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賢者様、貴方をパーティーから追放させてください!  作者: 鳥路
第5.5章:鉱山都市「ヴィラロック」/鉱山の金糸雀は魔法を謳う

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18:魔法使い達は一堂に

「ああ、自己紹介が遅れてすまないね。私はリヒター・アリステラ。メルクリア王立魔法学校の…」

「先生、ノワ・エイルシュタットとエミリー・エトワンスが卒業した時点で講師を退任されています。もう一昨年の話です」

「そうだった!魔法学校の講師を副業にしていたのは一昨年までで、今は本業である魔法機関最高顧問「白輝」の仕事を…中心に…ああ…これ、本当に名乗るの恥ずかしいなぁ」

「しかし義務です。先生。申し遅れました。僕はノルド・ヴィーザリット。魔法機関最高顧問「星風」の席に座らせていただいています。リヒター先生の教え子…その最高傑作です」


不安そうに見上げていた私達を安心させるように、リヒターさんとノルドさんはそれぞれ自らの名前を名乗ってくれる。

…魔法機関って確か賢者認定試験を行っている魔法使いによる魔法使いの組織みたいな感じのところよね。

そこの最高顧問となると、強力な魔法使いなのだろう。

さっきの魔法が、それを証明している。


「ヴィーザリット…?星風の家名は確か…」

「パシフィカ、気になることがあるの?」

「ええ。でも専門ではないので確証がないんですよね。ここにエミリーがいてくれたら…」

「貴方の疑問にも答えられそうね」


二人の自己紹介を聞いて何らかの疑問を抱いたパシフィカはうんうん唸りながら首を傾げる。

今、この場に彼女の疑問に答えてあげられる人はいない。

…それよりも、あの人達。


「全くノルドはいつも見境なくマウントを取りにかかるねぇ…」

「事実を述べているまでです。先生の教え子は僕だけでよかったのに…過去も未来も全て俺一人のものであって欲しかった」

「どうしてこうも面倒くさい子に育っちゃったんだろう…と、いうか…君の娘さんも私の教え子の一人なのだけど?」

「…僕に娘?嫌だなリヒター先生。冗談はよしてください。僕に子供?既婚者ですらないのに?」

「現実逃避をするな!全く!無理矢理結婚をさせられた挙げ句、無理に第一子を作らされたと泣きついてもう何年になる!三百年だぞ!立ち直れとは言わないから、せめてスフィリアと君は間違いなく親子なのだから、努力をしているあの子に目を向けるぐらいはしてくれないか…!」

「スフィリアって誰ですか。僕そんな人知りません。この世で名前を認識しているのはリヒター先生だけで十分です。なのでリヒター先生、僕をそろそろ嫁にしてください。僕は先生の元ではないと幸せになれる人生を歩めません」

「私と妻は千年経過した今でも円満だ!私の家庭まで道連れに崩壊させる気か君は…!今度二百九十三人目の子供が産まれるんだぞ…!予知でそんな未来はないと断言するためにも、私との将来を今すぐその得意魔法で見てみるといい…!」

