出す

福音の、鐘と共に

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