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賢者様、貴方をパーティーから追放させてください!  作者: 鳥路
第1章:水上貿易都市「ウェクリア」/勇者と賢者の始まり

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17:真夜中の教会探索

蝋燭の明かりを頼りに、私たちは教会の廊下を歩いて行く。

もちろん、周囲からはミリアだけがそこを歩いているようにしか見えない。


透明化魔法を使用して、透明になっているのは私とノワだけ。

ミリアはごく自然に、当たり前のように教会を歩いているのだ。

ちなみに魔法で透明化できるのは私たち自身の姿のみ。

音は当たり前のように出ているので、慎重に歩いていかないといけないのには変わりない。


「静かですね」

『誰もいないのは不審だけど逆に言えば安心ね。貴方の家族は巻き込まずに済みそう』

「はい。共に教会で暮らしている家族に共犯の疑惑はありません。巻き込まずに済み、私も安心しています。お心遣いありがとうございますね。勇者様」

『いえいえ。ところで、他の修道女はどこにいるの?』

「…おそらく、もう離れの寝室にいるかと」

『そういえば、ここシスターいないよね。おばあちゃん的な』


確かに、教会のシスターと言えばそんな感じだけれども。

前世でも、病院に慰労訪問してくれていたシスターはお婆ちゃんだったなぁ…。

けれどこの世界には若いお姉さんシスターも少なからずいるらしい。

わかってはいるのだけれど、馴染みがあるのはお婆ちゃんだから、シスターのイメージで最初にお婆ちゃんが出てきてしまうのはなんとも言えない話だ。


「少し前まではいたわね。貴方が言うようにお婆ちゃんシスター。半年前に主の元へ還られたわ」

『「しゅのもと」って…』

『…亡くなったの?』

『ああ、そういうこと。特徴的な言い方をするわね』

「私たち主に仕える者たちは、現世での役目を終えたら主の元で永遠の安らぎを得る。そういう話がありますので」


現世でもそういう話は聞いたことがある。

魔法使いさんと、魔法使いさんの部下の方が暇を持て余していた私たちに「一般教養?」な授業をしてくれたから、多少なり知識は存在している。


「思えば、まだシスターの赴任連絡は来ていないわね。いつもなら一ヶ月後ぐらいには新たに赴任するシスターの連絡が来るはずなのに…」

『ミリア、それってどういうこと?』

『神父とシスターってね、聖教都市にある神学校を卒業した者しかなれないの。貴方が持つ賢者の称号と似たような感じね』

『ほうほう』

「で、各教会には神父とシスターが必ずいなければいけない決まりがあるの。資格を持つ存在は多くいるし、聖都が厳格に管理をしているから、両方または片方が欠けている教会というのは存在しないわ」

『片方になっている時は、今回みたいに亡くなったとかそういう時しかあり得ないわけだ』

「ええ。半年以上不在というのは、聖教都市から遠く離れた片田舎の教会ならともかく、ウェクリアのような中央付近の都市だとあり得ない話ね』


ミリアはゆっくりと脚を止める。

前に進むのを拒むように、小刻みに震えた彼女は…絞り出すようにあることを伝えてくれた。



「…実はね、神父様かシスターが欠けた場合、聖教都市に報告及び招集の手続きをするのは残っているどちらかなの」


それは私もノワも知らない情報。

教会関係者しか知らない話だ。


「死亡届と共に、聖教都市へ招集依頼の手紙を送る手はずになっています。昔、シスターシェリアが、教えてくださったのです」


震える声で、彼女は伝えてくれる。

シェリアという人物こそ、半年前までウェクリアにいたシスターのことなのだろう。

ミリアは彼女のことを、慕っていたようだ。

本当は黙っていたいだろう。気づきたくはなかっただろう。

けれど、もうそんな甘いことを言えはしない。


「それをしない限り、聖教都市は監査を行わない限りはその教会で神父またはシスターが生き続けていると処理するそうです」

『書類一式が出されていないのは、間違いないみたいだね』

「ストレートに言わないで…。神父様がそんなことをするわけがないのに、そんなことをしているだなんて…思いたくもないの」


隠さないといけない理由があった。

新しいシスターを来るのを拒む理由があるのかもしれない。

それか、先代シスターの死に、何か大きな隠し事があるのかもしれない。

はたまた、その両方か。


『アリア、ミリア。誰かいる』

『…了解』

「…わかったわ」


ふと、遠くから足音が聞こえてくる。

高らかに鳴らされる靴の音。その持ち主は朗らかな笑顔でミリアの帰りを出迎えた。


「おや、ミリア。どうしたんだい?」

「ただいま戻りました、神父様。遅くなって申し訳ありません」

「いやいや。勇者様が中央の広場に来ていたんだろう?勇者伝説が好きなのは知っているからね。見に行って。今頃勇者様の元に押しかけているんじゃないかと思っていたから。むしろ早い帰りだよ」