「嫌です。そんな現実を見せられたら今度こそ僕は自殺するしかなくなる…」

「それを持ち出されるとこれ以上は言い出しにくくなるね…」

「へへっ…先生優しい」

「君、私の優しさにつけ込んでいたり」

「しません。僕はいつでもリヒター先生の一番優秀で良い子の教え子です」

「エルシャント家め…!僕の教え子二人の精神を弄びやがってぇ…!」


…ノルドさんは当然なんだけど、リヒターさんもなんだか凄く変な人なのよね。ノワというかカズサの先生をやってのけるだけあるわって感じ。

このまま関わり続けていいのだろうか。

なんだか、とっても不安よ…。


「それにしても…ノルド」

「なんでしょう」

「さっき、僕は普段通り魔力吸収魔法を発動させたはずなのだけど…私はこれを普段通り自ら発動終了させたわけではないのだよ」

「それはつまり、魔力吸収量が満ちたということでしょうか」

「そうなるねぇ…ここにいた子達はそんな大量に魔力を持っていそうには見えないのだけど…あ」


リヒターさんはノルドさんの首根っこを掴み、飛来した魔法弾を避ける。

…何者かが、二人を襲撃したらしい。

最も、彼の魔法の容量が如何ほどかは存じないけれど…私はそれをやってのけそうな魔力量を保持する存在を三人も知っている。


「おいこらぼんくら魔法使い!てめぇが発動させた魔法のせいでうちのエミリーちゃんが猫ちゃんになっちゃったじゃねえか!」

「ううっ…頭痛い…」

「急に魔力を持って行かれた影響だろうな。エミリー、魔石かじるか?」

「…」

「ほれほれ」

「な〜。な〜」


「おい考え無し!君が発動させた魔法のせいでうちの永羽さんが目を回しているじゃないか!魔力量全然無いんだぞ!致死性の高い魔力吸収魔法なんて攻撃性の高い魔法を無差別に使うとは良い神経をしているね!蘇生を拒むまで殺してやるから表に出ろ!」

「椎名さん。私まだ生きてます…」

「あ、ご主人だ。おーい」

「…てめぇら、うちの永羽ちゃんさんに手を出したのか!?よし!殺す大義名分が出来た!師匠!リュミエール!」

「何が大義かわからないけど、今回だけだからね」

「流石師匠、話が分かってる〜」


「なんでこのタイミングでこいつらがここにいるんですか…」

「本当よ。なんでいるのよ…宿屋でのんびりお茶を飲んでいると思ったのに」


…これまた厄介な魔法使いが登場してしまった。

どうして二人揃ってこんなところにいるのだろう…。

私とパシフィカは頭を抑え、リュミエールを手渡されたカズサと指先で魔力を練る先生を見上げた。


勢いよくリュミエールを振り上げ、無詠唱で魔法弾を生成するカズサと、平気そうな顔で光の槍を宙で生成し続ける先生。

勿論、その危険性をリヒターさんもノルドさんも瞬時に理解したらしい。


「厄介な魔法使いを引き当てたみたいだね、ノルド?君の未来予知は本当にガバガバだねぇ。精度、ちゃんと上げて」

「申し訳ございません。おかしいな。僕の予知では太陽の精霊と聖女を助けたらこれでノワを引き当てることが出来るはずなのに…」


…魔力を吸われている分、助けられる側も被害が出ている。

これで助けたと思っている二人のお花畑思考はともかくとして…予知の精度は案外高いようだ。

カズサをここに呼び寄せたのだから、実質ノワをここに呼べたようなものだもの…。

…ノルドさんの予知は警戒した方が良さそうね。

しかしこれ…私達や住民は大丈夫なのかしら…?


「ミリア、避難しましょう。ここは危なすぎる」

「そうね。貴方の裁量に任せるわ、パシフィカ」

「最大限の信頼をありがとうございます!」


パシフィカに抱き上げられ、リヒターさんとノルドさんの隙間を通り抜けてパシフィカは項垂れているエミリーと魔石を口に押しつけているベリアの元へ駆けて行く。

———そっちにいくの!?



