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賢者様、貴方をパーティーから追放させてください!  作者: 鳥路
第5章上:聖教都市「メサティス(東部)」/運命の綻びに爆破魔法を

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17:分岐点と転換期

賢者ノワの三巻。

その中盤で聖教都市メサティスに到着したノワは、そこでシフォル・ルシフォルと名乗る悪魔と対峙する。

なんやかんやで彼女を一時的に追い払うことに成功した後、ノワはかつて自分を追放した勇者アリアと再会した。

彼女の側にいるはずのミリアとパシフィカ、エミリーの姿はどこにもなかった。

様子がおかしい彼女に三人がいない理由と、アリア自身の様子がおかしい理由を問うと…。


『全部ごめんね、ノワ。私はただ…』


ただ一言。それだけを告げて、彼女はアングスフェアリレンへと姿を変えた。

シフォルの術が発動し、悪魔に近い怪物へと姿を変えてしまったのだ。

「戻す方法はないわよ」術者であるシフォルそう告げながら高笑い。

ノワはただ…姿を変貌させたアリアだった怪物を見上げる。


「彼女を止めるためには、救うためにはもう、殺すしか方法がなかった」

「…それで、ノワはどうなったんですか?」

「それしか方法がなかったから、気持ち的には整理がついていたよ。泣いてはいたけどね」


元々、物語上のノワがアリア達の後を追った旅をしていたのは、アリアに追いつく為。

アリアに再び認められ、もう一度同じ旅をするためだった。

夢見た「もしも日々」を、自分の手で壊したのだ。彼女の落ち込みようは凄まじい代物だった。


それにトドメを刺したのが「アリアの手記」

ノワの精神が病むに至った特大の爆弾だ。しかし今は関係ない代物のはず。

ノワはともかくとして、アリアは何かしらの記録をつけている様子ではなかったし。

それに、彼女はこれからも生きるのだから。


「…と、言うのが三巻の筋書きだね」

「ノワが、アリアを殺す…」

「それが物語上で起きた出来事ですか」

「流石に信じたく、ないです…ノワがアリアとの距離感が近いことぐらいわかります。前世の話を聞いたら尚更です。そんなのって、酷すぎるじゃないですか」

「エミリー。これは物語上の話で、今はまだ決まった話ではありません」


この話を始めて聞くことになった四人は、それぞれ異なる反応を見せる。

その中でも一番狼狽えていたのはエミリーさんだった。

ボロボロと涙をこぼしながらも、歩く足は止めないでいてくれる。


「もぐもぐ…そう。パシフィカの言うとおり。まだ変えられる」

「あたしがいうのも何だが、お前はなんでそんなに平気でいられるんだ…」

「狼狽えても状況は変わらないから。いい、エミリー。酷いことを言うけど、泣いたところで何も変わんない」

「うっ…」


厳しめだけれども、その通りだ。

何もしないままでは、何も変えられない。


「変えたいなら、動かなきゃ」

「そうですか。凄くいいこと言いますね、ヴェル」

「うっ…パシフィカ。今のパシフィカは超絶怖いから来ないでほしい。うわ!私のパン!私のパン!いしがまぱぁぁん!」

「狼狽えても変わりませんよ、ヴェル。私を半分にした謝罪は?まだ聞いていませんけど?」

「うううううううっ!」


…背後でパシフィカが先程の仕返しをしているようだが、何も触れずにしておこう。

と、いうかまだ謝罪の一つもしていなかったのか。

あまりのパンをやる時の言葉は全部嘘だったんだね。


『大丈夫。私いい子。パシフィカにも謝った。ぶい。だから魔法使いは私にパンをご褒美に渡すべき。ご主人の代わりを務めるのも師匠の役目。働け』


…残りのパン、やるんじゃなかったな。


「け、けどさ、そこさえ乗り越えればアリアは物語の強制力とかそういうしがらみがなくなるから、ある程度の安全が保証される訳だ。今の三人と同じ感じだな!」

「そっか。元々私たちは死ぬことになる登場人物だったから…」

「死ぬ未来を乗り越えたら…今後「自身に関わる描写がない」」

「自分自身がヘマを打たない限り、そう簡単に死なないとも言えますね」

「いしがまぱぁぁん!いしがまぱぁぁん!」


「…自分自身で未来を作り上げられる状態」それが、今のノワとアリアが辿り着かないといけない地点なんだ」

「あ。まだ気にせずに続けるんですね…」

「何か言ったかい、ミリアさん」