「勇者様も笛の調査がありますから。協力を申し出たのですが、断られてしまって」

「…そうかい。危険なことに巻き込まれずに済んで安心したよ」


「私はそれでも協力をしたかったと思っております」

「ふむ」

「人攫いの笛。このウェクリアで発生している問題の中でも、一番に解決しなければいけない事件です。行方不明者は今日もまた増えている。一刻も早く、事件の解決に尽力しなければならない時です」

「そうだね。私も早く事件の解決を祈っているよ」


後ろで黙っている私とノワは、少しだけハラハラしながらミリアの動向を見守る。

まさか暫定犯人の前で、堂々と事件の話題を切り込んでいくなんて。

もう少し慎重に行って欲しい。

けれど、彼女は止まらない。


「ところで、神父様はこんな夜中に聖堂でなにを?明かりもつけてないご様子でしたが…」

「あ、ああ。たまには、一人で考えたい時間もあるんだよ」

「何か、悪いことでもあったのですか?」

「少しね」

「ご相談に乗れることがあれば、お聞きいたしますよ。今は相談役のシスターも不在なのですから。全く、聖教都市は何をしているのでしょうか。いつになったら、新しいシスターが…」

「まあまあ。向こうも悪魔関係で忙しい時期なんだよ、きっと」


神父はそのままミリアに寝なさいと促し、廊下をふらふらと歩いて行く。


『…今はそのまま見送るべきね。貴方も怪しまれないように部屋に戻って』

『そうだね。ミリア、この先は私たちが調査するから』

「いえ。このまま部屋に帰るふりをして、私にも透明化を行ってください」

『ついてくるの?危険よ?』

「知らなければならないと思いますから」

『わかった』


帰るふりをして、ミリアを物陰で透明化した後。

私たちは、先ほどまで神父がいたらしい聖堂へ向かった。


・・


聖堂での調査は、透明化を解除した状態でノワがささっと行ってくれた。


「…なにこれ。カラフルな足跡が聖堂にびっしり」

「追跡魔法。使うと足跡が浮かび上がるよ」


聖堂の中には色とりどりの足跡が床にびっしりと刻まれていた。

正直、気持ち悪いけれど…まあ、これも調査の一環だ。受け入れておこう。


「しかし、これから神父様の足跡を探すだなんて」

「ノンノンミリア。別に全部探す必要はないさ」


私はふらふらと聖堂にある祭壇へと向かう。

そこにある不自然な足跡を指さしながら、彼女たちを手招いた。


「ここ、祭壇と壁の間に足跡が半分浮かんでいるでしょう?」

「あ…」

「つまり、この後ろに何かあるってわけだね。じゃあ早速」


ノワが仕掛けを見つけて、祭壇の隠し通路を出してくれる、

それをミリア、ノワの順で入っていくのを見送り…私は隠し祭壇の扉を閉めた。

ミリアは先に入れた。彼女の存在には悟られていないはず。

ノワの存在はバレているかもだけど、あの人黒いから。いい感じに隠れられたと思う。

けれど、私は流石に目立つ。

容姿も、先ほどまで行ったことも全部含めて。


「…あら、遅い到着だったわね。神父様」

「そこで何をしているのかな、勇者様。お祈りに熱心でいるのは感心するが…時間を考えていただきたい。日を改めて貰えると」

「あら、貴方こそ何をしていたのかしら。人攫いの笛吹きさん?今日の収穫はなかったはずだから、もう寝ていると思ったんだけれども…。ああ、懺悔が足りなかったから再びここにやってきたのかしら?」

「…どこでそれを」

「神の加護よ。私、これでも勇者なんだから」


色々とハッタリをかましておく。

バレるリスクもあるけれど、私にできるのは時間稼ぎ。

…いい、ノワ。貴方が持ってくるのよ。神父が行った犯罪の証拠を。

それまでは私が、足止めできるかわからないけれど、足止めを果たしてみせるから。


「教会の隠し通路、そこで何をしているのか教えてくださる?まあ、碌なものではないでしょうけど」

「…」

「考えられるのは…そうね。人の誘拐だし、人身売買、臓器売買…ああ、女子供も被害者にいたのよね。もしかして娼館やその手の趣味がある貴族にでも売りつけた?おかげさまでこの教会は資金が多そうだものね」

「全部知られてしまっているようですね。どこで裏切り者がでたのやら…」


…この手の犯罪でやってそうなことを適当に言ったのに全部あたりなの?

流石に引く。何この神父。よくも今日まで何食わぬ顔でっ…。


「まあそれは貴方を殺してから探せばいいことです」

「…大人しくお縄につく気はないのね」

「ありません」


笛を構えた神父は、それに軽く息を吹きかけた。

甲高い音は、精神に干渉し…体中に激痛を与えてくるが…。


「その程度の痛みが何というのかしら」


不幸中の幸いというべきか…私はその痛みを知っている。

十分耐えられる。あんなものより遙かに軽い!


けれど、毎回攻撃を食らう訳にはいかない。

しかし今の私に攻撃手段がないのも事実。


「…せめて、聖剣が抜ければ」


腰につけた剣にそっと触れながら、来るべき瞬間を待ち続ける。

剣に祈りが届くのが先か、ノワが帰ってくる方が先か。

はたして…どうなるのやら。

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