◇◇


「もぐもぐ。これちょっとヤバいかも」

「ううっ…」

「…魔力ごっそり持って行かれたねぇ。私も指一本動かせないレベルなのに…君は動けるの?」

「事情があるけど、とにかく私は今平気側。あの魔法何?」

「私もよくわかんないから…もぐもぐちゃん、あの項垂れている猫ちゃんと、君のそっくりさんがいるところに行ける?」

「あ、確かにお姉ちゃんがいる。よく見えたね」

「視力はいい方だからね…。あそこまで行けば事情は把握できる。私達のこと、一人で運べる?」

「余裕〜揺れるけど我慢してね、永羽」

「ん…」


ヴェルは私達を抱き上げて、少し距離がある場所に横たわるエミリーと彼女に魔石を押しつけているベリア。

そして、近くの宿屋から誰かが出てくる。


「急に出て行くな!何があった!」

「おー、イスカか。無事か?」

「君はなぜ平気なんだ!?」

「あたしはなぁ…まあ色々事情があるけど、とにかく魔力吸収の影響は受けていない。しかしエミリーはダメだ。もう少しで意識面は回復できると思うが…」

「にゃー…」

「それよりも、カズサは…」

「ああ、あいつはピンピンしてる。あいつも魔力無尽蔵側だからな。流石にあたしの御主人様よりは劣るけど…この場では問題なく暴れ回る程度の魔力は保持しているよ」

「そうか…」

「それよりも、あんたは?」

「私もそこそこ魔力を有している方だ。この場では問題なく…なんなら少し距離があった分、影響が少なかったのかもしれないな」


「あの魔法使いのどちらかが、先程の魔法を発動させた対象になるのか?」

「いかにも。先程の魔力吸収を発動させたのは白い装束の魔法使い。この子やスフィリアの恩師だったリヒター殿だよ」

「ほう…あの魔法使いが」

「彼はこういう魔法使いが嫌がりそうな魔法をよく使う。彼の得意魔法に関しては尊敬を一切していない」

「ストレートに言うな…」

「事実使われたくないからな」


「もぐーん。おねーちゃーん」

「なんでここにいるヴェル!?」

「あー…やっぱりいた」

「…エマ姉さん。どうしてここに」

「事情は色々あるけど、イスカ。魔力譲渡出来たでしょ?この子の事頼むわ」

「…ううっ」

「永羽!?」

「知り合いか?」

「ああ…というか、その子が一咲が取引条件に設定した子だよ…」

「ほう…こんなところで会えるとは。魔力をごっそり奪われているな。わかった。エミリーは大丈夫か?」

「…もご。こちらは平気です。意識は戻りましたので。トワを優先してください」

「心得た」


イスカと呼ばれた魔法使い。

エマさんが探していた存在で、今までエミリーやベリアと一緒に行動をしていたらしい。

ヴェルが私を安全なところへ横たわらせた後、イスカさんが私に魔力を流してくれる。

身体が軽くなる中、滑り込むようにして誰かが現れる。


「やはりこちらに逃げて正解でしたね。ベリアの特徴的な赤髪が目印でよかったです」

「怖かったぁ…」

「もぐもぐ、残念でしたー。目印は私〜。お姉ちゃんは地べたで魔石をエミリーにモグらせてま〜す」

「ヴェルもいたんですか?まあ、いますよね…あれがいますから…」

「いるに決まってるじゃん。あれが暴れてるんだから。もぐもぐ…」


滑り込むようにして合流を果たしたのはパシフィカとミリア。

二人とも無事でいてくれたらしい。

…魔法戦が始まった場所を通ってきたように見受けられるのだが、本当に無傷なんだよねこの二人。


「…あの、この状況で聞くのはなんなのですが…私達は何に遭遇したのですか?あの魔法は一体…」

「それは私から説明しますにゃ」

「エミリー〜無事だったのね〜。でも語尾が大変な事になっているわよ…可愛いけど」

「にゃっ…まあ、安静な状況ではあるのですが、この場で最も説明に適している人物はトワに注力して貰う必要がありますので…僭越ながら説明させて頂きますにゃ」

「…本当に大丈夫なんですか、エミリー」

「…獣人族の特徴みたいなものですよ。本能的に出てきてしまうそれを抑えようと普段から敬語にはしているのですが、今は意識を保つほどの体力が奪われてしまってにゃ…んんっ、奪われてしまっていますので…お見苦しいところを見せてしまい申し訳ないです…」