「いえ、なんでも。それに辿り着くためにはアリアちゃんが死ぬ未来を改変することが、目的を果たすのに一番必要な鍵と言えると言う訳なんですね」

「その通りだよ」


いしがまぱぁぁん状態のヴェルはベリアに頭を押さえつけられ、無理矢理謝罪をさせられている様子。


「半分にしてごめんなさいは、ヴェル」

「ぱん。ぱんぱぱん」

「ここまでしても自力で謝罪しないなんて、お宅の妹さんどうなっているんですか?椎名さんのように連帯責任を導入した方が罪悪感が芽生えるのでしょうか?」

「本当に申し訳ない!」

「貴方に謝罪されたいわけじゃないんですよ、ベリア。そちらのアホの方です」

「お姉ちゃんも謝ったし、パンを返してくれるよね?」

「「お前は少しでも謝る素振りを見せろ!半分にするぞ!」」


ベリアとパシフィカさんは後ろでヴェルの頭を必死に下げさせているらしい。

やれ。遊んでいる場合ではないんだけどな。


「シイナさん。もうすぐメサティスの中央区が見えるはずです」

「もうそれぐらいの場所に来たのかい?」

「はい。沢山歩きましたし…ミリア、どうされましたか?」


エミリーが声をかけたミリアは、不思議そうに周囲を見渡している。

何か捜し物だろうか。


「ミリアさん、気になることでもあるのかい?」

「え、ええ。私は一度ここに来たことがあって…その時、中央区には大きな時計塔があったんです」

「その時計塔には、何か意味があるのかい?」

「それは勇者伝説に書かれた勇者様が「平和の象徴」として建設を依頼したと、シスターシェリアが教えてくれたんです」

「それは、大きいのですか?」

「都市一番に高い建物だから、ここからでも、見えるはずなのよね…。方向、間違ってないかしら…?」


僕とエミリーはその言葉に目を合わせる。

考えは同じでいてくれるらしい。


ここに唯一来たことがあるミリアさんの記憶を疑っているわけではない。むしろ信じていたいのだ。

方向が間違っていた。まだその方がいいぐらいだ。

もしも、彼女が言う時計が反対方向にあれば御の字。

だけど…そうでなかったら?


「ミリア、ここにいてください。私とシイナさんで上空から見てきます」

「君のいうとおり道を逸れて歩いているのかもしれない。上から時計塔を探してみるよ」

「お願い」


僕はリュミエールを、エミリーさんは箒を使ってそれぞれ上空に浮かぶ。


「…大丈夫だと思いますか?」

「大丈夫だと思いたいかな…でも、駄目そうだ」


道は間違っていなかった。

上空から見上げた風景は、綺麗なものとは言いがたい。

破壊された時計塔に、住宅街。

曇り空ということもあるかもしれない。僕たちがいる地点では木々の影響で見えなかった煙もまた、確認できた。

メサティスの中央区はもう、崩壊をしているらしい。


「これは、何が…ん?」


エミリーが何かを視界に捉えたようだ。

彼女が見ている方向を、僕も目をこらして確認してみる。


「ひっ!?」

「どうしたんだい?」

「あ、あれ…ですか?」

「あれ?」

「貴方が先程まで話していた怪物!真っ黒で、大きくて、禍々しいあれです!」

「…」


彼女が指で示す先には、確かに特徴通りの怪物がいた。

物語の挿絵にもいた、アングスフェアリレン。

それがメサティス中央区の全てを、ただ一体で破壊し尽くしていた。


「…なんで、あの子達なら。この未来には辿り着かないだろ」

「シイナさん」

「だってあの子達は、この未来を変えるために!ここまで来たんだぞ!これがどうして」

「落ち着いてください!」


エミリーが箒を巧みに使い、僕の頬を箒で殴る。

ああ、あいつを見た瞬間———頭が真っ白になっていた。


「すみません。有事でしたので」

「大丈夫。助かったよ」

「しかし、道は急いだ方がいいでしょう。ノワの事も、心配でしょうから」

「そうだね」


地上へ降りる前に、もう一度アングスフェアリレンを見ておく。


「…必ず、助けるから」


届かないけれど、言葉にはしておく。

物語の強制力は、行動次第で弱まる代物だと思っていた。

しかし、アリアがアングスフェアリレンになる未来は変えられなかった。


リュミエールを強く握りしめる。

僕は彼女の友達だ。この世界に送り込んだ人間だ。

必ず彼女は救ってみせる。

たとえ、誰かを生き返らせる以上の禁忌に触れることになってもだ。

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