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賢者様、貴方をパーティーから追放させてください!  作者: 鳥路
第5章上:聖教都市「メサティス(東部)」/運命の綻びに爆破魔法を

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18:絶望の瞬間

地上に降りた後、僕はこの中で一番の移動手段である存在に声をかける。


「ピニャ!荷車を用意する!中央区まで全力疾走!」

「御意!」


魔法で荷車を出し、彼に装着。

僕らはそれに乗り込み、彼へ最高速度で中央区へ移動して貰った。


道中、僕とエミリーさんは事態が最悪であることを四人に伝える。

中央区が崩壊していること。

アングスフェアリレンが出現していること。

要点だけを、淡々と告げた。


「それじゃあ、アリアちゃんは」

「…考えていた中で最悪な状況です。ノワは何を」

「わかりません。実際にノワへ何が起きたのか聞かなければ何も。しかし中央区は広いはずです。どうします?手分けして捜索をしますか?」

「そうだね。パシフィカさん、エミリーさん、ベリア、ヴェル。君達は僕と一緒に中央区探索だ。転移魔法陣を書き記した紙を配布する。これは対象に貼り付けるだけで出口に設定している魔法陣に転移を行う代物だよ」


複製した魔法陣の紙をそれぞれに手渡す。

できるだけ多く。速度を落とさない程度に持てるだけ。


「ノワを探すと同時に生存者を見つけ次第、紙を使って転送を行ってほしい。自分がヤバいって思った時も、それを自分に貼り付ければ安全地帯に転移できる。有効活用を頼むよ」

「お前が「命綱」を渡すってことは…」

「今回の相手は今まで以上の存在だ。たとえ悪魔だろうが、頑丈な精霊だろうが…単独で遭遇したら命はないと思って」


具体的にアングスフェアリレンの戦闘力がどんな代物なのか。僕にはわからない。

けれど、あの破壊力だ。ノワならともかく、このメンツでの単独戦闘は絶対に不可。

やり合うなら、全員で挑む総力戦のみ。


「生存者も大事だけど、何よりも自分たちの命を優先して挑んで欲しい」

「あの、私は」

「ミリアさんはピニャと離れにある丘で待機をしていて。僕らの裁量で「生存者」が送られてくる。君が必要と思った人間には積極的に回復魔法をかけてあげてほしい」

「私の裁量、ですか」

「ああ。魔力は無限じゃないからね。見捨てないといけない人間も出てくるはずだ」

「…」

「…できるだけ多くの人間を救う選択をしなさい。君なら、できるはずだ」

「はい。やって見せます。全員、見つけ次第転移させて!私、頑張るから!」


ミリアさんに指示を出した後、僕らは中央区へ向かう準備を整える。

丘と中央区の分かれ道で二人と別れ、ベリアとパシフィカさんは僕の杖に、ヴェルはエミリーさんの箒で移動を開始する。

中央区に着く前、ベリアが今後の行動に関して声をかけてくれた。


「椎名、中央区は五つの区域に別れているらしいぞ。ちょうど五人だし、手分けをしないか?」

「そう言いたいところだけど、アングスフェアリレンの攻撃をやり過ごしながら探せるのかい?当たったら遺体よ?」

「うっ…」

「僕があれの足止めを担当するよ。足止め程度なら一人でもどうにかなるはずだろうし。君達は大変だろうけど四人で五つの区域を探索してほしい」

「じゃあ、私が一番遠い一番と三番区域を担当します。箒ならひとっ飛びですから」

「私は二番目に遠い四番区域へ向かいましょう」

「じゃあ、近場だけどあたしが二番区域」

「私が…五番区域かな」

「決まりだね。じゃあ全員検討を祈る!」


それぞれが行くべき場所を定め、移動を開始する。


「じゃあ、早速お相手願おうか———アリア」


飛翔魔法で宙に浮かび、変わり果てた彼女の目の前へ立つ。

アングスフェアリレンが持つ紫色の瞳が輝いた。

その瞬間、僕は身の毛がよだつ感覚を覚える。


作中のアングスフェアリレンの瞳の色は、空色だった。

———アリアと同じ空色だったんだ。


『ししょー』


じゃあ、この紫色の瞳は————!


・・


崩壊した中央区、その三番区域を移動中。

私は逃げ遅れたと思われる生存者を見つけました。

呆然とアングスフェアリレンを見上げる彼女は、怖がっているのか…震えながら嗚咽をこぼしているようです。

声からして、少女でしょうか。

早く、安全地帯へ避難させなければ。

近づけば近づく度に、その少女の姿が明瞭になりました。


「…へ?」

「…」


煤汚れた金髪を揺らし、涙を流しながらアングスフェアリレンを呆然と眺める彼女は———見間違いようもない存在。


「…アリア、ですか?」


私が名前を呼ぶと、彼女はピクリと反応を見せる。

光の灯らない空色の瞳を、虚ろなそれを私に向けてきた彼女。

今まで周囲に光を纏わせていた彼女から、光の一切が消えていました。


…意識がアングスフェアリレンになっている?

いや、それなら声に反応するわけがない。

ミリアやパシフィカみたいな縁のある存在ならともかく、私みたいに一度も会話をしたことない存在の呼びかけに応じるわけがない。


冷静に考えて、エミリー・エトワンス。

シイナさんの話だと、アングスフェアリレンになるのはアリアだったはずだ。

話を聞く限り、肉体も怪物に変化したはずだ。

けれど、アリアは虚ろな状態ではあるけれど…今ここにいる。

考える限り、アリアが一部だけアングスフェアリレンになっているということはないだろう。


彼女は怪物なんかにならなかった。

今ここに、アリア・イレイスとして存在している。


じゃあ、あれはなんだんだ。

あれは、「誰の」なれの果てなんだ…!?


「アリア!ノワはどこですか!」


虚ろな彼女の肩を抱く。

一番事情がわかっていそうなノワに意見を求めるため、彼女の居場所をアリアから聞き出そうと試みた。


彼女は力なく、ある場所を指し示した。

光の灯らない空色の瞳を、戦ったことで血だらけになった指先を———。


———アングスフェアリレンへ、向けていた。

おまけ:新年だよ、ノワさん


「お前これがやりたかっただけだろぉ!?」

「主人公怪物にして新年開始とか性根腐りすぎだと思うな!」


「あ…あー…皆様、あけましておめでとうございまーす…。怪物になった方の主人公やってまーす。一応主人公。はい」

「今年も、よろしく…よろ…よろぉ」

「…よろしくできるんですかね、私」


「いや。一応ね、もうすぐ始まる5章中編は時間が戻って、シフォルとの戦いから私がああなるまでをお送りしますんで。まだ、美少女やってる私と会えるよ」

「まだまだ話したり無いけど、空気ぶち壊すのも何だし…もう終わるね」

「今年も賢者様をよろしくね。主人公の一人としてお願いします」

「…それじゃあね」


おまけ、おしまい

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