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賢者様、貴方をパーティーから追放させてください!  作者: 鳥路
第1章:水上貿易都市「ウェクリア」/勇者と賢者の始まり

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13:戦えない勇者ができる唯一は

「また一回きりか…」

「魔法を使っていたわね。あの音がどこから来ているのか、探知とかできるの?」

「今のところ難しいね。音が鳴り始めた瞬間に魔法を発動させているけれど…」


魔法陣を消し、杖を勢いよく地面に突き立てる。

飄々とした彼女が悔しそうにしている光景をまさかこんなところで見ることになるとは思わなかった。


「一回しか鳴らないし、どこから鳴っているとか、いつ鳴るのかも掴めないからね。探知魔法も発動に時間がかかる。ちょっと長めであれば探り出せそうだけど」

「あの短さだものね…」

「力になれず申し訳ないね」


「ちなみにだけど、その探知魔法っていうのはずっと使っているわけにはいかないの?」

「いかないね。魔力消費量が多いから…。それに探知魔法を使用している間、常に魔力を周囲に飛ばしている状態なんだ」

「勇者様。探知魔法は、他の魔力の動きを、自分の魔力を放つことで「見る」魔法だと言われています」

「つまり、探知している際、貴方は魔力を放っているから…相手からも探知がされる状況にあるってこと?」

「そういうこと。それにね」

「…魔法は、複数同時に行使することができないと言われています。だから、その…彼女でも探知中に襲撃に遭えば」

「ただじゃ済まないってことね」

「話が早くて助かるよ」


ふと、ノワの手が私の頭に伸びてくる。

「ちゃんと勉強しているんだねぇ」といいたげな目で、優しく頭を撫でてくるのだ。


「…何よ、この手は」

「魔法使えないのにしっかり魔法知識があるアリアを褒めようかと」

「…まあいいわ。しかし私はあの音を初めて聞いたからよく状況が掴めていないの。あの音は何?なぜ貴方達は警戒しているの?」


さり気なく手を払いつつ、疑問を二人にぶつける。

二人の反応はおかしいとしか言いようがないものだ。

何かあることは間違いない。けれど、その何かがわからない。


「実は私も気になっている。あの音に何らかの魔術が仕込まれていることだけはわかっているんだけど、それで何をしているのか全然でね。現地民のミリアはなにか知っている?」

「…あの音は、人攫いの笛なんです」

「人攫い?」

「ふむ。笛の音一つで?しかも一回きりで人を攫うの?」

「私も人伝手で聞いただけなので…状況はよくわかりません」


ミリアが聞いた話をまとめるのなら、こんな感じ。

夜、酒場を巡っていた二人組の男が笛の音を聞いた。仮にAとBの男性としておこう。

聞いたことがない音で、こんな真夜中に鳴るような音じゃなかったそれにBは不審感を覚えたらしい。

AはBが聞いた音が聞こえず「気のせい」と済ませた。

その日は何事もなく二人はそれぞれの家に帰宅したそうだ。


次の日、AはBの奥さんから「Bが真夜中に出かけたきり帰ってこない」と連絡を受ける。

AはBの奥さんとともにBの行方を探すが…彼は見つからず。

憲兵に事情を説明し、捜索を依頼しようと詰所に向かうとあら不思議。

同じように真夜中に笛の音を聞いて行方不明になった家族がいる者が集まっていたらしい。


周囲に話を聞くと、行方不明になっていた人物の共通点が「真夜中に出かけていたこと」そして「笛の音を聞いた」ことがわかった。

それからも、時間はバラバラになったけれども、笛の音を聞いた者が行方不明になる事件が多発しているそうだ。


「その話だと、なぜAが笛の影響を受けていないか気になるのだけれど」

「Aである「カルド・アンシェン」は老人なんです。それに加えて、生来耳が遠いようでして…うっすらと聞こえてはいるようなのですが、ほとんど筆談で会話を行っています」

「なるほど。Bの方も同じく老人なのかしら?」

「いえ「ボブ・ウェリン」…カルドさんの経営している店で務めている若い男です。二人は年の差こそありますが、酒好きですから、よく一緒に酒場を巡っていると聞いています」