エミリーは横たわったまま、私達に現在の状況を説明してくれる。

エミリーが知らない視点に関しては、それぞれ話せる人が起きている。

全員、それぞれの動向を把握することが出来るだろう。


「私達はこの近くにある宿屋でオークションの開催を待っていました。各々のんびり過ごし始めたタイミングで、窓の外が光ったんですよ。それが魔法だったのでしょうね。宿の中で店主のマレウスさんと、私達と一緒にいたスフィリア…そして私の三人が倒れたんです。私はまだ意識がありましたが…二人は意識を失っていました」

「で、魔力を奪われてもピンピンしていた一咲が宿を出て、現在に至ります…。状況としてはこんな感じです」

「なるほど…それで、あの魔法は?」

「中心にいるのがリヒター先生だというのであれば、あの魔法は魔力吸収魔法です。吸収体を生成し、それを中心とした範囲内にある魔力を吸収するというものです。中心に近ければ近いほど影響を受けます。思えば私は…吸収体の近くにいたのでしょうね。カズサはその真逆…」

「だから元気にしていた…ということなのかしら」

「ミリアの考えも間違いではありませんが、あの魔法には吸収上限というものがあります。一定魔力を吸収したら、魔法が解除されてしまうのですが…あリヒター先生が定めた上限を満たしたことは一度も無いはずです。いつも彼が手動解除をしていたと思うのですが…」

「今回は上限に到達したみたいよ。「自分で解除をしていない」みたいな話をしていたもの」

「なら…ヴェル。貴方達の状況を。おそらくその範囲内に最も近い位置であの化物が立っていたと思うのですが…」


「もぐ。確かにエミリーの推察通り。私達はパシフィカの羽根というより、同行しているミリアの身がヤバそうってことで宿を出てこの地区にやってきた。到着したぐらいに、あの白いのが光り出した」

「魔法使い君はあれが魔力を吸収していることに気がついて…あえて自分の魔力を大量に排出してこの子と私の身を守ろうとしたけど…まあ結果としてはこうだね」

「もぐもぐ…ざまあねえぜ魔法使い。もう少し一流らしい勝ち方しろよって感じ〜」

「…それでも随分魔力吸収の影響を回避させてくれた方だよ。あの距離にいたら私は意識を飛ばしていただろうし、この子は死んでいたと思うからね」

「もぐ…」


「では、魔力吸収の上限に達成したのは…」

「周囲の魔力もほどほどに吸収したって言うのもあるけど、あの魔法使いが積極的に魔力を渡してくれたおかげだよ。よかったねぇ。そっちの子達はゼロ距離であの魔法受けたんでしょ?意識保ててるのは魔法に対する抵抗が高いおかげかな…それにしては高すぎるけど」

「なるほど、魔法に対する抵抗力ですか…私もミリアも高いのでしょうか?」

「わからないわ…」


とりあえず、魔法の詳細とそれぞれの状況は把握できた。

しかし、この状況はそう簡単に覆らない。


「そういえば、エミリー。もう一人魔法使いがいるのよ。ノルドって名乗っていたけれど…」

「ああ、ノルド・エルシャント。彼もここに来ていたとは」

「ああ、やはりエルシャントですよね。彼、ヴィーザリットと名乗っていたんですよ。聞いた覚えがなかったので…」

「…?なぜ旧姓で?」

「あいつまでいるのか…スフィリアには会わせたくないな…」


まだまだ混戦した状況は続くらしい。

ひとまず、これはどうやったら解決するのだろうか…。

やっとまともに働くようになった頭で思案する。


二人の師弟が怒りに任せて降らせる魔弾と光の槍。

それを受け流すと同時に攻撃を仕掛ける二人の魔法使い。


こんな狭い場所で暴れ回っているのだ。地下空間の天井はパラパラと崩れ、綺麗に舗装された道は誰かの魔法で破壊される。

むしろこれだけやっているのに、被害は少ない部類…なのかな?


しかし…これを止める方法なんて存在するのだろうか。

解決策は、誰の頭にも浮かんでいなかった。

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