流石ミリア。修道女という肩書は伊達ではないらしい。

教会には沢山の人が集まる。情報も自然と彼女の元へ集まってきてくれるのだろう。


「ふむ…じゃあ行方不明者は基本的に耳が聞こえる状態で、笛の音を聞いた人物ね」

「ええ」

「今回の笛でまた行方不明者が発生する可能性があるわね。でも、候補者が多すぎて絞り込めない」

「参ったね。しかも術にかかった人間はランダム。複数かかっている可能性もあれば、一人だけかかっている可能性もある」

「更に今回は魔法を発動させていない可能性だってないとは言い切れない…」


色々な可能性がないとは言い切れない。

けれど、目先の問題を放っておくわけには行かないのだ。

ここに住んでいるミリアとしても、魔法が悪意を持って使用されていることを知ったノワにも。

事情を知ってしまった私も。


「魔法にかかった痕跡を探し出すのも一苦労。できれば人を一箇所に集められたらと思うのだけれど…流石にね」

「できないことはないのね」

「うん。だけどウェクリアの広さを考えたら、探し出すまでに私の魔力が枯渇する可能性がある。相手がどんな存在かわからない状態で、万全じゃないのは避けたい」

「…そう。もう一度聞いておくわね。一箇所に人を集めれば、貴方の負担は少なくて済むのね」

「そうだけど…アリア?」


私はまだ聖剣を抜けない。

けれど、私だってできることはある。

実際に戦うのはノワに任せることになるだろうけれど…それでも。


「ミリア、貴方を見込んで一つお願いしたいことがあるの」

「は、はい!勇者様。私は何を」

「私が来たとなると、周囲の注目は私がいる場所へと向けられるはず。ミリアは私が「この都市で一番人を集めやすい場所」にいると触れ回り、誘導して。触れ込みはそうね…「勇者一行が行方不明者を探す為にやって来た」でお願い」

「なるほど。わかりました。早速行動に移ります。勇者様、あの時計台が見えますか」

「ええ。見えるわ」

「あの場所を中心とした都市中央広場はかなりの広さがあります。そこなら、目的が果たせるかと」

「わかったわ。大変な事を頼むけれど、任せていい?」

「勿論です。だからどうか…行方不明になった皆さんを」

「任せて。必ず見つけ出す」

「…ありがとう」


去り際にお礼を言いつつ、ミリアは作戦の為に一足早く都市へと戻っていく。


「でもアリア、そんな人を集めるなんてことできるの?」

「ええ。今はまだ戦えないけれど、私、これでも「勇者」よ?」

「…肩書を使うんだね」

「ええ。世間から注目されている私が、今この都市で一番の問題である行方不明者の捜索に乗り出すとなれば…」

「囮としては十分すぎる。けれどアリア、君はわかっている!?君は戦えない。聖剣を抜けない君はただの女の子じゃないか!」

「それなら貴方が守りなさい」

「っ…!」

「勇者という肩書だけを持つ私ができることはこれぐらい。戦うのは、貴方に任せるわ。それになにかの拍子で聖剣が抜けるかもしれないし」

「そんな滅茶苦茶な…」

「アリア・イレイスという女は、そういう滅茶苦茶な女なのよ。覚えておきなさい」

「心得ておくよ…」


「それと、貴方にしてほしいことがあるの」

「私にできることなら」

「ええ。実はね…」


私は先程聞いたものに関することを、ノワにきちんと伝える。

彼女は驚いていたけれど、無理はない話。

あの音の特徴は、こう言っては申し訳ないけれど…庶民には馴染みがないものなのだから。


そして中央広場に向かい、下準備を整える。

やるべきことを終えたら準備は完了。

ミリアの工作も上手く行っているようで、中央広場には私の見物客が増えてくれていた。


『準備はいいかしら』

『いつでもどうぞ』


ノワの準備が整えば通信魔法で合図を送り合う。

万全になった事を確認し、私は作戦を開始した。


優雅な足取りで中央広場で一番目立つところに向かい、聖剣を構える。

羞恥はある。けれど私の仕事は人の視線を集めること。

恥ずかしがっている場合ではない。

人々の興味を惹くよう、私は高らかに叫んだ。


「私はアリア・イレイス!信託を受け、魔王討伐の任を受けた勇者!行方不明者の話を聞いて駆けつけたわ!」


金色の髪を夕日に靡かせ、舞台の幕は開ける。

気がつけば中央広場には勇者に興味を持ち、大衆が集まっていた。


ノワの隣にはミリアがいる。彼女の仕事も終わったらしい。

お疲れ様、ミリア。

…後は頼んだわよ、ノワ


演目名は「客寄せの囮勇者」


どこまで時間を稼げるかわからない。

誰かの襲撃がないとも言い切れない。

それでもノワが魔法にかかった人間を探し出せれば、この作戦は成功なのだから。

私は私の仕事を全うするだけだ。

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